【こわい川柳 第五十四話】仏蘭西の熟成しきった地図である 飯島章友
- 2015/06/30
- 12:45
仏蘭西の熟成しきった地図である 飯島章友【腐るのだいすき、発酵するのもっとすき】川柳の詩的技法のひとつに、〈無機物を有機物に置換してゆくところ〉があるんじゃないかとおもうんです。つまりですね、すべてのモノ・コトに〈なまぐささ〉を与え、場合によっては〈腐る〉ことも可能な存在様式にしてしまう。それがひとつの川柳のちからなのではないか。なぜ、川柳がそこに価値観をみいだしたのかはわからないけれども、たと...
【こわい川柳 第五十三話】眠れないすっかり白に包囲され 浮千草
- 2015/06/30
- 12:15
眠れないすっかり白に包囲され 浮千草【しろい、は、こわい。】千草さんの句集『夢をみるところ』からの一句です。さきほどの紫乙さんの「白いシャツ」の句もそうだったんですが、川柳において〈白〉ってちょっとこわいんですよね。でも、かんがえてみると、たとえばですね、白い幽霊はいても、黒い幽霊ってあんまりいないとおもうんですよね(ちなみにその黒い幽霊のギャップのこわさを杉浦日向子さんが漫画『百物語』で描かれ...
【感想】最大の難関白いシャツを着る 竹井紫乙
- 2015/06/30
- 12:00
最大の難関白いシャツを着る 竹井紫乙【難関に、立つ】さいきんずっと紫乙さんの句集を持ち歩き・読み返していて、川柳っておもしろいなあとゆっくりおもいました。川柳のいいところは、いっさつの句集のなかでいろんなスイングができるところなんじゃないかとおもうんです。ボールにかるくあてたり、おもいっきりふってみたり、はじめからファールをねらっていったり、そこにうつようにみせかけてぜんぜんべつの場所にボールを...
【短歌】宇宙船…(毎日新聞・毎日歌壇2015年6月29日・米川千嘉子 選)
- 2015/06/29
- 21:31

宇宙船、消臭剤がおいてある なんだ地球と地続きじゃないか 柳本々々 (毎日新聞・毎日歌壇2015年6月29日・米川千嘉子 選)【すべての出来事は林檎殺人事件】きょう、おなじ米川欄に隣り合って内山佑樹さんの次の歌も掲載されていたんです。歴史なんて勉強する意味あるのかとシェルターのなか子らに問われる 内山佑樹隣り合うように内山さんの歌と並んでいたんですが、どちらもある密閉された空間における〈地続き〉と〈...
【こわい川柳 第五十二話】みんな寝る暑い昼間にひとりきり 竹井紫乙
- 2015/06/29
- 12:00

みんな寝る暑い昼間にひとりきり 竹井紫乙【あたしも、俺も、一郎も、ゴゴも、測量士も、もともとも、みんな寝る】竹井紫乙さんの句集『ひよこ』からの一句です。ちなみにこの句集は、時実新子さんが装幀・序文・選をされています。わたしこの句とてもすきなんですが、〈孤独〉にはいろいろあって、〈意志としての孤独〉と〈状況としての孤独〉などがあるとおもうんですが、これって、そのふたつを組み合わせた〈意志と状況とし...
【こわい川柳 第五十一話】トコトコトコ夜通し地下を走る花 笹田かなえ
- 2015/06/28
- 23:41
トコトコトコ夜通し地下を走る花 笹田かなえ【副詞が、こわい。】笹田かなえさんの句集『お味はいかが?』からの一句です。こわくて、おもしろくて、へんてこなおかしみとあたたかみのある一句です。ただこの句がもしへんてこにとどまらないこわさがあるとしたら、「夜通し」とさりげなく挿入された副詞だとおもうんですね。このたった4音のよ・ど・お・しによってふたつのことがわかります。まず花は、よどおし、トコトコトコ...
【こわい川柳 第五十話】ぐびゃら岳じゅじゅべき壁にびゅびゅ挑む 川合大祐
- 2015/06/28
- 21:20
ぐびゃら岳じゅじゅべき壁にびゅびゅ挑む 川合大祐【んjsdhgふぁえうぎっjkfsh;kj】こわい川柳の〈折り返し〉です。折り返しのこわい句はなにがいいだろうと考えたときに、よのなかでなにがいちばんこわいかといえば、意味に回収できないモノがいちばんこわいんじゃないかとおもうんですね。たとえば、会議室のまんなかにこんにゃくが落ちている。よくわからないけれど、こわい、とか。ゆうじんが2センチだけ浮い...
【こわい川柳 第四十九話】母のこと以外を想う母といて 大川博幸
- 2015/06/28
- 20:43

母のこと以外を想う母といて 大川博幸【おかあさんと定型】『旬』から大川博幸さんの一句です。さいきんちょっと思うのが、川柳のなかの〈おかあさん〉ってちょっとふしぎだなということです。なぜなんだろう、ってかんがえるんですが、おそらく定型が〈おかあさん〉に他者性を与えている気がするんですね。基本的にわたしは定型詩というのは、語り手と定型の〈対話〉ではないかとおもっていて、定型をとおしてあらわれてくる〈...
【お知らせ】「俳句自由詩協同企画評 時をかける〈俳句=詩〉−小津夜景「うきはしをわたる風景」を読む/渡る−」『詩客』
- 2015/06/28
- 12:45

『詩客』に「俳句自由詩協同企画評 時をかける〈俳句=詩〉−小津夜景「うきはしをわたる風景」を読む/渡る−」という文章を載せていただきました。『詩客』編集部にお礼申し上げます。ありがとうございました!お時間のあるときにお読みくだされば、さいわいです。細田守監督の『時をかける少女』を映画館でみたときのことを思い出しながら、かんがえてみました。というよりも、むしろ、小津さんの詩とむかいあっているうちに、こ...
【お知らせ】「れんあい、のようなもの。-川上弘美『句集 機嫌のいい犬』における〈恋愛〉-」『BLOG俳句新空間 第20号』
- 2015/06/28
- 12:17
『 BLOG俳句新空間 第20号』にて「れんあい、のようなもの。-川上弘美『句集 機嫌のいい犬』における〈恋愛〉-」という文章を載せていただきました。『BLOG俳句新空間』編集部にお礼申し上げます。ありがとうございました!お時間のあるときにお読みくだされば、さいわいです。恋愛が言葉という記号によって作り出された物語なのだとすれば、ありきたりな論理や物語からどんなに距離をとろうとしても、「私」の恋も欲望も、性や...