【感想】視野を変えれば霊柩車もひとつの音楽 普川素床
- 2014/06/22
- 21:53
視野を変えれば霊柩車もひとつの音楽 普川素床【死を指揮する者】普川さんの川柳はいつもすごく独特なんですが、それは読み手が普川さんの川柳が示している句の定型にどう向き合うかを試されてしまう、といった点にあると思うんですよね。たとえば、うえの句もどういうふうに定型としてかんがえたらいいのかとても難しい句だとおもいます。で、わたしはこんなふうにかんがえてみました。しやをかえれば/れいきゅうしゃもひ/と...
【感想】親族の眼鏡を一つずつ毀す 山本忠次郎
- 2014/06/21
- 22:55
親族の眼鏡を一つずつ毀す 山本忠次郎【メガネ・パンチと、眼鏡の粉末】眼鏡の川柳や短歌や俳句ってたくさんあるんですが、そのなかでも少し異色な壊す眼鏡の句です。ポイントは、ただの眼鏡じゃなくて、「親族の眼鏡」という係累のある眼鏡である点なんじゃないかなとおもうんです。この「親族の」というのは実に微妙な関係で、「私の」眼鏡や「家族の」眼鏡じゃないので、眼鏡としても距離感があるわけです。視力もぜんぜんわ...
【感想】もうすこし私を待ってみるスタバ 八上桐子
- 2014/06/20
- 01:46
もうすこし私を待ってみるスタバ 八上桐子【ゴドーを待ちながら@スタバ】ひとつ前の記事でも書いたことなんですが、川柳っていうのは目の前の対象物をうたうよりも、むしろ語る〈この・わたし〉をうたうもの。もっといえば、語り手がつきくずされてしまうその瞬間をうたうものではないか、というふうにおもっています。この八上さんのスタバの句は、まさに「私」が外部にある句です。語り手としての〈私〉は「スタバ」にいてこ...
【感想】はやくにんげんになりたい川柳-人になる手順と呪文-
- 2014/06/19
- 13:03
人になる手順が書いてある絵本 ひとり静人になる呪文が裏に書いてある 月波与生利用価値無くなってから人になる 三浦蒼鬼一枚の皮をまとって人になる ひとは【はやくにんげんになりたい!】月波さんの「人になる呪文が裏に書いてある」が気になっていてずっと覚えていたんですが、それからいろんな句をみているうちに、川柳において「人」は、人「デアル」ものではなくて、人「ニナル」ものなんじゃないかと思い始めま...
【感想】ひとり静『句集 海の鳥・空の魚Ⅱ』-ジャンプするたびにきらきらとする-
- 2014/06/17
- 14:24

ジャンプしてちょっと揺らしてみる真昼 ひとり静【ジャンプする語り手の世界の愛し方】ひとり静さんの第2句集なんですが、第1句集との差異をあえてあげてみるならば、わたしは第2句集になって語り手が世界に働きかけることが多くなってきている、というところにあるんじゃないかと思うんですね。つまり、世界そのものの〈ねじれ〉の力学を発見していたのが第一句集であるならば、語り手自身の世界における存在の力学のありか...
【感想】お別れに光の缶詰を開ける 松岡瑞枝
- 2014/06/17
- 02:15
お別れに光の缶詰を開ける 松岡瑞枝【さようなら、そして定型を大切に】ブログ記事100本目は、わたしももしお別れがくるときは光の缶詰をあけたいなということでこのふしめとなるような句の感想文をかいてみたいとおもいます。ふしめふしめでこの句のことをよくかんがえているんですが、とりあえず基本に立ち返って定型にわけてみます。おわかれに/ひかりのかんづ/めをあけるこうしてみるとよくわかるんですが、定型によって...
【感想】「最近は眼鏡にしてる」さうなんだ。最近ていつ? 最近会はない 千坂麻緒
- 2014/06/17
- 01:46
「最近は眼鏡にしてる」さうなんだ。最近ていつ? 最近会はない 千坂麻緒【眼鏡の理/眼鏡の檻】この短歌のおもしろいところって、結句が「」(かぎかっこ)の意味を書き換えちゃうところにあるとおもうんですよ。いつも思うんですが、短歌も川柳も基本的にはループしながら、初句の意味を少しずつ書き換えていくとおもうんですね。小説だってそうだとおもうんですが、もっと効果的に、てばやく、電光石火でループの意味生成を...
【短歌】青空の…(日経新聞・日経歌壇2014/6/15・穂村弘 選)
- 2014/06/16
- 22:01

青空の下の乱歩の広告が「果然断然俄然凄然」 柳本々々 (日経新聞・日経歌壇2014/6/15・穂村弘 選)【週末になったら、パノラマ島へ行こうよ】〈写生〉歌である。ある日、古書店のまえを暑いさなかにふらふらと、江戸川乱歩の「蟲」の柾木愛造のさいごのように這うすんぜんであるいていたのだが、とつぜん古書店の乱歩の広告が眼にとびこんできた。あつい・乱歩・広告。ああそのままでうたになる。めまい。それですぐにうた...
【感想】ひとり静『句集 海の鳥・空の魚』-ひとりからふたりへ、ふたりからnりへ-
- 2014/06/16
- 16:26

海の鳥空の魚とわたくしと ひとり静【主役になれぬパセリの青さの革命】句集タイトルはひとり静さんの上の句からとられています。この句にあらわれているように、ひとり静さんの川柳におけるひとつのモチーフとして、〈ねじれ〉としての〈共存〉があるように思うんですね。「海の鳥」「空の魚」といった〈ねじれ〉は決して否定的にあつかわれるべきものではなく、下五の「わたくしと」にあらわれているようにそれは「わたくし」...
【感想】好きでしょ、蛇口。だって飛びでているとこが三つもあるし、光っているわ 陣崎草子
- 2014/06/16
- 00:38

好きでしょ、蛇口。だって飛びでているとこが三つもあるし、光っているわ 陣崎草子【ジャクソン・ポロックと、蛇口】とても気になる歌だとおもうんですが、この語り手が好きなものを語りつつも、どういった価値観を大事にしているかに着目してこの歌を読んでみたいとおもいます。そのためには、語り手が〈なに〉が好きか、よりもむしろ、〈どうして〉好きか、に注目してみるといいんじゃないかとおもうんですね。ですから、語り...