【こわい川柳 第九十話】さかのぼる血-丸山進-
- 2015/10/20
- 00:00

一輪車血筋の跡を溯る 丸山進【熱量としての漢字、血】この丸山さんの句でちょっとみてみたいのが〈さかのぼる〉です。さかのぼるってふつうは「遡る」と漢字で書きますよね。ところがこの句の「さかのぼる」は、さんずいの「溯る」になっています。で、この「さかのぼる」というのは、道をさかのぼるときは「遡る」という漢字を使うし、川をさかのぼるときは「溯る」というさんずいのほうを使うんですね。だからこの漢字たった...
【こわい川柳 第八十九話】眼鏡と逃走-浜知子-
- 2015/10/19
- 07:30

メガネ売場で逃亡を考える 浜知子【ゴジラの逃走論】「ど、どうした」ってなる句ですよね。それか、「お、おう」ってなる句です。この句のおもしろいところは、なぜ〈逃げたいか〉のドラマがまったく語られないことによって、純粋な〈逃げること〉そのもののドラマが前景化しているところです。「メガネ売場」がなにか理由にはなりそうなんだけれども、やっぱりよくわからない。でも「メガネ売場」がメガネをかけることで〈擬態...
【こわい川柳 第八十八話】合体させない-渡辺隆夫-
- 2015/10/08
- 12:00
水道水を禊ぎに止揚するなかれ 渡辺隆夫いまは、何も、わからない。いや、笠井さんの場合、何もわからないと、そう言ってしまっても、ウソなのである。ひとつ、わかっている。一寸さきは闇だということだけが、わかっている。あとは、もう、何もわからない。ふっと気がついたら、そのような五里霧中の、山なのか、野原なのか、街頭なのか、それさえ何もわからない。そのような、無限に静寂な、真暗闇に、笠井さんは、いた。 ...
【こわい川柳 第八十七話】Xファイルと現代川柳-或いはデイヴィッド・ドゥカヴニーとゆく秋のムー大陸-
- 2015/10/06
- 12:00

南無阿弥陀 巨大なキャベツ貰いけり 松永千秋川柳ってひとつの事件としてみるとわかりやすくなるんじゃないかと思ってるんですね。もっというと、Xファイルのようなものだとわかりやすいのかなと。飯島章友さんがよく川柳とプロレスの関係性について話しておられて川柳は異種格闘技的なところがあるとたしかおっしゃられていたと思うんですが(これは小津夜景さんが川柳はSF的雑食性があるんじゃないかという言い方をされて...
【こわい川柳 第八十六話】ふたたびオズの国へ-なかはられいこ-
- 2015/10/01
- 12:00

産院の窓の向こうのオズの国 なかはられいこ【ドロシー・ゲイルを発話できますか?】この句がじぶんにとってはとても印象的でよく考えているんですが、なかはらさんの句っていうのは〈外傷的〉な句がけっこうあるのではないかとちょっとおもったんですね(前にも〈抑圧〉という観点からこのことを考えてみましたが、今回もういちどオズの国へ行ってみようと思います)。たとえばこの句では「オズの国」が「産院の窓」を通してし...