【感想】先生の背後にきのこぐも綺麗 谷雄介
- 2014/04/23
- 14:28
先生の背後にきのこぐも綺麗『新撰21』から谷雄介さんの句です。現代俳句のひとつの特徴に視線を同一化していくのではなくて、たえず視線を差異化=多重化させていくような、〈微分化される視線〉という主題があるようにおもうんです。たとえば神野紗希さんにこんな句があります。 延々とCMピザの上の海老この句の視線にまつわる構造は、うえにかかげた谷雄介さんの句とおなじような構造をとっているのではないかとわたしはお...
【感想】大西泰世『句集 こいびとになってくださいますか』-ファイナル・リア充のゆくえ-
- 2014/04/22
- 12:14
こいびとになってくださいますか吽(うん)本書のタイトルにもなっている句で、まえまえからずっと気になっていた句だったんですが、大西さんの句集を読みながら、この句は内容面よりも形式面でとらえたほうがいい句なんではないかとおもいました。この句は、「吽」までがすべてひらがな表記になっているのが大事なのではないかと。そして「うん」という本来はひらがな表記するべきはずの発話が「吽」と漢字変換されている。本来...
【感想】加藤治郎『歌集 雨の日の回顧展』-意識の句読法-
- 2014/04/21
- 12:50
ふれたなら幼い耳であるようにとれそうなノブ、ふれたのだろう加藤治郎さんの初期の短歌には、記号を用いたうたがおおくみられることも特徴的なんですが(ちなみにこの第七歌集には少ない)、加藤さんの短歌における読点(、)の役割についてすこしかんがえてみたいんです。たとえば、うえの歌なんですが、結句の前に読点がおかれることによって、そこでうたがいったんとぎれています。この読点があることによって「ふれたなら」...
【感想】現象でした 通知表の4でした 咲きっぱなしの桜はとても 笹井宏之
- 2014/04/12
- 12:45
現象でした 通知票の4でした 咲きっぱなしの桜はとても 笹井宏之【構造の魔術師-帽子から構造がでる-】定型っていうのは、サブテキストなんじゃないか、副読本なんじゃないかっておもうことがあります。短歌っていうのは、二層仕立てになっていて、まずテキストとしての歌があります。しかしその歌の注釈として定型があるんじゃないかっておもったりすることがあるんです。それを笹井宏之さんの歌を例にとってかんがえてみ...
【短歌】ふゆのひに…(毎日新聞・毎日歌壇2014/2/17掲載 加藤治郎選)
- 2014/04/10
- 12:31

ふゆのひにリア獣といういきものがデジタルの闇に遠足にゆく 柳本々々 (毎日新聞・毎日歌壇2014/2/17掲載 加藤治郎選)【自(分で)解(いてみる)-歌からリア獣を、解き放つ-】短歌には、ひとつのカテゴリーとして「リア充短歌/非リア充短歌」というのがあるような気がするんです。これはあとで述べるように永井祐さんの歌集『日本の中で楽しく暮らす』を読んでいてだんだんとおもいはじめたことなんですが、なぜ...
【感想】秋の暮ともかく終点まで行こう 池田澄子
- 2014/04/09
- 14:46
秋の暮ともかく終点まで行こう 池田澄子 「終点まで」『角川俳句』2012/10【池田澄子-終点としての始点-】定型詩とは、なんなのか、ということを考えたときにひとついえることは、それは確実な〈終わり〉がくる、っていうことだとおもうんです。たとえば、文章で「秋の暮ともかく終点まで行こう」って書いてあったら、これは〈はじまり〉であり、読み手もこの一文を読んだ瞬間につぎの位相をまちかまえる...
【短歌】ディズニーの…(毎日新聞・毎日歌壇2014/4/7掲載 加藤治郎選)
- 2014/04/08
- 23:13

ディズニーのテクニカラーの象たちが高熱のたび部屋埋めつくす 柳本々々 (毎日新聞・毎日歌壇2014/4/7掲載 加藤治郎選)【自(分で)解(いてみる)-ピンクの象は、好きですか?-】じっさいに風邪をひいて寝込んでいるときに作ったうた。ディズニーの『ダンボ』に酔っ払ったダンボの頭上をピンクの象たちが行進する有名なシーンが、ある。非常にサイケデリックかつ幻覚的なシーンで、ディズニーアニメーションのラディ...
【感想】カーテンをくぐってやわらかくなった風 図書館が深海のよう 田中ましろ
- 2014/04/07
- 22:55

【図書館でするかたすみさがし-きょうからできるシーラカンス入門-】前掲記事で図書館のはなしを書いたんですが、短歌において図書館はどううたわれているのかということをかんがえてみるために田中ましろさんの歌集『かたすみさがし』から図書館にかんする短歌をご紹介したいとおもいます。カーテンをくぐってやわらかくなった風 図書館が深海のよう群れるときわたしは消える図書館の深くに史書の眠るみたいに探しもの見つけた...
【短歌】図書室の…(「短歌研究詠草四月」『短歌研究』2014/4 佳作・馬場あき子選)
- 2014/04/07
- 22:49

図書室のまだひらかれぬ戯曲からひかりが漏れる生殖の雨季 柳本々々 (「短歌研究詠草四月」『短歌研究』2014/4 佳作・馬場あき子選)【自(分で)解(いてみる)-書物の生殖、または愛-】図書館は、不思議な空間だとおもう。たとえば地下迷宮のような施設もかねそなえた大学図書館の地下ふかくにはいっていくとき、この本はまだだれからもいちどさえひらいてもらったことがなくて、何十年も閉じられたまま、こ...
【感想】やってごらん、いないいないばあを。わたくしはまだかなしくもさびしくもない 柳谷あゆみ
- 2014/04/06
- 09:17

やってごらん、いないいないばあを。わたくしはまだかなしくもさびしくもない 柳谷あゆみ 『ダマスカスへ行く 前・後・途中』【柳谷あゆみがするいないいないばあ-指紋認証なんか、いらない-】柳谷あゆみさんの『歌集 ダマスカスへ行く 前・後・途中』のなかに、前掲記事に書いたわたしの「指紋認証」の歌のまったく逆をいくような歌があるのでご紹介したいとおもう。この歌でポイントになるのはまず「いないいない...