【感想】忘れられやすい去りかた企てる いわさき楊子
- 2015/11/24
- 06:00

忘れられやすい去りかた企てる いわさき楊子よしや人情を写せばとて、其皮相のみを写したるものは、未だこれを真の小説といふべからず。其骨随を穿つに及びて、はじめて小説たるを見るなり 坪内逍遥『小説神髄』【企てられたさようなら】いわさきさんの句集『らしきものたち2014』からの一句です。川柳は〈さよならの文芸〉なんじゃないか、と以前ちらっと書いたんですが、それは川柳がほかの文芸とはちがったかたちで〈私性...
【感想】すぐ泣くすぐ知るすぐ萌える きゅういち
- 2015/10/29
- 12:00

すぐ泣くすぐ知るすぐ萌える きゅういち春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。… 清少納言『枕草子』【世界の中心で萌えを叫ぶ】『川柳北田辺』からの一句です。「萌える」ってなんなのかということを考える場合にわかりやすい説明があって、それは古文の「をかし」と同じなんだと考えるとわかりやすいっていう説明があるんですよ。つまりたとえば清少納言は『枕草子』の...
【感想】心中の生死を分けたコラーゲン 丸山進
- 2015/10/19
- 01:00

心中の生死を分けたコラーゲン 丸山進【理解と非理解】以前、丸山さんの句集『アルバトロス』を読んだときに、丸山さんが「あとがき」でご自身がサラリーマン川柳から始められてだんだん詩性川柳も取り込まれていったというようなことをたしか書かれていたのが印象的だったんですよ。で、わたしは丸山さんの川柳ってそうした〈サラリーマン性=社会派性〉という枠組みと〈詩性=私性〉という枠組みを折衷したところにひとつの魅...
【感想】マンモスになるまで交尾くりかえす 浪越靖政
- 2015/10/18
- 10:10

マンモスになるまで交尾くりかえす 浪越靖政【シャローナのために】たとえば〈性〉を川柳のなかに表現として託し込むときに、どこらへんがリミットになるんだろうとよく考えるんです。それは言葉を変えれば、文学史的な自然主義にもみられたように〈性〉は〈私語り〉のモードと結びつきやすいので、そうした〈私語り〉のモードと手を切るぎりぎりのラインはどこらへんにあるんだろうと。で、そのぎりぎりのラインというのは実は...
【感想】目の前に水晶玉がある逢える 時実新子
- 2015/10/01
- 23:15

目の前に水晶玉がある逢える 時実新子【逢える、のか】時実さんはじぶんの心情をありったけ吐いているようにも一見みえがちなんだけれども、そうではなくて、その〈吐く〉過程に〈きちんと〉屈折があるようにおもうんですよね。で、その屈折が入ることによって時実さんの句は〈構造〉となっているんじゃないかとおもうんです。なかはらさんのオズの国の句の話をしてからふいに思い出したこの水晶玉の句なんですが、なかはらさん...