【感想】秋雨やふえるわかめとコンドーム 榊陽子
- 2015/10/15
- 20:04
秋雨やふえるわかめとコンドーム 榊陽子【ふえるわかめの認識論】榊陽子さんの「ふるえるわかめ」『週刊俳句』からの一句です。この連作のひとつ、おもしろいところに添え書きとして、 (なな子、社長ほか代用可)と書いてあるんですね。ですから、秋雨やふえるわかめとコンドーム 榊陽子だけでなく、秋雨やふえるなな子とコンドームとかでもいいわけです。もちろん「ほか」と書いてあるので、秋雨やふえるウルトラマンとコ...
【感想】チャーシュー麺は春に似ている 樋口由紀子
- 2015/09/06
- 22:27

チャーシュー麺は春に似ている 樋口由紀子 しかし、人間の状況を決定するのは関係の絶対性だけである。ぼくたちは、この矛盾を断ちきろうとするときだけは、じぶんの発想の底をえぐり出してみる。そのとき、ぼくたちの孤独がある。孤独が自問する。革命とは何か。もし人間における矛盾を断ち切れないならばだ。吉本隆明『マチウ書試論』【「似ているもの」を十四字以内で述べなさい】月波与生さんがおっしゃられていてわたし...
【感想】焼きみかん中途半端に人恋し 平井美智子
- 2015/06/16
- 13:00
焼きみかん中途半端に人恋し 平井美智子【焼きみかんという感情】今回の〈おいしい川柳〉は、平井さんの句集『なみだがとまるまで』からの一句です。「焼きみかん」ってふしぎなたべものですよね。ふだんみかんを焼きませんから、そもそも〈焼こう〉とおもったときに、通常の意識のモードとはちがうとおもうんですよね。みかん焼こうかな、焼いてたべたいな、という意識。で、その通常とは意識がちがうモードが恋愛感情にたくさ...
【感想】まろやかなレンガを旅の途中にて くんじろう
- 2015/06/10
- 19:23

まろやかなレンガを旅の途中にて くんじろう 【そのレンガは味の宝石箱】柳誌『So』4号から、ゲストだったくんじろうさんの一句です。わたし、今回このくんじろうさんの句を〈おいしい川柳〉に入れてみたんですが、たぶんですね、語り手はレンガを食べているんじゃないかとおもうわけです。これは旅の途中で食べちゃっているぞ、と。まろやかにはもちろん丸みをおびたという意味もあります。ですが、基本的にはまろやかなこの...
【感想】淋しくて国民になるバナナかな 岡村知昭
- 2015/06/09
- 18:00
淋しくて国民になるバナナかな 岡村知昭【魔法とバナナと奇蹟の冒険】岡村さんのこの句は俳句なんですが、この岡村さんの句とこれからご紹介するバナナの川柳に共通している点に、どうも17音のなかではバナナはマジカルな食べ物らしいということがあるようなんです。岡村さんの句では「バナナ」が「国民にな」り、ナショナリティをもっていく過程が語られていますが、上五の「淋しくて」にあるように、バナナの〈内面〉もまた語...