【こわい川柳 第九十五話】エスカレーターを旅する-ぶらりでもなく-
- 2015/10/21
- 07:00

エスカレーターが動く私の未来とは別に 楢崎進弘エスカレーターから降りると火鍋 湊圭史エスカレーターの上り 全面自供中 森重春江【ひとはデパートで駅で時の哲学者になる】川柳のなかのエスカレーターってなんだろうっていう話なんですが、エスカレーターをふだん乗っていてもわかるようにエスカレーターってまずなによりも〈時間〉の場所だとおもうんですね。ひとはエスカレーターに乗って自分の〈時間〉ではなく、エ...
【こわい川柳 第九十四話】うずく○-○について語るときに○の語ること-
- 2015/10/21
- 00:30

旅図形乱した○がいくつもある 前田一石本当の○だろうか舐めてみる まきこ【それは、○だろうか。或いはそれとも○なんだろうか】川柳でひとつおもしろいのがときどき図形があらわれてくるってことなんじゃないかなとおもうんですね。川柳では図形もひとつの言語として捉えている。それがちょっと不思議なんです。たとえば大正の未来派の詩には言語を記号化したものがみられるけれど、川柳は未来派のような記号を〈図示化〉した...
【こわい川柳 第九十三話】いやなピンク-現代川柳とピンク-
- 2015/10/21
- 00:00

すれ違うばかりピンク色の電車 津田暹蒲鉾のいやなピンクになりきって 峯裕見子縁切り寺に春夏秋冬咲くピンク 泉紅美【ピンクで、会いましょう】ピンクの三句を並べてみました。この三句からピンクってなんなのかと考えた場合に、それは〈枠組みをあふれる余剰〉という言い方ができるかもしれないとおもうんですね。たとえば津田さんの「すれ違うばかり」で乗ることのできない「ピンク色の電車」。これは〈乗る〉というこ...
【こわい川柳 第九十二話】いやがられる、島に-峯裕見子
- 2015/10/20
- 01:00

まだ少し嫌がる島を引き寄せる 峯裕見子【ここはサル山じゃない】ときどき考えているのが、川柳定型というのは〈程度の詩学〉なのではないかということです(これはもしかしたら俳句定型と異なる点かもしれません。俳句では季語が入ってくるので、〈程度〉を入れ込む余地がないから)。で、程度の詩学ってなんなのかというと、たとえばこの峯さんの句なら、「まだ少し」という部分です。内容としては「嫌がる島を引き寄せる」だ...
【こわい川柳 第九十一話】えいえんとくちから-畑美樹-
- 2015/10/20
- 00:30

永遠に続く読後感想文 畑美樹 ぼくらが必要とする書物とは、ぼくらをこよなく苦しめる不幸のように痛めつけ、打ちのめすものだ。自分自身を愛する以上に愛してやまなかった人の死のように、すべての人から引き離されて森の奥へと追放される時のように、そして自殺のように、それは作用する。書物とは、ぼくらの内部の氷結した海を砕く斧でなければならない。 カフカ『決定版カフカ全集9 手紙』えーえんとくちからえーえ...