【感想】こんばんはこの繁殖は違法ですただちにそれを抜いてください 木下龍也
- 2014/04/30
- 14:25

こんばんはこの繁殖は違法ですただちにそれを抜いてください 「毎日歌壇」『毎日新聞』2014/2/24木下龍也さんの短歌のひとつのモチーフにオートポイエーシスとしての〈繁殖〉があるようにおもうんです。オートポイエーシスとはこの場合、「自己生成・自己変換・自己破壊」という勝手にシステム化して、そのシステムを自律的に自己循環しているような、そういう生成=破壊のシステムというような意味です。そし...
【短歌】ぼくよりも…(「うたう☆クラブ」『短歌研究』2014/3 ★付き・斉藤斎藤 選)
- 2014/04/29
- 18:01

ぼくよりもとなりにすわる思い出がきみのひだりにとてもくわしい 柳本々々 (「うたう☆クラブ」『短歌研究』2014/3 ★付き・斉藤斎藤 選)【自(分で)解(いてみる)-柳本栁本という主体 -】短歌っていうのは、短歌の構造そのものの性質として、〈右〉や〈左〉という位置性そのものに敏感になりやすいんじゃないかってときどきおもうことがあるんです。で、なんでそんなふうなことをかんがえたかというと、そこに...
【感想】『セレクション歌人26 東直子集』-読み手を歌い手に変える鍵-
- 2014/04/28
- 22:28

そうですかきれいでしたかわたくしは小鳥を売ってくらしています東直子さんの短歌のひとつの特徴として、語り手が世界に応答した結果、歌をうたわざるをえないような状況に追い込まれ、そこからうたいはじめる、というのがあるようにおもいます。つまり、なんらかのXから呼びかけられることで、それに呼応するかたちで短歌がとつぜんせり出してくる。たとえばうえのうたではまさに「そうですか」ではじまるのですが、「そう」を...
【感想】御中虫『句集 関揺れる』-どこから・だれとして・なにを・かたれる/ないのか-
- 2014/04/28
- 19:13

茨城に関といふ人あり揺れる 関揺れる人のかたちを崩さずに 関揺れるさうかそつちが死の淵か 「この季語は動きませんね」関揺れる御中虫さんの俳句に特徴的なのは、御中虫さんが俳句で連(句群)をつくっていくその過程において、構築しながらも解体していくという解体構築のプロセスを踏んでいくということなのではないかとおもうんです。つまり、御中虫さんの俳句にあっては、俳句を志向しつつも、俳句でない領域が、俳句に...
【感想】じゃんけんで負けて蛍に生まれたの 池田澄子
- 2014/04/27
- 17:00
じゃんけんで負けて蛍に生まれたの 池田澄子とても有名な池田澄子さんの俳句です。この句のおもしろさは、季語(「蛍」)が偶有化しているところがおもしろいんじゃないかとおもうんです。「じゃんけんで負けて蛍に生まれた」ということは、潜在的にもうひとつの句がこの句には埋め込まれているわけです。「じゃんけんに勝ってXに生まれたの」と。つまり、このXの部分に季語がおかれているこの句の構造がだいじなのではないか...
【感想】おじゃまにはならないポだと思います ひとり静
- 2014/04/26
- 13:18
おじゃまにはならないポだと思います ひとり静モダリティという、語り手がモノ・コトに対してどんなふうな位置からどんなふうなことばづかいでそれを語ろうとしているかという話しているひとの様相をあらわす概念があるんです。そのモダリティ、語り手がどんなふうに語ろうとしているかが、この句には大事なんではないかとおもうんです。「おじゃま」や「と思います」などひじょうにていねいな立場をとっているということがこの...
【短歌】『舞姫』の…(「公募短歌館」『角川短歌』2014/5 秀逸・川野里子 選)
- 2014/04/26
- 12:54

『舞姫』の〈失神〉だけを取り出して修論を書くTOKYOの「われ」 柳本々々 (「公募短歌館」『角川短歌』2014年5月号 秀逸・川野里子 選)【自(分で)解(いてみる)-逃げる日本近代文学史-】川野里子さんからていねいな選評をいただきました。「男に捨てられた事を知ったエリスの失神。「TOKYO」は男が逃げ帰った安全な場所だ。そんな場所からエリスの失意を主題に論文に書こうとしている。理屈っぽい歌だが、誠実さが...
【感想】悲しくてあなたの手話がわからない 月波与生
- 2014/04/25
- 23:10
悲しくてあなたの手話がわからない 月波与生大好きな句なんですが、この句の画期的な点は、語り手が〈わからない〉の領域に踏み込んでしまっているところだと思うんです。この句の大事な点は、〈あなた〉とのコミュニケーションが〈言語〉ではなく、「手話」という非言語的交通によってなされている点だとおもうんです。川柳においては、観察する視覚主体が基本的には特権化されることになると思うんですが、この語り手の場合、...
【感想】絶え間なくうごくマスクの奥に口ほんたうにいい一生だつた 山川藍
- 2014/04/24
- 22:37
絶え間なくうごくマスクの奥に口ほんたうにいい一生だつた 山川藍『怪談短歌』で石川美南さんが大賞に選んだ山川藍(山川藍天)さんの短歌です。以前からずっと気になって考えていたうたで、でもこれどういうふうに読んだらいいんだろうとじぶんなりにずっとかんがえていたうたでもあります。ベケット演劇のような口だけが激しく動いてるなかで、その発話する器官としての身体も、発話主体さえも消えてしまっているような、し...
【感想】加藤治郎さんのゑゑゑゑ、荻原裕幸さんのぽぽぽぽ、仙波龍英さんのはははは、ニコニコ動画のええええ
- 2014/04/24
- 12:29

にぎやかに釜飯の鶏ゑゑゑゑゑゑゑゑゑひどい戦争だった 加藤治郎『ハレアカラ』(1994年)恋人と棲むよろこびもかなしみもぽぽぽぽぽぽとしか思はれず 荻原裕幸『あるまじろん』(1992年)ひら仮名は凄じきかなはははははははははははは母死んだ 仙波龍英『路地裏の花屋』(1992年)視覚効果から言及されることの多い短歌でわたしもはじめてこれらの短歌をみたとき、とても衝撃をうけたんですが、〈視覚〉というこ...