【ふしぎな川柳 第九十夜】恣意的なおはよう-兵頭全郎-
- 2016/04/28
- 01:13

おはようございます ※個人の感想です 兵頭全郎【意味の法律家】兵頭全郎さんの句集『n≠0』からの一句です。全郎さんの川柳ってすごく難しいなと思っていて、でも私がちょっと思うのは、全郎さんの川柳から川柳論のようなものをたちあげていくと、すごく新しい川柳論ができるんじゃないかなと思ってるんですね。これは直観なんですが。で、なんでそう思うかというと、あんまり他ジャンルの手法が〈もちこみ〉で使えないという...
【ふしぎな川柳 第八十九夜】そうだね、クリストファー-魚澄秋来-
- 2016/04/26
- 21:44

クリストファーと名付けたくなる朝がある 魚澄秋来【やってきたクリストファー】これすごくすてきな句だなと思って、以前からずっと考えてたんですね。語り手にとってこの朝っていうのがかけがえのない朝だったんだ、スペシャルな朝だったんだっていうのはひとめでわかる。じゃあどうしてスペシャルだとわかるのか。まず、〈名づけ〉ですよね。名前がつくとカテゴライズされてそれはスペシャルなものになる。どうして特別なもの...
【ふしぎな川柳 第八十八夜】死にました、よ-岩田多佳子-
- 2016/04/08
- 18:24

やわらかい指で差されて死にました 岩田多佳子ここは、いったいどこだろう、なんの物音もない。そのような、無限に静寂な、真暗闇に、笠井さんは、いた。 太宰治「八十八夜」【形式のなかであなたと暮らす】さいきんちょっと現代川柳にはなぜ〈口語形式〉が多いんだろうって考えていたんです。ぜったいに非経済的なはずなんです。17音しかないわけですから、口語なんて饒舌な形式を選ぶのは間違っている。しかも、〈ていね...
【ふしぎな川柳 第八十七夜】ゆっくりねむっていってね-弘津秋の子-
- 2016/04/02
- 00:14

春の小川講演会でよく眠る 弘津秋の子【眠ることは、非接続的接続】わたし、ねむる句っていうのが好きなんですね。なんていうんでしょう、わざわざ〈川柳〉という形式のなかに踏み出していったのに、その〈川柳〉という形式のなかで眠ってしまう。どうゆうことだ、っておもうんですね。でも、基本的に文学は、眠るひとのものでもあるような気がするんですよ。前回の佐藤幸子さんの句もそうだったんですが、文学って基本的には言...
【ふしぎな川柳 第八十六夜】〈ふわっ〉とした私性-佐藤幸子-
- 2016/04/01
- 23:18

ふわっと骨折水の流れに逆らえず 佐藤幸子【ふわっとしたリアル】わたし、この佐藤さんの句とても好きなんですね。で、佐藤さんのお家に遊びに行かせていただいたときに、佐藤さんがこの句は〈そのまま〉を描いたのよ、っておっしゃったんですよ。だから佐藤さんにとってこの句って〈私小説〉的なんですね。そのまま、なんですよ。でも、一読して〈私小説〉的にはみえませんよね。それは「ふわっと」という副詞がどう考えても「...