【こわい川柳 第百話】すべての川柳はちかい
- 2015/11/02
- 01:30
ねえ、この時間、そこに立ってる人間はあなただけなのよ? あなたがそこを動かない限り、誰一人そこには立てないの。そしてそこから私を見られるのはあなただけ! (適当な場所を指し)仮にあっちから私を見てる人がいても、あの人は、あなたが見ている私は絶対見れないの! 倉持裕『ワンマン・ショー』川柳ってこわいよなっていうことをふだんから思っていてですね(もちろん倉阪鬼一郎さんの『怖い俳句』の影響も多分にあり...
【こわい川柳 第九十九話】だまるのがこわい―いわさき楊子―
- 2015/11/02
- 01:00

黙っていると点線で囲まれる いわさき楊子【こわい川柳はほんとうはなにをこわがっていたのか】これまで川柳がどんなふうにふしぎな空間を語り出すかに注目してこの九十九話まできたんですが、もう九十九話まできたのだから、さいごは黙ってみたらどうなるのか、ということでこのいわさきさんの句を紹介してみることにしました。あらためて考えてみるとふしぎなことなんですが、定型って実は沈黙が許されないんですね。定型に沿...
【こわい川柳 第九十八話】なめらかなお悔やみ-森田律子-
- 2015/10/27
- 18:40

お悔やみをすらすら言えるのがプリン 森田律子【プリン文芸としての川柳】『川柳・北田辺』61号から森田さんの一句です。やっぱり川柳って〈食べ物〉を通した〈ふらち〉がすごくおもしろいなと思っていてですね、今回の『北田辺』にもおもしろい〈ふとどき〉が食べ物を通してたくさん展開されていたのでちょっとご紹介しましょう。ひょこひょこついてくるから魚肉ソーセージ 榊陽子直立歩行で豆腐は行進中 江口ちかる君の...
【こわい川柳 第九十七話】はんぶんはあっち-倉本朝世-
- 2015/10/24
- 09:32

山田さんの靴を片方持っている 倉本朝世記憶とは、新しい事件に出会うたびに総体が大きく組み変えられる一つの生きものである 中井久夫「心的外傷寸感」【記憶のシンデレラとVUE(未知の暴力的出来事)】過去の記憶や思い出って不思議なものだとおもうんですけど、なにか新しいことがあるたびに意味合いが変わってくるんですよ。だから〈それ〉だけを記憶したり思い出したりしているわけではなくて、全体の変動しつつある...
【こわい川柳 第九十六話】もう一度くるさようなら-重森恒雄-
- 2015/10/22
- 01:00

もう一度蹴られる場所に腰かける 重森恒雄【何度でもするさようなら】前からちょっと不思議だったのが川柳ってさよならとかお別れの雰囲気を出している句が多いんですね。で、よく俳句って挨拶の文芸と言われたりもしますよね。すごくそっけない句がとてもよいといわれるのはそういう〈挨拶性〉があるからだとおもうんですね。だって、たとえば、学校や職場で毎日会う人から、こんにちは、を毎日劇的に言われたらいやじゃないで...