【感想】おはじきと平等院をとりかえる 守田啓子
- 2014/09/23
- 07:12
おはじきと平等院をとりかえる 守田啓子【イントゥ・ザ・ストーム@川柳】17音のなかで〈錯誤〉が嵐のように吹き荒れているのがこの句のおもしろさではないかと思うんです。ダイナミックな錯誤。十円硬貨には平等院鳳凰堂が刻まれていますが、ここで取り合わせられているのは「おはじき」です。たしかに「おはじき」と「10円玉」は形状において、質量において、似ています。でも決定的に違うのは、貨幣であるかいなか、です。10円...
【感想】わたしは別におしゃれではなく写メールで地元を撮ったりして暮らしてる 永井祐
- 2014/09/23
- 06:46
わたしは別におしゃれではなく写メールで地元を撮ったりして暮らしてる 永井祐【補助輪から主体を起ちあげる】永井祐さんの短歌はどこかでいつもある〈過剰さ〉を抱えているように思うんですが、それっていうのは永井さんの短歌にみられる細かな言辞が裏打ちしていくかたちでそうした過剰としての巨大な体系と向かい合うかたちになっているのではないかとおもったりするんです。たとえばうえの永井さんではよく引用される歌なん...
【短歌】さよならを…(毎日新聞・毎日歌壇 加藤治郎 選2014年9月22日)
- 2014/09/22
- 08:33

さよならをぴるぴる話すきみといた観覧車のある動物園で 柳本々々 (毎日新聞・毎日歌壇 加藤治郎 選2014年9月22日)【きょうからはじめる最終回】さいきん自分でもわかってきたことなんですが、どうも自分のくみたてることばは〈さよなら〉が多いな、と。動物か、食べ物か、さよなら、だな、と。たださいきんもうひとつ思っていたことがあって、それは、短歌というのは、〈さよなら〉をめぐるひとつの作法なのではないか、...
【感想】いのうえの気配なくなり猫の恋 岡村知昭
- 2014/09/21
- 09:30

いのうえの気配なくなり猫の恋 岡村知昭【知りすぎていた男(いのうえ)】 「いのうえ」が何なのかはさておき、「いのうえ」というものがあるとする。「いのうえ」が呼び寄せる概念の総体を「いのうえ性」と呼ぶ。そこがスタートです。 西原天気「【真説温泉あんま芸者】それを「いのうえ」と呼ぶことにする 」『週刊俳句2014年9月21日』 固有名の喪失は、アリスの全冒険を通して反復される冒険である。というのは、...
あとがきからダイナミックな音信がある(ゆでる)。
- 2014/09/21
- 05:58
抱かれてきんのこな降る街九月 なかはられいこ『川柳作品集 散華詩集』なかはられいこさんの「きらきらとねこと夕陽と声である」『そらとぶうさぎ』にて、手紙からダイナミックを取り出して 柳本々々きらきらを二分茹でろと指示される 〃の2句を取り上げていただきました。なかはらさん、ありがとうございました!〈手紙〉と〈きらきら〉をめぐる了解しがたさ、つかまえにくさ、把持しがたさというのはいつも興味深い主...
【お知らせ】「死角を待ちながら 又吉直樹(ピース)「人をポエムって言うたお前がポエムや」;『ユリイカ』(2011年10月号)特集《現代俳句の新しい波》を読む」『週刊俳句 Haiku Weekly第387号』
- 2014/09/21
- 04:50
『週刊俳句 Haiku Weekly第387号 』にて「又吉直樹(ピース)「人をポエムって言うたお前がポエムや」を読む 」という文章を載せていただきました。『週刊俳句』編集部にお礼申し上げます。ありがとうございました!お時間のあるときにお読みくだされば、さいわいです。又吉直樹さんでひとつとても印象に残っていることがあって、又吉さんが番組でとつぜん一発ギャグをやれっていわれてやったのが、ぽーんぽーんってその場でとびは...
【短歌・連作】遺伝子組み換えでない「短歌研究詠草・佳作 佐佐木幸綱 選」『短歌研究』2014年10月号
- 2014/09/20
- 07:27

