【感想】生きのびるために緑のそばにいる 月波与生
- 2015/10/06
- 20:37

生きのびるために緑のそばにいる 月波与生【「地球はグリーンだった」】とても好きな句でよく思い出しているんですが、川柳ってどういうわけか〈生き延びること(サバイバル)〉をときどきテーマにしているようにおもうんです。それがとても好きなんですが、そういうサバイバル=生き延びてゆくことに関して〈緑〉というものがでてくる。考えてみると、〈川・柳〉って緑なんですよね。川柳を詠むっていうのは、潜在的にはどこか...
【感想】黙々と生きるパズルが解けるまで 松山芳生
- 2015/10/03
- 01:00

黙々と生きるパズルが解けるまで 松山芳生まなざしはゼリーぢーつとしてゐると 小津夜景 【この文章は最後にまさかりが唐突に出てきます。そして筆者はまさかりを定型になぞらえつつ、まさかりをかつぎつつ、おかっぱになりつつ、この文章を終わらせようと最終的に決意します】ときどき短詩型で非言語的志向性をもった句にであうんですね。たとえばうえの松山さんと夜景さんの二句で共通しているのは、「黙々と」と「ぢーつ...
【感想】出なくてもいい時に出るアルファ波 竹井紫乙
- 2015/09/30
- 20:44

出なくてもいい時に出るアルファ波 竹井紫乙【素晴らしい余計者】川柳ってひとつの〈やあ。〉の思想ではないかと思っていてですね、とつぜんなんですね、すべてが。で、とつぜんっていうのは、〈とつぜん〉になるための根拠がいるんですね。たとえば、昔からゆうじんだったけれどとつぜん好きになってしまったとか、昔から知っている事柄が裏切られる、すると〈とつぜん〉が起きるのではないか、そういう〈とつぜん性〉っていう...
【感想】最大の難関白いシャツを着る 竹井紫乙
- 2015/06/30
- 12:00
最大の難関白いシャツを着る 竹井紫乙【難関に、立つ】さいきんずっと紫乙さんの句集を持ち歩き・読み返していて、川柳っておもしろいなあとゆっくりおもいました。川柳のいいところは、いっさつの句集のなかでいろんなスイングができるところなんじゃないかとおもうんです。ボールにかるくあてたり、おもいっきりふってみたり、はじめからファールをねらっていったり、そこにうつようにみせかけてぜんぜんべつの場所にボールを...
【感想】この町はそうね赤川次郎だわ なかはられいこ
- 2015/06/23
- 08:11

この町はそうね赤川次郎だわ なかはられいこ【生きるは楽しい】もう何ヶ月かずっと川合大祐さんと返句のやりとりをメールでさせていただいているのですが、その川合さんからメールのやりとりのなかで教えていただいたなかはらさんの句です。わたしは高校に入ったときに乗った電車を降りないでそのまま学校を休むという学生だったんですが、そのときにずっと勇気にしていたのが赤川次郎でした。で、赤川次郎の小説の魅力ってなん...
【感想】あやまっているがボタンを押している 徳永政二
- 2015/06/19
- 12:11
にはかに座より躍り上がり、面色さながら土の如く、「我豊太郎ぬし、かくまでに我をば欺き玉ひしか」と叫び、その場にたふれぬ。 森鴎外「舞姫」あやまっているがボタンを押している 徳永政二【ずるい「こゝろ」】徳永さんのフォト句集『大阪の泡』からの一句です。〈勇気〉ってなんなのか、をひとことでいうとわたしはこの句になるんじゃないかとおもうんです。「あやま」りはする。言語的に主体をとりさげはするんだ...
【感想】私の部屋にあふれる通行人 佐藤みさ子
- 2015/06/11
- 13:15

私の部屋にあふれる通行人 佐藤みさ子【マルクス兄弟の過剰さから遠く近づいて】倉本朝世さんが発行している『あざみ通信』4号の佐藤みさ子さんの連作「からっぽの壺」からの一句です。わたしこのみさ子さんの句がとても好きで、で、基本的にわたしは部屋や水たまりで冒険や遠泳ができるんじゃないかとかんがえている人間なので、こういうミクロな空間がマクロに破砕されていく風景ってとてもすきなんですね(このみさ子さんの...
【感想】きのうとは違うかたちで飛んでみる 今井和子
- 2015/06/06
- 20:33
きのうとは違うかたちで飛んでみる 今井和子M 今井さんの一句です。Y あの、この句でおもしろいなって思うのが、まず「飛べる」んですよ。もう「飛べ」てしまうんですよ。飛ぶことは前提化されているんですよ。ふつう、空を飛びたいな、とかじゃないですか。でも、もう飛べてしまっている。ただ「きのうとは違うかたちで」飛んでみている。そこに差異をもってきているのが、おもしろいなっておもうんです。なぜなら、わたし...