【あとがき】松尾スズキ『業音』のあとがき
- 2018/12/09
- 20:38
何を信頼していいのかわからない時代に、育てたいのは身の内の野蛮人の心だ。この作品を読み返して、自分が野蛮な作家であったのを思い出した。なんて野蛮な人間がたくさん出て、野蛮な結末をむかえるのだろう。正直、びびっている。びびりながら生活している。「でも、心の中には野蛮人はいるんだぜ! その野蛮人はなにをしたっていいと思っているんだぜ! 俺はなににも従わない!」9・11以降、私の中には常にそう叫んでいる何か...
【あとがき】水木しげる『ほんまにオレはアホやろか』のあとがき
- 2018/09/11
- 17:16
青年時代にも、お化けのことを、まじめに調べたりすると、「こいつ、バカじゃなかろうか」と、いわれたものだ。しかし、バカなことでも、長い間やっていると、それに関連した、いろいろなこと、たとえば、神様だとか、地獄の世界といったことにも、興味がおよび、知らない間に、それを調べることが《生きがい》みたいになったり、また、天が助けてくれるとでもいうのだろうか、今では、お化けだけで、《めし》が食えるという、あり...
【あとがき】柄谷行人『ダイアローグ』のあとがき
- 2018/06/14
- 18:13
ディオゲネスは真昼にランプを掲げて町中を走り「人間はいないか」と叫んでまわったという有名な伝説がある。そんな真似はしたくないが、「人間はいないか」という気持は私にもある。 柄谷行人「あとがき」『ダイアローグ』...
【あとがき】玉川重機『草子ブックガイド』のあとがき
- 2018/02/24
- 01:59
もう十年以上も前の事になりますが、私は本名の「玉川俊秀」でマンガを描いていました。そして、この度、本当に久しぶりに漫画を描かせて頂く事になったのですが、それにあたって名前を「玉川重機」に変えさせてもらいました。玉川重機というのは、私の父が経営していた有限会社の名前でした。大きな会社の下請けをしていたこの会社は、私が高校生の頃に色々あって倒産してしまい、私はしばらく高校生ホームレスをする事になってし...
【あとがき】五味渕典嗣『谷崎潤一郎讀本』のあとがき
- 2017/11/22
- 18:11
花田清輝ではないが、最近の仕事では努めて〈楕円〉を意識している。いたずらに新奇さを追い求めるのではなく、専門性という名の制度の内側のみに泥むのでもない。過去の蓄積を受け止めながら、文学研究・批評の新たな可能性を模索していくこと。 五味渕典嗣「編集後記」『谷崎潤一郎讀本』...