【感想】あとがきって、なんだろう-シリーズ・なんだろう-
- 2016/04/26
- 23:34
あとがきのように寂しいひつじ雲見上げてきみのそばにいる夏 大森静佳「あとがき」の段々畑まっぴるま 岩田多佳子【あとがき入門】あとがきってなんだろうってときどき考えてるんですね。今まで生きてきてあとがきについて学ぶ機会ってなかったような気がするんです。《教育的》にですよ。あとがきを読んで、じぶんなりにあとがきを学んでいくしかなかったような気がして。きょうから書けるあとがき入門、って本はないんです...
【感想】或いはわたしたちはどんなふうにたった一度きりの鍵を使うのか-短詩の鍵-
- 2016/04/25
- 00:48

おねがいねって渡されているこの鍵をわたしは失くしてしまう気がする 東直子よく眠る人から鍵を渡される ながたまみ長き夜の外から鍵のかかる部屋 喪字男【内側の鍵】鍵をめぐって上から短歌・川柳・俳句と並べてみました。で、このみっつの鍵をめぐる短詩からわかってくるのは、鍵っていうのは決して〈密室〉や〈自閉〉をつくるものではなくて、たえず〈外〉にむかって送り返されていくものなのではないかと思うんです。...
【感想】瀧村小奈生さんの欅、東直子さんの楡-短詩の森のなかで-
- 2016/04/14
- 12:36

息止めて止めて止めて止めて 欅 瀧村小奈生毒舌のおとろえ知らぬ妹のすっとんきょうな寝姿よ 楡 東直子【樹木の認】瀧村さんの川柳の「欅」も、東さんの短歌の「楡」も結語として凄く効いている気がするんですね。一読したしゅんかん、ああこれしかないんだ、って思ってしまう。で、なんでだろうって考えてみると、欅も楡もとても大きな樹木だけれど、そうかんたんにもう《動きようがない》んです。そこからさきの《アクシ...
【感想】比喩があるからあなたにあえる/ない-比喩と外傷-
- 2016/03/15
- 18:44

ほんとうをひかりでつつむ比喩でしかあなたにちかづくことはできない 兵庫ユカ病む父と母が疲れて眠る家雨の中なににも喩へたくなし 米川千嘉子比喩、花か 花尻万博【比喩と非・比喩】短詩のなかの比喩の質感というものに以前から興味があったんですが、どうも短詩のなかでは比喩というのはそれそのものがマテリアルな〈距離感〉のようにも思えるんですね。たとえば一般的には短詩のなかでどれだけなめらかに比喩を使える...
【感想】枕元に眼鏡と靴と携帯を置いて眠れば現実の如し 穂村弘
- 2016/03/11
- 13:20
枕元に眼鏡と靴と携帯を置いて眠れば現実の如し 穂村弘現実なるレベル・セブンの春の昼 関悦史【〈現実〉が少しずつ変わっていった】〈震災〉をめぐる歌と句なんですが、穂村さんの歌も、関さんの句にも「現実」という言葉が埋め込まれています。ただそれら〈現実の位相〉が、「現実の如し」や「現実なる」という言葉遣いのように、今までふつうに接していた〈現実〉ではなくて、これまでであったことがないような〈現実〉に...