【川柳】炭酸の…(かばんも五七五大賞・かばん2014年3月号 佳作・飯島章友選)
- 2014/03/31
- 22:48

炭酸の底にうしなう鍵の束 柳本々々(かばんも五七五大賞・かばん2014年3月号 佳作・飯島章友選)【自(分で)解(いてみる)-それでもわきあがるちから-】かばんの編集人をされていた飯島章友さんから選んでいただいた一句。わたしにとって「かばんも五七五」ははじめて入った川柳の教室のような存在で、毎回飯島さんからいただいたコメントを何度も読み直しては、自分にとって川柳とはなんだろうとかんがえなおしたりもし...
【あとがき】木村榮一『翻訳に遊ぶ』のあとがき
- 2014/03/31
- 12:06
読み進むうちに読者はそれが翻訳書であることを忘れる、つまり、黒子である訳者の姿が消えている、そういう訳が理想ではないかとひそかに考えている。しかし、訳を進める翻訳者はその陰で、テキストを愛しつつも、思い悩み、迷い、苦闘し、時にはいらだち、怒りを覚えることさえある。まさしく、彼はテキストを愛し、ともに生きているのである。巻頭に引いたオウィディウスの言葉(「うまく隠れて生きた者こそ、よく生きた者だ」と...
【短歌】密室で…(かばん新春題詠2014「お題:探偵」2014年3月号 18点)
- 2014/03/31
- 05:04

密室で青空をみる探偵にのびやかに来よ春の殺人(かばん新春題詠2014「お題:探偵」2014年3月号 18点)【鈴木牛後さんの短歌の感想-探偵と絶対-】今回のかばんの新春題詠でいちばんの得点歌(42点)は、鈴木牛後さんの「探偵の百人住んでゐる村の尾行はつひに円環となる」だった。わたしもはじめて読んだとき、とてもおもしろいなと感じた歌だったのだが、この歌のひとつのおもしろさは「探偵はひとり」という鉄則を裏返してい...
【あとがき】小森陽一・五味渕典嗣・内藤千珠子『漱石文学全注釈9 門』のあとがき
- 2014/03/30
- 21:20
テクストのかなりの分量を家の中の場面が占める『門』を読む上で、ランプ・ちゃぶ台・台所(お米と清は、立って作業をしていたのだろうか?)など、様々なモノを前にした人々の振る舞いを知っておくことは重要である。けれども、そうした身体的な記憶は、もはや失われつつあるといってよい。(……)近代においても、民俗学な関心からの〈生活誌〉のような仕事が必要なのかも知れない。ただし、むろんそれは、失われてしまった記憶を...
【川柳】さんかくの…(第27回 ながいき川柳2014春「お題:まる・さんかく・しかく」 特選・大野風柳選)
- 2014/03/30
- 20:58

さんかくの角を語れるきみに会う 柳本々々(第27回 ながいき川柳2014春「お題:まる・さんかく・しかく」 特選・大野風柳選)【自(分で)解(いてみる)-いま、そこにある、かど-】哲学者のドゥルーズが「無意味なことを語れるのがともだち」といっていたようなきがするが、もし「さんかくの角を語」りあえるひとに出会えたら、それだけで〈できごと〉になるのではないか。さんかくの角を語ることは無意味かもしれないが、...
【あとがき】千葉雅也『動きすぎてはいけない』のあとがき
- 2014/03/30
- 20:30
三人の師への感謝を記しておきたい。中島隆博先生からは、自由に読み、書くことを基礎から学んだ。小林康夫先生からは、決定することを学んだ──或る有限な、僕ならばこう書くしかない、こう話すしかないのだ、という決定の無根拠なる勇気に耐えるということを。松浦寿輝先生には、学術と並行して文学の実験をするようにといつも励まして頂いた。本書が学術的な書法から多少逸脱しているとしたらそれは、松浦先生の励ましに後押しさ...
あとがき々々々々
- 2014/03/30
- 20:20
名前をつけるのが、へたくそである。たぶん。ほんとうはわたしは、本々々々(もともともともと)という、もとの4乗のような名前にしようと思っていたのだが、だんだんと、ナショナリティーもわからなくなっていき、〈異邦人〉化していきそうだったのであきらめた。なんだか、これでは、「來々軒(らいらいけん)、シュウマイあります」みたいではないか。それでいっそ、もともともともとにしようかとおもったのだが、だんだん、〈...
【短歌】線香の…(毎日新聞・毎日歌壇2014/2/24掲載 加藤治郎選)
- 2014/03/30
- 20:20

線香のかおりがふいにたちこめる電車に乗って、季語不毛地帯 柳本々々(毎日新聞・毎日歌壇2014/2/24掲載 加藤治郎選)【自(分で)解(いてみる)-そうだ、季語不毛地帯いこう。-】山手線に乗っていたときにとつぜん線香の香りが立ちこめてきて、なんだろう、とおもったことがある。なんだ、どうしたんだ、と。電車という空間は、だしぬけに他者に遭遇する空間なのだけれど、そのとき他者だったのは〈香り〉だった。しかも...
【あとがき】大野左紀子『アート・ヒステリー』のあとがき
- 2014/03/30
- 17:14
80年代前半に芸術大学を卒業し東京から無風状態と思えた名古屋に帰ってきて、私はアーティスト活動を始めました。脱領域化、私小説化、ポップ化への急速な流れに微妙な違和感を覚えながらも、それまでのモダニズムでもやっていけないという“分裂”の中で制作していた私にとって、拠り所となったのは美術・芸術について考えるための読書でした。(……)二十年経って、私はアーティスト廃業に至りました。しかしアートをやめたのに、そ...
【川柳】ふたのない…(やすみりえのほっと川柳「お題:ふた」NHK総合2014/2/14放送 やすみりえ選)
- 2014/03/30
- 02:21

ふたのないたまて箱ならもっている 柳本々々(やすみりえのほっと川柳「お題:ふた」NHK総合2014/2/14放送 やすみりえ選)【自(分で)解(いてみる)-浦島太郎がくれなかった匣-】たまて箱とは、なんだろう。浦島太郎だけが特権的に「開封」できるものなのだろうか。いや、それは、ちがう。だれもがたまて箱のふたをあけているし、ふたのないたまて箱をもったまま生きていかざるをえないのではないだろうか。たまて箱の〈本...
【あとがき】五味渕典嗣『言葉を食べる』のあとがき
- 2014/03/30
- 01:12
もちろん、あらゆるテクストに〈いま〉を見出せると思うのは、過去を論じる者に不可避的につきまとう遠近法的な倒錯にすぎないし、〈いま〉を語ったつもりになることで、分析の未熟さや不完全さが糊塗できるとも思わない(それはそれとして批判されるべき事柄だ)。だが、「文学作品」を論じる際には、「それが成立した時代のなかにそれを認識する時代を描き出すこと」こそが大切なのだ、と言った1931年のベンヤミンに励まされつつ...
【短歌】のりべんが…(日経新聞・日経歌壇2014/1/26掲載 穂村弘選)
- 2014/03/30
- 00:59

のりべんがきらきらしつつ離れてく銀河鉄道途中下車不可 柳本々々(日経新聞・日経歌壇2014/1/26掲載 穂村弘選)【自(分で)解(いてみる)-聖なるのりべんを求めて-】のりべんの死/詩についてずっとかんがえていたときにつくってみたうた。斉藤斎藤さんの「雨の県道あるいてゆけばなんでしょうぶちまけられてこれはのり弁」という短歌ののりべんの不可逆性や宮沢賢治(をとおした杉井ギサブローさん)のアニメ『銀河鉄道...