【感想】一度もまだ使いしことなき耳掻きの白きほよほよ 海外派兵 佐佐木幸綱
- 2014/09/30
- 07:40
一度もまだ使いしことなき耳掻きの白きほよほよ 海外派兵 佐佐木幸綱【ほよほよと銃】幸綱さんのこの歌は、結句の「海外派兵」が強く歌の様相を決定づけているとおもうんです。海外派兵というのは、いいかえれば、海外でひとを殺すことがありうる可能性であり、ふだん銃を使うことが習性化されていないナショナリティを越えて銃を使わなければいけない局面にたちあうかもしれない潜在性を示しています。耳掻きの白きほよほよは...
【感想】きみが生まれた町の隣の駅の不動産屋の看板の裏に愛のしるしを書いておいた。見てくれ フラワーしげる
- 2014/09/30
- 06:22
きみが生まれた町の隣の駅の不動産屋の看板の裏に愛のしるしを書いておいた。見てくれ フラワーしげる【愛のしるしはシンプルに】フラワーさんのこの短歌、以前から不思議だなあとおもっていて、ずっと考えていたんです。で、ひとつ思ったのは、語り手の愛への情熱が空転しているところがこの短歌のおもしろさではないかとおもったのです。「どこそこに愛のしるしを書いておいた。見てくれ」と語り手はいうんですが、いわれたほ...
【感想】小坂井大輔「小林」『かばん』2014年5月号
- 2014/09/29
- 18:44
映画とか好きな人とか居ませんか?小林らしいと僕は思った 小坂井大輔とりあえずお前がいないアパートの階段に座る座った座ったよ 同【小林が小林を超える】『かばん』2014年5月号から、小坂井さんの「小林」という連作です。連作の最初と最後の歌をあげてみました。「小林」をめぐって、さまざまなパースペクティブから「小林」をとらえていきます。読み手は「小林」に関する情報と経験値を重ねつつも、最終的に語り手とい...
【感想】歌もまたテクストである? 昨日逝きにし歌主を措きて歌はある? ない? 佐佐木幸綱
- 2014/09/29
- 12:58

歌もまたテクストである? 昨日逝きにし歌主を措きて歌はある? ない? 佐佐木幸綱【うふふふふ或いはパフェの行方】佐佐木さんのこの歌をあえていいかえてみると、〈作者と歌の関係をどのように考えればいいのか〉、というふうにいえるようにおもう。わたしがときどき気になるのは、〈作中主体〉をみている〈主体〉がいるような歌があることだ。〈作中主体〉から距離を置き、〈作中主体〉をみつめ、〈作中主体〉から変化さえ...
【感想】さようなら さよなら さらば そうならば そうしなければならないならば 枡野浩一
- 2014/09/29
- 07:03
さようなら さよなら さらば そうならば そうしなければならないならば 枡野浩一【短歌が短歌に告げたさようなら】〈さようなら〉とは、その一語そのものがプロセスなのではないかと宮本佳世乃さんの句を読みながら感じたことだったんですが、この枡野さんの歌も〈さよならの冒険〉または〈さよならの発掘〉としてのプロセスとして読めるのではないかとおもうんです。まず語り手は、「さようなら」と発話しています。でも、...
【感想】さやうならそしてさよなら葛の花 宮本佳世乃
- 2014/09/29
- 06:10

さやうならそしてさよなら葛の花 宮本佳世乃【別れ際にする微分積分】山田露結さんと宮本佳世乃さんのネットプリント「彼方からの手紙 vol.8」(2014/9/28)からの宮本さんの一句です。たまたまきのう、小池純代さんの「さやうなら煙のやうに日のやうに眠りにおちるやうに消えるよ」という歌は、読み手がこのうたを読み通すことによって〈やう〉のプロになる歌なんだという感想を書いたんですが、この宮本さんの句も〈やう〉の明...
【感想】さやうなら煙のやうに日のやうに眠りにおちるやうに消えるよ 小池純代
- 2014/09/28
- 13:19
さやうなら煙のやうに日のやうに眠りにおちるやうに消えるよ 小池純代【即席のプロフェッショナルに私はなれる】小池純代さんの短歌にはいつも不思議なことばの風合いがあるんですが、その不思議さをうむ仕掛けにひとつは〈歴史的仮名遣い〉が効果的にたちあらわれてくることがあるのではないかと思うんです。歴史的仮名遣いを〈いま〉眼にするときに感受するのは、ことばの〈ブレ〉、ことばが意味に還元されない質感ではないか...
【あとがき】小池純代歌集『雅族』のあとがき
- 2014/09/28
- 12:49
いづれも次々に過ぎてゆくなにものかを呼びとめるために付けた、三十一音から成る名前のやうなものである。しかし、呼ばれて立ちどまつたものは今のところゐない。 小池純代『雅族』...
【短歌・連作】「http://utau-grim-douwa.com」『かばん』2014年5月号
- 2014/09/28
- 11:11

「重ねれば重ねるほどに偽りは多声化される」by ブレーメン青ひげのように図書館徘徊し地下二階で遭う好きなひt(ry《クロモンコガタキガエル》と名乗ってるカエルの王をすぐにGoogle(ググ)った百年とちょっと眠って返信をLINEで返す「日本語でおk」板チョコにふとんをしいてヘンゼルの着信を待つ→→→→ゼリーふるえる→→『毒(も)ってみた』タグをつけてるお妃の動画のなかがコメントの森満たされて沈むオオカミ羨んで思春期に棲...
【短歌・連作】「きかいじかけのくまんばち」『かばん』2013年10月号
- 2014/09/28
- 10:15

くさはらのきかいじかけのくまんばちきみと暮らして3年になる吸血鬼最新式の冷蔵庫きみの涙は花でできてる手付かずの遊園地から笑い声 ああおかえりね うんさようならくたくたとまるごしの愛感じてる高速道路を森で作るみっしりと坂をバッグにつめこんでピクニックからかえらない冬そういえば未来からきたあの猫にときの花束わたし損ねて理不尽なメリーゴーラウンドにのり帰り道 斧携えて 花強力なつまさきからずしんとくる魔...