【ふしぎな川柳 第百夜】朝を迎えるために-松岡瑞枝-
- 2016/05/07
- 02:51
ぼろぼろになって帰って来てくれた 松岡瑞枝【第一夜に帰ってきた】この「ふしぎな川柳」のシリーズって第一夜を次の川柳で始めたんですね。幸せで幸せで死を考える 松岡瑞枝この最大の逆説はなんだってことからこのふしぎなシリーズを始めたんですよ。それでそこからずっと九十九の夜を越えてきたんだけれども、九十九夜にしてたどりついたのは、ひとは《最大の恣意性》を引き受けて生きているんだっていうことなんじゃない...
【ふしぎな川柳 第九十九夜】すべての夜の終わりに-小池正博-
- 2016/05/07
- 01:30

都合よく転校生は蟻まみれ 小池正博【ふしぎとは、恣意性である】川柳カード大会で小池さんと対談させていただいたときに小池さんが自選句として出されていた句なんですね。で、そのあとで私は時評でこの小池さんの蟻の句に〈喩え〉の観点からふれていたんですが、またさいきんこの句について考えていたんです。こんどは言葉の観点じゃなくて、《じぶんじしん》の観点から。《じぶん》を込みで、《恣意的に/都合よく》この句と...
【ふしぎな川柳 第九十八夜】「どうしても」って使ったことがありますか?-樋口由紀子-
- 2016/05/05
- 01:44

どうしても桜の下に来てほしい 樋口由紀子【カラフルなオカルト】「どうしても」ってすごい言葉ですよね。そういえば、じぶんの人生で「どうしても」って使ったことあるかなあってちょっと考えるくらいにインパクトの強い言葉です。この句がおもしろいのって上5で、インパクトの大きい「どうしても」というストレートな欲動を出しておきながらも、中7から〈すこし隠す〉ところにポイントがあるんじゃないかと思うんです。「桜...
【ふしぎな川柳 第九十七夜】けっこう走ろうよ―久保田紺―
- 2016/05/04
- 00:05

傾いたままで結構はしれます 久保田紺【過剰性、わたしたちの】紺さんの句集を読んでいたときに紺さんの川柳のなかの〈過剰性と向き合う態度〉っていうのが割と大事なのかなって思ったんです。たとえば、「傾いたままで結構はしれます」ってひとつの過剰性だと思うんです。傾いて〈まで〉ひとは走らなければならないのか、ってことなんだけれども、でも紺さんの川柳のひとつの答えは、いや「結構」それでもいけるんだよ、ってい...
【ふしぎな川柳 第九十六夜】鬼である―中村冨二―
- 2016/05/03
- 23:24

立ち上がると 鬼である 中村冨二【ああ、鬼だ】空白文化ってあると思うんですよね。短詩における。で、短詩において空白っていうのは実はとっても〈過激〉なんじゃないかと。なんで空白が過激なのかというと、たぶんこの空白によってシーンや意識が180度変わるからだと思うんですよ。空白ってただあいているというよりも、埋められなかった〈非言語〉といったほうがいいような気がするんです。本来的には短詩は音律芸術だから...