【希望の川柳 九日目】今夜、並行世界(パラレルワールド)へ行こう-岩田多佳子-
- 2016/06/21
- 23:37

寝ている水に声をかけてはいけません 岩田多佳子【水はむこうの世界にある】『週刊川柳時評』で小池正博さんが兵頭さんの句に対してこんなふうに句解をはじめていたんです。(http://daenizumi.blogspot.jp/2016/05/blog-post.html?m=1)どうせ煮られるなら視聴者参加型 兵頭全郎「どうせ見られるなら」であれば意味が通りやすいが、「煮られるなら」となっている。たしかにこの兵頭さんの句は「どうせ見られるなら視聴者参...
【希望の川柳 八日目】言葉の終わりの風景-岩根彰子-
- 2016/06/06
- 00:23

マンホール溢れさせてる疒 岩根彰子 【言葉が言葉を言葉で描く】この岩根さんの句って「疒(やまいだれ)」が「マンホール」を持ち上げるくらいに物質化してると思うんですね。現代川柳ってこの岩根さんの句のようにときどき漢字を〈解体〉してモノにしてしまうところがあると思うんです。そういう表現をするのが川柳なんだと。たとえば、佐藤みさ子さんの川柳に、言葉だけ立ちふさがってくれたのは 佐藤みさ子っていう句が...
【希望の川柳 七日目】限りなくゼロに近い希望-兵頭全郎-
- 2016/06/02
- 12:18

風車風見鶏風くるくるくると墜ちていくのが最後尾行から直帰刑事は夜の顔という顔がくるくる遊園地にも足跡のない轍とも堀ともとれる幅に立つとすぐ椅子を持ち去る第二秘書くるくるさっきまでの罠らしく唇として開けてある 兵頭全郎【すべてが(ほぼ)0になる】全郎さんの句集『n≠0』のひとつの特徴を自分なりに考えてみたときにそれは、〈内面〉をいっさい構成させない、っていうことなんじゃないかと思うんです。たとえば...
【希望の川柳 六日目】風葬の夏-飯島章友-
- 2016/05/29
- 22:40

過去問を解きつつ風葬だったこと 飯島章友コンビニの冷蔵棚の奥の巨眼 〃【ナイフはずっと落ちている】飯島さんの『恐句』からの二句です。飯島さんの川柳の〈恐さ〉って語り手が川柳のなかで川柳を語りつつ〈気づいてしまう〉ところにあるとおもうんですよ。「風葬だったこと」に気づく。「奥の巨眼」に気づく。京極夏彦の大切なモチーフでもあると思うのだけれど、それまで〈知ってはいたけれど・気がつかなかったこと〉に...
【希望の川柳 五日目】元気な希望-弘津秋の子-
- 2016/05/28
- 23:16

魚とご飯しっかり食べて逢いにゆく 弘津秋の子 (『句集 アリア』)【元気な密会】現代川柳って〈逢う〉っていう動詞がなかなかに多いと思うんですね。これは短歌や俳句にくらべても多いと思うんです。私はけっこう実はこの〈逢う〉って動詞に川柳性のなにがしかがあるんじゃないかと思っているんですが、大事なことはこの〈逢う〉って動詞がそんなに率直に〈逢う〉として機能していないところ...