【短歌】かなしみと…「公募短歌館第452回・今野寿美 選・秀逸」『角川短歌』2014/12
- 2014/11/23
- 19:54

かなしみときらきらひかるポンジュースその関数を公式化する 柳本々々 (「公募短歌館第452回・今野寿美 選・秀逸」『角川短歌』2014/12) *夕暮れをほたほたと花の散る庭に硯の底の墨ながしたり 今野寿美...
【感想】「相談があります。どこにいますか?」とメールが届く五時五十五分 千葉聡
- 2014/11/21
- 12:00
「相談があります。どこにいますか?」とメールが届く五時五十五分 千葉聡【「相談があります。(作者は)どこにいますか?」】短歌・俳句・川柳を読む際に〈作者情報〉をどうしたらいいのかということをときどき考えていて、とくに上の句と下の句で〈構造〉ができあがってしまう短歌の場合は、〈作者情報〉によって短歌自体の位相ががらっと変わってしまったりします。たとえば、その例がうえの千葉さんの短歌になります。この...
【感想】ストールが丸めて置かれ手袋がひしやげて置かれわたしがゐない 田中槐
- 2014/11/21
- 06:30
ストールが丸めて置かれ手袋がひしやげて置かれわたしがゐない 田中槐【〈わたし探し〉から〈わたし遊び〉にある裂け目】短歌は、〈衣服〉=〈モード〉=〈ファッション〉をどうとらえてきたのかということに興味があるんですが、たとえばこの田中さんの歌では、むしろじぶんがふだん身につけている服飾=モードのほうに身体性がうつっていることのぶきみさと喪失感があるとおもうんです。この歌で注意してみたいのは、「ストー...
【感想】不細工な飛び方だったでも飛んだ ひとり静
- 2014/11/21
- 06:00
不細工な飛び方だったでも飛んだ ひとり静【飛ぶための翼は持っていなかったけれどそれでも飛んだ】第七回「ごんぎつねの郷」全国誌上川柳大会からの一句です(ひとり静さんも記事(「ごんぎつねの郷」)を書かれていて私の句も紹介していただきました。ありがとうございました!)。ときどき、定型の節目に注意しているんですが(五/七/五)、この/の部分をどう〈飛ばす〉かにひとつの定型詩の跳躍力があるようにおもうんで...
【短歌】ああ俺が……(「題「浮かれる」佳作・斉藤斎藤 選」『NHK短歌』2014年12月号)
- 2014/11/20
- 21:50
ああ俺が二センチばかり浮いているそんなに好きかきみがきみを俺 柳本々々 (「題「浮かれる」佳作・斉藤斎藤 選」『NHK短歌』2014年12月号)さいきん、よく浮いていることがあって。きがつくと、あれ、高いな、とおもって。いつもより、空がちかいな、と。そうしたら、いっしょに歩いてるひとから、あれ、浮いてるね、すこしだけど、っていわれて。ああそうか、浮いたかあ、とおもって。ちょっとしたラピュタじゃないですかわ...
【感想】考えれば十センチ以上の生き物を殺していない我のてのひら 吉川宏志
- 2014/11/20
- 06:00
考えれば十センチ以上の生き物を殺していない我のてのひら 吉川宏志【〈わが〉手から〈我の〉てのひらへ】この吉川さんの「てのひら」の歌を啄木の有名な歌に共振させながらすこし考えてみたいとおもいます。はたらけどはたらけど猶わが生活(くらし)樂にならざりぢつと手を見る 石川啄木もし〈短歌史〉のなかにおいて〈手〉の系譜があるとするならば、この啄木の〈手〉はある意味、非常に特権的な意味生成をもつ〈手...
川柳における人体の不思議展・あとがき。
- 2014/11/19
- 12:25
西原天気さんから、『ウラハイ』の「【柳誌拝読】『Senryu So』第6号/終刊号(2014年秋)」において、参加させていただいた『Senryu So』終刊号を紹介していただきました。西原さん、ありがとうございました!この記事において、西原さんが八上さんの句における身体モチーフを指摘されていて、それでちょっとまた考えはじめたことなのですが、以前から川柳における独特の身体性のようなものがとても気になっています。どうも川柳...
【感想】寺山修司と〈父〉の〈死体〉化をめぐる短歌
- 2014/11/19
- 06:00
父ひとり消せる分だけすりへりし消しゴムを持つ詩人の旅路父恋し月光の町過ぐるときものみな影となるオートバイ母と寝ててのひらで月かくしみる父亡きあとの初の月蝕かくれんぼの鬼のままにて死にたれば古着屋町に今日もくる父父に似し腹話術師の去りしあと街のかたちにたそがれも消ゆ父と寝て背中あわせに読みつづく地球空洞説の一節父と寝て目をあけている暗黒やたった一語の遊星さがし父といて父はるかなり春の夜のテレビに映る...