【感想】 愛して た この駅のコージーコーナー 佐藤文香
- 2014/07/31
- 01:50

愛して た この駅のコージーコーナー 佐藤文香「あたらしい音楽を教えて」『俳句雑誌クプラス第1号』【アイと、アキと】短詩型における〈アキ〉についてときどきかんがえていて、上の佐藤さんの句は、二字アキというけっこう珍しい句なのではないかとおもいます(句の頭も一字アキです)。ちなみに、わたしがすぐに思いつく二字アキの歌というと永井さんの次のうたが思いつきます。月を見つけて月いいよねと君が言う ...
すやすやするあとがき
- 2014/07/31
- 01:26
串田和美さんが、どんなにこわいひとでも、どんなに暴力的なひとでも、どんなに危険なひとでも、ちゃんとねむってるときがあるんだとおもうとすごくふしぎなきもちになる、といってて、たしかにどんなにかなしみにくれているひとでも、どんなに嫉妬にくるってるひとでも、どんなに怒っているひとでも、どんなに暴れているひとでも、なにもしなくても、いずれは、ねむるのだ。すやすや、と。たとえば、どんなに愛し合っていても、お...
【感想】おやすみと言われた先はひとりです 久保田紺
- 2014/07/30
- 19:52
おやすみと言われた先はひとりです 久保田紺【おやすみなさいから、始める/始まる。】久保田さんの句でわたしがとくに好きな句をあげてみたんですが、久保田さんの川柳のテーマのひとつに、〈あいさつの機能不全〉というテーマがあるのではないか、というのがわたしのかんがえです。〈挨拶〉っていうのは一般的には、日常を円滑に機能し続け・かつ・ひととひとを齟齬なく共有の枠組みでなんらの意味作用を行わずに結びつけると...
【感想】百枚のまぶたつぎつぎ閉じられてもう耳だけの町となりたり 久野はすみ
- 2014/07/30
- 13:05
百枚のまぶたつぎつぎ閉じられてもう耳だけの町となりたり 久野はすみ【耳だけの町と、圧倒的で特権的な〈孤独〉】すごくふしぎな歌なんですが、この歌でまずひとつ注意したいのは「百枚」ということばです。語り手はどういうわけか閉じられるまぶたが「百枚」とわかっている。ここにわたしは注意してみたいです。約百枚ではなく、たくさんのでもなく、「百枚」きっかりとわかっている。この正確な百枚という数字にわたしはこの...
【感想】お店から盗って来た本くれる彼 竹井紫乙
- 2014/07/30
- 12:32
お店から盗って来た本くれる彼 竹井紫乙【世界一短い世界征服】さいきん短詩型文学と〈悪〉についてかんがえていて、で、たとえば川柳のなかで〈悪〉はどんなふうにあらわれるんだろうとかんがえてみたときに、ひとつの〈悪〉の例示となるのが竹井紫乙さんのこの句なのではないかとおもうんですね。たとえばこの句のなかにおける〈悪〉とは、「彼」が「お店」から本を「盗」ってきてしまうことです。いわゆる、〈万引き〉です。...
【感想】数ページの哲学あした来るソファー 西原天気
- 2014/07/30
- 00:54
数ページの哲学あした来るソファー 西原天気【招かれざる客でも、帰る。招いたもののソファーは、帰らない】さいきんこの句について考えていて、わたしがはじめてこの句をみたときの感想は、ぱっとみた瞬間に、無意識に、あ、おもしろいなあ、とおもったんですが、その無意識の所在をじぶんなりにかんがえてみたいとおもいます。まずおもったのは、この句がもっている〈シーン〉。「あした来るソファー」としてこの句の〈シーン...
【感想】煮えたぎる鍋を見すえて だいじょうぶ これは永遠でないほうの火 井上法子
- 2014/07/29
- 00:29
煮えたぎる鍋を見すえて だいじょうぶ これは永遠でないほうの火 井上法子【魔法をつかう語り手】今回かんがえてみたいのは、〈問いかける語り手〉です。別のいいかたをするなら魔法を使う語り手についてです。永田和宏さんが短歌における上の句と下の句の構造を〈問い〉と〈答え〉の関係になぞらえていたんですが、川柳や俳句とは違う短歌の特徴のひとつとして、その〈七七〉ぶんの延長された長さによって語り手が自己言及的...
【短歌】ーブしては…(毎日新聞・毎日歌壇2014年7月28日、加藤治郎 選)
- 2014/07/29
- 00:25
ーブしてはまぐろ赤身が回りつつきみのかたわらスルーでまたカ (毎日新聞・毎日歌壇2014年7月29日、加藤治郎 選)【(近所にある)メビウスの環のなかで】回転寿司にいったときの、皿をとるタイミングが、いまだに、よく、わからない。くる。むこうから、きているのが、わかる。みえる。じきに、くる。そこまで、きている。きている。こころがまえする。てが、態勢に、はいる。くる。きた。いや、どうしよう。なんかほんと...
【感想】病院へ急ぐ虹がついてくる 本間鴨芹
- 2014/07/28
- 01:40
病院へ急ぐ虹がついてくる 本間鴨芹【悲しみのなかでひらいた袋とじ】松尾スズキさんがこんなことをいっていたことがあって、たとえば、自分にとってとても大切なひとが死にそうだとする。だから急いでそのひとのところに行かなければならないのだけれど、でもそうした緊迫した状態でも、とちゅうでたまたま手にした週刊誌の袋とじはいちおう破って確認してしまったりする。そうしたところに〈リアリティ〉ってじつはあるんじゃ...
【あとがき】松尾スズキ『ファンキー!─宇宙は見える所までしかない』のあとがき
- 2014/07/28
- 01:30
せめてなぜ私たちは年柄年中がんばらなければならないのか、その辺の理由を明白にしてほしいのです。書類にして提出してほしいのです。手元においておきたければ、コピーしてファックスしてほしいのです。がんばれなかったとき、私はやっぱり謝らなければいけないのでしょうか。報告くらいはしなきゃいけないのでしょうか。全員には無理ですからこうしましょう。毎年クリスマスの夜空に打ち上げ花火が上がったら、「ああ松尾は今年...