目薬をさしてるきみは天をみてしらない顔に・(ピリオド)を打つ君の手も髪もことばもやさしさもたぶん(遺伝子組み換えでない)好きということばのはしご外すときひらく手紙の罫線たわむ 柳本々々「短歌研究詠草・佳作 佐佐木幸綱 選」『短歌研究』2014年10月号...
【お知らせ】「『渡辺のわたし』をめぐる斉藤斎藤の〈わたし〉」「第三十二回 現代短歌評論賞」『短歌研究』2014年10月号
- 2014/09/20
- 00:47

短歌研究主催の第三十二回現代短歌評論賞の候補作に「『渡辺のわたし』をめぐる斉藤斎藤の〈わたし〉」を選んでいただきました。ありがとうございました!各選考委員の方からていねいな選評をいただいたのですが、ここではふだん書いている感想文もふりかえる意味も込めて、いただいた批判点を引用させていただこうと思います。【佐佐木幸綱氏から】一言を苦言で言えば、評論の文章としてはよくない。文末が「……ではないか」、「……...
【感想】セーターを脱げば眼鏡の引つ掛かる 小野あらた
- 2014/09/20
- 00:10
セーターを脱げば眼鏡の引つ掛かる 小野あらた古池や蛙飛び込む水の音 松尾芭蕉【バイクにまたがるハムレット】あえて冒険的に読んでみると、この小野あらたさんの句は、〈仕組み〉としては、松尾芭蕉の「古池や蛙飛び込む水の音」にも近かったりするんじゃないかと思うんです。「セーターを脱げば眼鏡の引つ掛かる」の句には、ピタゴラスイッチ的なおもしろさがありますが、大事なのは、「セーター」「眼鏡」といったまった...
チョコレートまみれのあとがき。
- 2014/09/18
- 12:58
石畑由紀子さんのブログ『 裏デッサン。 』の「鑑賞『短歌研究新人賞』(2014年・第57回) 佳作」にて拙歌を取り上げていただきました。ありがとうございました!ポッキーの持つ部分だけ食べている屈折してる君のやさしさ (柳本々々)そして指チョコレートまみれ はう。。 (しかも本人は屈折じゃないのかも 水に刺した棒の棒は曲がってないみたいに) お名前はなんと読むのかしら もともとさん? (因に今は『どう ど...
【感想】ショーウィンドウのマネキン家族秋高し 山田露結
- 2014/09/18
- 03:00
ショーウィンドウのマネキン家族秋高し 山田露結【ハイク・ロケット、ことばの空へ】露結さんの句は、『ホームスウィートホーム』という句集のタイトルのように〈家族〉の句がしばしば詠まれていると思うんですが、なかでも〈家族〉というものに対して〈視線〉をとおして語り手がむきあっている、というのが特徴的なのではないかとおもうんです。「ショーウィンドウのマネキン家族」というのは、〈擬似家族〉であり、その意味に...
恋するあとがき。
- 2014/09/18
- 02:56
以前からずっと〈類想句〉ということについてかんがえていることがあって、類想句の根っこには自分の〈好きの所在〉がどういうふうに構造化されていたのかという問題があるのかなあとおもったりもする。この句や歌をじぶんがだいすきだなあとおもうときに、その〈だいすき〉とはいったい、なんなのだろうか。こういう句や歌が〈好き〉というときに、好きなのはその〈記号性〉もあるかもしれないけれど、実は無意識で〈構造〉を好き...
【感想】二十世紀を路上に撒きぬ野口る理 関悦史
- 2014/09/18
- 02:30
二十世紀を路上に撒きぬ野口る理 関悦史【季語をまきちらす】クプラスのコーナーもそうだったのだが、野口る理さんと関悦史さんのそのつどのコラボを楽しくみている。私は、関悦史さんは〈引用〉の力学がとても巧みなひとだと思っている。だから、同時代文化にちらばっているメインカルチャー/サブカルチャーのなかの無時間的記号を俳句に〈引用〉することによって〈時間性〉を付与していくのが、関さんにおける〈季語〉なので...
【感想】ひまわりや腕にギブスがあって邪魔 越智友亮
- 2014/09/12
- 05:59
ひまわりや腕にギブスがあって邪魔 越智友亮【みないことを、みること】『新撰21』などの〈現代俳句〉には、〈なにか〉雰囲気として通底しているものがあるようにおもっていて、それは、〈見ることによる見ることの疎外〉=〈見るということのノイズ〉性なのではないかと思うんです。いかに直視しない空間をつくりだすか。たとえば越智さんの上の句なんですが、「ひまわりや」でひまわりが景色にひろがるときに、即座に視点が「...
【短歌・連作】「文学で、いこう。」『かばん』2014年9月号
- 2014/09/11
- 22:02

