【感想】妻よおまえはなぜこんなにかわいんだろうね 橋本夢道
- 2015/01/30
- 23:33
妻よおまえはなぜこんなにかわいんだろうね 橋本夢道この場所では、いま、好むと好まざるとにかかわらず、人類はわれわれだけなのだ。 ベケット『ゴドーを待ちながら』【妻を待ちながら】ど、どうした、とおもうような句です。ここには、〈わたし〉と〈妻〉の完璧な対幻想しかありません。いや、そうじゃないですね。ここには、〈妻〉さえも、いない。ここにあるのは貫徹した〈わたし〉ひとりの肥大化した自己幻想しかあり...
【感想】川柳は、川柳に出逢う。-東海柳檀が、いま、おもしろい-
- 2015/01/30
- 21:08
ピーポーが聞こえる合唱の合間 丸山進説明のつかぬこたつが置いてある 小林英昭「も」が消えてやせないゴミとやせるゴミ 安藤なみ 頂点に立てばさみしいピラミッド 福沢義男追い越したくないので加減する歩幅 萩原信男窓の外は雨の匂いの鳥がとぶ 長谷川維乃理 【川柳 meets 川柳】丸山進さんがブログでいつも紹介されているのだが(「 「も」が消えてやせないゴミとやせるゴミ なみ」)、なかはられいこさんが...
【感想】目撃・気づき・おののき-嶋田さくらこ・岡野大嗣・虫武一俊-
- 2015/01/30
- 07:00
アスファルトの上に小さな生きものをばらまいて銀のトラックは過ぐ 嶋田さくらこ【事件は短歌で起きている】虫武一俊さんが自身のブログで指摘されていたんですが、さくらこさんの短歌の〈恋愛〉だけでなく、〈生〉へのまなざしがわたしもおもしろいなと感じました。たとえばうえの短歌なんですが、なぜ「トラック」ではなく、「銀のトラック」だったんでしょう。わたしがおもうのは、「銀のトラック」は「生きもの」ではないか...
【感想】別のかたちだけど生きてゐますから 小津夜景
- 2015/01/30
- 05:51
別のかたちだけど生きてゐますから 小津夜景【ねむれぬよるのために】ねむれないときに、夜景さんの句を読んでいるときが、ある。別のかたちだけど生きてゐますから去年、この句を、はじめて眼にしたときに、あ、じぶんそうなんだな、っておもったのである。真夜中ではあったけれど、ひとりではあったけれど、おなかがへってはいたけれど。別のかたちだけど生きてきたな、って。別のかたちだったけれど。でも、「から」って根拠...
【感想】妖精さんを、旅する-わたしの妖精ジャーニー-
- 2015/01/29
- 23:54

妖精は酢豚に似ている絶対似ている 石田柊馬妖精が書いた記事だと思います 竹井紫乙妖精になりたいならばなりなさい 久留島元洗濯できないポケットの妖精 小島百恵【ふわり妖精途中下車の旅】妖精をめぐる川柳というのがあるんです。妖精の句でいちばん有名なのがたぶん柊馬さんの句だとおもいます。妖精は酢豚に似ていると語り手がいっているんですが、「絶対似ている」と繰り返しいっているため、語りながらもみずか...
【感想】好きな助詞どんどん減って塩れもん 弘津秋の子
- 2015/01/29
- 01:31

好きな助詞どんどん減って塩れもん 弘津秋の子【じょ、助詞だー!】『川柳カード7号』から、秋の子さんの句です。こないだある方と話をしていたときに、その方が助詞がめちゃくちゃだいすきって話をされたんですよ。で、たしかに短詩をつくっていると、助詞にめちゃくちゃ敏感になってくるときがあるんですよ。なんていうのでしょうか、助詞だけに反応するアンテナをもっているというか、鬼太郎の髪の毛って妖怪の妖気に反応し...
【感想】「ジロー、チェンジ、キカイダー」と命じても「ううう」と呻く加藤治郎は 穂村弘
- 2015/01/29
- 01:01

「ジロー、チェンジ、キカイダー」と命じても「ううう」と呻く加藤治郎は 穂村弘【変身しなかったジローさんをめぐる冒険】穂村さん自身がよくいってることだとおもうんですが、フィクションをたちあげることによって世界のリアルがふいに現前することがある、そんなふうなことを穂村さんってたびたびくちにしているとおもうんです。事実を事実的文体によってたちあげるよりも、むしろフィクションをフィクショナルな文体および...
【感想】兄ちゃんが盗んだ僕も手伝った くんじろう
- 2015/01/28
- 20:27
兄ちゃんが盗んだ僕も手伝った くんじろう【盗賊たちの詩性=私性】くんじろうさんの有名な句です。のちにくんじろうさんがこの句を詩のボクシングで詩にして朗読されています。このくんじろうさんのインパクトある句を、くんじろうさんの主催されているおなじ『川柳・北田辺』に出席されている紫乙さんのつぎのような句と結びつけてかんがえてみたいとおもうのです。お店から盗って来た本くれる彼 竹井紫乙どちらもまず共通...
【感想】はつ雪や紙をさはつたまま眠る 宮本佳世乃
- 2015/01/27
- 23:59
はつ雪や紙をさはつたまま眠る 宮本佳世乃【おやすみなさいからはじまる感想文】このかよのさんの句、だいすきでねむるまえとかによくおもいだしてるんです。あと、手をむねのうえで組んでおいのりするようにうたたねしているときとかも、ゆめのなかでおもいだしてるんです。これね、「紙を」っていうのがずっと気になってたんです。たとえば、本を読みながら寝ちゃうことありますよね。そのときは、本を読んだままねむるとか、...
【感想】きつねうどんの頃は覚えてないきつね 久保田紺
- 2015/01/27
- 23:30
きつねうどんの頃は覚えてないきつね 久保田紺【回想するうどん】これ、おもしろい句だなあとおもったんですが、すぐに気になったのが、じゃあ、うどんはなにをかんがえていたんだろうってことです。きつねは、きつねうどんのころは、覚えてないんだけれども、「は」という選択・比較の助詞がつかわれている以上、ほかのことは覚えているはずです。だったら、うどんはそういう記憶したり回想したりする身体や機能をもっていなか...