【感想】じいさんがゆっくり逃げるばあさんをゆっくりとゆっくりと追いかける 岡野大嗣
- 2015/07/31
- 12:00
じいさんがゆっくり逃げるばあさんをゆっくりとゆっくりと追いかける 岡野大嗣【老齢と再生】この歌、ふしぎでおもしろい歌だなあとおもって前から考えていたんですが、わたしは岡野さんの歌集によくみられる〈反復〉の主題のカテゴリーにある歌なのかな、っておもってたんです。でも次の歌をみたときに、これは〈反復〉と同時に〈エイジング(齢を重ねること=老齢化)〉の主題にもあるのかなっておもったんです。この歌です。...
【感想】よそ者として一心に踊りたる 松本てふこ
- 2015/07/29
- 23:32

よそ者として一心に踊りたる 松本てふこ【読み手としてよそ者になること】『川柳カード』9号(2015年7月)の自選句としててふこさんがあげておられたものです。で、わたし、帰りの電車でこの句の感想を書こうとおもってずっとあれこれ書いていたんですよ。ただどうしても自分が感じたようにうまく書けないんですね。この句の語り手がじぶんがどれだけ〈よそ者〉であろうとも〈踊っている/踊ろうとしている/踊りつづけている...
【感想】渋滞のテールランプが汚くて綺麗でそこに今から混じる 岡野大嗣
- 2015/07/29
- 07:20
渋滞のテールランプが汚くて綺麗でそこに今から混じる 岡野大嗣きれいはきたない、きたないはきれい。闇と汚れの中を飛ぼう。 シェイクスピア『マクベス』【きたなくて、きれい】『短歌男子』の岡野さんの連作「巡りのリズム」から取ってみました。ちなみにこの歌は歌集『サイレンと犀』の「しずかなため息」にも収録されています。この歌でわたしが考えてみたいのが、「汚くて綺麗」です。前回、岡野さんの感想文を書いたと...
【感想】内田百閒に「飛ぶ」と「伝う」が多しという気にかかりつつ酒飲んでいる 佐佐木幸綱
- 2015/07/29
- 01:00

急に恐ろしい気配がするので、私は慌てて起ち上がり、表の戸を開けて、外に出ようとしたら、出会いがしらに、大きな白い物が、目の前に起ちふさがった。牛ぐらいもある大きな猫が、私の身体を押しのけて、家の中に這い込み、私が倒れた拍子に、胸の上を蹈みつけて、縁の下の方に行こうとしている。 内田百閒「梅雨韻」内田百閒に「飛ぶ」と「伝う」が多しという気にかかりつつ酒飲んでいる 佐佐木幸綱【飛ぶひ...
【こわい川柳 第七十一話】まよなかにみんなぶらさがる-定金冬二-
- 2015/07/27
- 18:16
吊革に真夜中があるゆうらゆら 定金冬二【吊革って、なんだろう】川柳や短歌においてしばしば吊革を散見するんですが、吊革ってぶきみなものとして歌われているとおもうんです。で、なんでだろうってかんがえたときに、まず吊革には、整然と並べられた〈秩序性〉があります。たとえばわたしたちが電車に入ったときにわたしたちが位置を決めるというよりは、吊革がわたしたちの身体性を決めている。その点で、わたしたちよりもシ...
【感想】きれいな言葉を使ってきれいにしたような町できれいにぼくは育った 岡野大嗣
- 2015/07/27
- 12:00

きれいな言葉を使ってきれいにしたような町できれいにぼくは育った 岡野大嗣【反復と事故】岡野さんの歌集『サイレンと犀』を読んでいてだんだんと気がついてくるのは、〈反復〉という主題です。ちなみにこれはこの歌集の装画・挿絵を担当されている安福望さんにもみられる主題です。表紙も、犀の角のような三角旗の反復の装画になっています。基本的には、詩とは、〈反復(リフレイン)〉です。なぜなら、反復すると、ひとはき...
【感想】あとがきのように寂しいひつじ雲見上げてきみのそばにいる夏 大森静佳
- 2015/07/27
- 01:00
あとがきのように寂しいひつじ雲見上げてきみのそばにいる夏 大森静佳【あとがきってなんですか、とふいにきかれる】あとがき、ってよくわからないんですよ。こないだ、あとがきってなんなんですか、っていわれて、わたしはそのときブランコに乗ってたんですけど、わかりません、っていったんですよ。わたしもあとがきを調べようとおもって、本屋さんにいって、あとがきマニュアルをさがしたんだけど、ないんですよ一冊も、と。...
【短歌】きみがくる…(「第四六〇回 公募短歌館 佐伯裕子 選」『角川短歌』2015年8月号掲載作)
- 2015/07/26
- 13:54

きみがくるはじめての日にコロコロを静かにかける中腰の王 柳本々々 (「第四六〇回 公募短歌館 佐伯裕子 選」『角川短歌』2015年8月号掲載作) *この家に誰より低く起き伏せばラスコーリニコフの斧も気づかぬ 佐伯裕子...
【感想】桜狩のときの写真に亡霊が写つてゐたら結婚しよう 荻原裕幸
- 2015/07/25
- 00:08

桜狩のときの写真に亡霊が写つてゐたら結婚しよう 荻原裕幸【短歌でプロポーズしてみよう】わたし、この歌がとてもすきなんですね。桜狩って花見のことですよね。花見のときの写真が心霊写真だったら結婚しよう、と語り手はいっています。おどろくべきことです。好きだから結婚しよう、ではなく、心霊写真だったら結婚しよう、なんです。この歌を作者から離れたテクストとして読んでみることにして、わたしが考えるこの歌のプロ...