【感想】ほとんどが降りてしまった汽車に乗る 笹田かなえ
- 2014/06/30
- 03:26
ほとんどが降りてしまった汽車に乗る 笹田かなえ【がらがらな、重み】この笹田さんの句のおもしろさは、修辞の過剰と、しかし意味内容としての空白感にあるようにおもうんです。この句をみてみると、(ほとんどが降りてしまった)汽車に乗ると、上5中7すべてが「汽車」の修辞になっています。つまりそれだけこの「汽車」は句のなかでたくさんの修辞を積載しています。ところがこの修辞の意味内容に注目してみると、「ほとんど...
【感想】猫をめぐる短歌/俳句/川柳-定型からあふれるにゃあにゃあ-
- 2014/06/28
- 22:16

〈フォーマ(無害な非真実)〉を生きるよすべとしなさい。それはあなたを、勇敢で、親切で、健康で、幸福な人間にする。 ヴォネガット『猫のゆりかご』 「猫は二次元に対抗できる唯一の三次元だよね」。この多種多様な世界内存在にあって、唯一「萌え」の感情を喚起しうる三次元の存在が猫であるということ。これは猫がなぜ「ぬこ」と呼ばれるのかという問題意識とも共通する、哲学的課題とみなされるべきである。...
【感想】本屋をめぐる短歌/川柳-ポケットにもつバベル本店-
- 2014/06/28
- 01:48
本屋の書架から当てずっぽうに詩集を抜き出して、ぱらぱらと頁をめくる。また元に戻すか、それともレジへ持って行くか。その瞬間、眼と活字の間に生じる化学反応のような感覚を、ぼくは割合と信じている。世界のほうぼうで、そんな風にして何人かの詩人たちと出会ってきた。 四元康祐『四元康祐詩集』わたしの好きな句のひとつに矢島玖美子さんの次の句があります。紀伊國屋書店本店前の鬱 矢島玖美子この書店=...
【感想】頭蓋骨の短歌/俳句/川柳-頭蓋骨のきれいなお姉さんは好きですか-
- 2014/06/27
- 01:20
「知り合いにね、頭蓋骨好きのひとがいまして」などと話しはじめるひともいる。「街で好きな頭蓋骨の異性に会うと、つい茶などに誘ってしまうのだそうです」「誘われますかね、そういうので」「ええ、これが案外うまく誘えるんだそうです」「誘ってどうするのですか」 川上弘美「頭蓋骨、桜」『あるようなないような』八上桐子さんの川柳にこんな句があります。紫陽花へ向く六月の頭蓋骨 八上桐子この句のおもしろさは...
【感想】ふと思い出した生きぬいてきた訳を 北野岸柳
- 2014/06/26
- 17:00
ふと思い出した生きぬいてきた訳を 北野岸柳【定型と、生の技法】定型っていうのは、575としての形態として働くだけでなく、内面の抑圧意識としても実は働いていることがあるのかな、とかんがえていることがあって、そんなところからすこし上の岸柳さんの句をみてみたいと思います。「ふと」っていうのは、これといった理由もなくとつぜんたちあがる意識をあらわす副詞です。語り手には「生きぬいてきた訳」がとつぜんみずか...
【感想】少年を救うのは変か)(シャツに似た幽霊が跳ぶ乾燥機あり 加藤治郎
- 2014/06/24
- 17:24
少年を救うのは変か)(シャツに似た幽霊が跳ぶ乾燥機あり 加藤治郎【バベルの括弧】この短歌をはじめてみたときにすごくびっくりしました。こんな記号の使い方があるのかと。ちなみに加藤さんから括弧を使った短歌を選んでいただいたことがあるのですが、一般的な括弧の使用例としてあげてみたいとおもいます。「ねえきみがめがねなんだよ」男、云う。(あいかわらず、馬鹿)女、云わず。 柳本々々 (毎日...
【感想】名詞オンリーの短歌/俳句/川柳-刑務所・二人・朝貌・銀河・自涜・鬱-
- 2014/06/24
- 15:15
電信隊浄水池女子大学刑務所射撃場塹壕赤羽の鉄橋隅田川品川湾 斎藤茂吉錐・蠍・旱・雁・掏摸・檻・囮・森・橇・二人・鎖・百合・塵 塚本邦雄萩(はぎ)の花 尾花(をばな) 葛花(くずばな) 瞿麦(なでしこ)の花 女郎花(をみなへし) また 藤袴(ふぢばかま) 朝貌(あさがほ)の花 山上憶良銀座銀河銀河銀座東京廃墟 三橋敏雄法医学・桜・暗黒・父・自涜 寺山修司【ワーナー・マイカル・シネマズにゆく山上憶良】うえ...
【感想】歌、卵、ル、虹、凩、好きな字を拾ひ書きして世界が欠ける 荻原裕幸
- 2014/06/24
- 06:31
歌、卵、ル、虹、凩、好きな字を拾ひ書きして世界が欠ける 荻原裕幸【欠けた世界がぱんぱんに膨らんでいく】とても好きな歌なのですが、じぶんの「好き」を言語化してみるために、あえて誤読をおそれずに冒険的深読みをしてみたいとおもいます。「好きな字を拾ひ書き」したらどうして語り手にとって「世界が欠け」てしまったんだろう、というのがかんがえてみたいテーマです。これは、あえて冒険的に読んでみようとおもうんです...
【短歌】全力で…(毎日新聞・毎日歌壇2014/6/23 加藤治郎 選)
- 2014/06/23
- 20:40

全力で無力なんだよ(気づいたら手押し車で運ばれている) 柳本々々 (毎日新聞・毎日歌壇2014/6/23 加藤治郎 選)ときどき、保育園の園児たちがおおきな手押し車にたくさんのせられて、わたしの横をすれちがって、ゆく。かれらは、意思も目的もわからないままに、運ばれてゆく。もしかしたら、世界のほうが泳いでいる、とかんじているのかもしれない。いいな、っておもう。わたしも乗せてくれよ、と。あるよく晴れた朝...
【感想】✾✿❀❁花束の短歌/川柳を恣意的にまとめてみました✾✿❀❁
- 2014/06/23
- 18:27
花束の拍手のような午前二時 柳本々々以前から花束と短詩型文学の関係について興味があったんですが、ひとり静さんの次の句をみたときに一応おおまかにまとめてみようと思い立ち、この文章を書いてみることにしました。花束は優しい手錠かも知れぬ ひとり静この句では、花束という日常における祝福の枠組みとはすこしうってかわって、花束が優しい拘束具として描かれています。花束が拘束具になりうるのは、日常を逸脱したよ...