【こわい川柳 第七十話】死はいつも明るいね-石部明-
- 2015/07/24
- 13:00

さびしくて他人のお葬式へゆく 石部明【にぎやかな死】『セレクション柳人3 石部明集』からの一句です。石部さんの句を読んでいると、ときどきおもうんです。石部明の川柳空間において、〈死〉はカーニバルだったのではないかと。石部明の川柳においては、〈死〉かにぎやかに反転していく。たとえば掲句の語り手が〈さびしさ〉を感じたときにいちばんにそのさびしさを払拭できる場所としておもいついたのが「お葬式」だったよ...
【お知らせ】「【俳句とサブカルチャー】獄門島と天空の城ラピュタ-横溝正史と宮崎駿とわたしたちがいっしょに叫んだ、「バルス!!」」『BLOG俳句新空間 第22号』
- 2015/07/24
- 12:30

『俳句新空間 第22号』にて「【俳句とサブカルチャー】獄門島と天空の城ラピュタ-横溝正史と宮崎駿とわたしたちがいっしょに叫んだ、「バルス!!」」という文章を載せていただきました。『BLOG俳句新空間』編集部にお礼申し上げます。ありがとうございました!お時間のあるときにお読みくだされば、さいわいです。かつて『週刊俳句』の「 とある眼差しのこと 松下道臣句集『足形』の一句 」という記事において、西原天気さんが...
【感想】岡野大嗣/安福望における〈神〉の表象-となりのかみさま-
- 2015/07/24
- 12:00

降りぎわに「じゃあ」と握った手のかたち合えば二人の「またね」は祈り 岡野大嗣【短歌とかみさま】岡野大嗣さんの『サイレンと犀』にも、安福望さんの『食器と食パンとペン』にも、印象的なかたちで〈神〉がでてくるんですね。たとえば岡野さんなら、微速度で撮った発芽の動画にも神は映っていませんでした 岡野大嗣安福さんなら、いいかげん神様引退しようかな 思い通りもつまらないから 竹林ミ來と竹林さんの短歌に添...
【感想】国歌斉唱 金魚は長い糞たれて 滋野さち
- 2015/07/23
- 13:00
国歌斉唱 金魚は長い糞たれて 滋野さち【国歌と定型】滋野さんの句集『オオバコの花』からの一句です。どこかでたしか荻原裕幸さんが「君が代」と〈短歌〉の関係について書かれていて、そのときはじめて、じぶんが小学生のころに短歌という形式は知らないままに定型が身体化していたんだな、とはっとおもったんです。小学校のときはわけもわからずただことばや音のおもしろさで「君が代」を歌いますよね。そのとき、意味を抜い...
【感想】たくさんのたくさんの人がいる中でただ手を繋げる人を探した 後藤葉菜
- 2015/07/23
- 12:00
たくさんのたくさんの人がいる中でただ手を繋げる人を探した 後藤葉菜【ことばをさがす、ことばをいどうする】安福望さんの『食器と食パンとペン』にも引用されている後藤葉菜さんの歌です。この歌の「ただ手を繋げる人」という「人」になっているところがこの歌のひとつの大事な点なんじゃないかとおもうんです。それは「親」や「友」や「父」や「母」や「彼」や「姉」や「彼女」や「恋人」や「夫」や「妻」ではなく、「人」だ...
【川柳・連作】「ふたがあります。とりますか?」『おかじょうき』2015年7月号掲載作
- 2015/07/22
- 22:57

数学教師よ、ラン! ラン! 虚数ラン!十文字がためを夢に浮く水母ふわふわが隣の家に越してくる「じゃねえ」から「じゃないの」までを進化する 「俺のふたがあります。とりますか?」「はい」 柳本々々『おかじょうき』2015年7月号掲載作 *最後だけ違和感がある握りかた 柳本々々 (題「異」・きさらぎ彼句吾 選・佳作)ぬるぬるとしてるここからワープする 柳本々々 (題「異」・きさらぎ彼句...
【こわい川柳 第六十九話】だんだんこわくなる-草地豊子-
- 2015/07/22
- 13:30

眠りましょうだんだん怖くなる童話 草地豊子【足し算こわい】『セレクション柳人番外 草地豊子集』から草地さんの句です。で、ですね。草地さんの川柳のこわさというかおもしろさのひとつに〈足し算はこわい〉というのがあるようにおもうんです。なにかを足すということはただそれだけで意味性が違った方向にどんどん加速していくことがある。で、その加速のなかでほんとうはじぶんが足していたはずなのに、いつのまにか足し算...
【こわい川柳 第六十八話】発送手続きをされるわたし-小野五郎-
- 2015/07/22
- 13:00
病院で青い荷札をつけられる 小野五郎【出荷済みのわたし】月波与生さんが「現代川柳ゆうゆう夢工房」で小野五郎さんの川柳を紹介されています。月波さんは五郎さんの川柳さんを「崩れる直前、何か別なものに変わろうとしているようにも見える不思議な川柳」と評されています。この月波さんのことばから始めてみれば、掲句の五郎さんの句。患者として病院にきていたはずの〈わたし〉が発送される〈荷物〉に変わるしゅんかんを描...
【感想】会えない人はみんなきらいだ眠ったらぜんぶ忘れる話はすきだ 嶋田さくらこ
- 2015/07/22
- 12:00

会えない人はみんなきらいだ眠ったらぜんぶ忘れる話はすきだ 嶋田さくらこ【短歌における「きらいだ」という発話はほんとうに「きらいだ」なのか】以前から自分にとってとても気になる歌だなと思っていたのですが、今回安福望さんの『食器と食パンとペン』で引用されているのをみて、またあらためてかんがえてみました。この歌のかたちに注目してみます。意味のうえからもわけてみると、(あえないひとは/みんなきらいだ)(ね...
【感想】地下街は地下道になるいつしかにBGMが消えたあたりで 岡野大嗣
- 2015/07/21
- 07:05
地下街は地下道になるいつしかにBGMが消えたあたりで 岡野大嗣【サイレン+と=サイレント】岡野さんのこの歌集は『サイレンと犀』っていうタイトルなんですが、このタイトルはある意味で、〈音〉の両極端を暗示しているとおもうんですね。サイレンっていうのは喧噪、すさまじい音が氾濫する世界、そして sigh =ため息としての〈沈黙〉〈静寂(しじま)〉のようなサイレントの世界です。そもそもこの歌集は、サイレン/サイ...