【詞書】そういうきれいな言葉は、自分じゃぜったいに食べないフルーツゼリーみたいなものなんだな チェーホフ『かもめ』桐島が部活をやめるとの声にふりむくひとを読書家とする『罪と罰』・ラジオ体操・夏休み 午前七時のラスコリニコフ恋文が四部構成に鳴っている、カラマーゾフは君だったのかチェーホフの『桜の園』の深奥で微震している機械に触れる眼鏡史をひもといている 瀧廉太郎、ハリー・ポッターもぜんぶここにいる美...
〈ジロー・吠えろ荻原!・だてめがねの穂村弘〉の真空で書くあとがき★★★
- 2014/09/09
- 23:37
「ジロー、チェンジ、キカイダー」と命じても「ううう」と呻く加藤治郎は 穂村弘培養の世代が出会う闘争は★★★★★★★吠えろ荻原! 加藤治郎だてめがねの穂村弘は虹だから象のうんこは雪のメタファー? 荻原裕幸短歌が短歌にとる距離感というものを最近かんがえていて、で、この三首は三首がめいめいに短歌としての〈距離感〉をうちだしているんではないかと思うんです。たとえば、穂村さんの短歌の場合、〈加藤治郎〉という...
【感想】イチャイチャ短歌の行方-いちゃいちゃとは、なにか-
- 2014/09/08
- 23:54
世界には、イチャイチャ短歌なるものがある。これは、短歌を〈いいわるい〉や〈技法レトリック〉関係なく、いちゃいちゃしてるかどうかで判断するカテゴリーである。たとえば、次のような短歌がいちゃいちゃ短歌の代表になるのではないかとおもう。「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ 俵万智どこが/なにが、いちゃいちゃしているのか。わたしはここで〈いちゃいちゃ〉をあえてきちんと言語化してみ...
【川柳・連作】「あ、虹です」『おかじょうき』2014年8月号
- 2014/09/07
- 15:28

歯がゆくて明るい絵の具売り歩くどもる服どもらない口どもる靴家族-わたし=ラララララ矢矢矢矢矢壁わたし壁矢矢穴矢七色の矢が放たれて あ、虹です 柳本々々「雑詠」『おかじょうき』2014年8月号 *屋上の模型をひろう地下鉄で 柳本々々 (題『屋』佳作 守田啓子 選)笑顔笑顔笑顔笑顔(税込みで) 柳本々々 (題『安い』五客 奈良一艘 選)闇の中左の脚が離れてく 柳本々々 (自由詠・佳作 むさし ...
【川柳・連作】「きらきらをゆでる」『おかじょうき』2014年9月号
- 2014/09/07
- 14:46

引き算で通じあえてた春が過ぎ摩擦音対破裂音対わたし口笛が吹けたひとから夏休み手紙からダイナミックを取り出して水中に意味だけ灯る遊園地 柳本々々『おかじょうき』2014年9月号 *設問5、ゆでるか書くか選びなさい。 柳本々々きらきらを2分ゆでろと指示される 〃 (題『茹でる』佳作・地位 きさらぎ彼句吾 選)夕立が部分部分で破れてる 柳本々々 (自由詠・佳作 むさし 選) *ひとり静さんから...
【短歌】日経新聞・日経歌壇2014年9月7日 穂村弘 選)
- 2014/09/07
- 13:05
わたしは、自分がやばいような気がする、全体的にあいまいもことしている、というかなんだかみえるものすべてが白い、といって、だんだんにこんらんしはじめる。意識がかすれてゆくんじゃなくて、どうも、あなたがかすれてゆく。なんというか、ゆびが、とか、髪が、とかじゃない。あなたの、全的な、統一されたイメージが、そのような形象としてのあなたがどんどんかすれてゆく。まるでむりやり未来の時間にわたしひとりだけ帰らさ...