【感想】出なくてもいい時に出るアルファ波 竹井紫乙
- 2015/09/30
- 20:44

出なくてもいい時に出るアルファ波 竹井紫乙【素晴らしい余計者】川柳ってひとつの〈やあ。〉の思想ではないかと思っていてですね、とつぜんなんですね、すべてが。で、とつぜんっていうのは、〈とつぜん〉になるための根拠がいるんですね。たとえば、昔からゆうじんだったけれどとつぜん好きになってしまったとか、昔から知っている事柄が裏切られる、すると〈とつぜん〉が起きるのではないか、そういう〈とつぜん性〉っていう...
【感想】いいことはたくさんあった ラブホからされてる電話が俺にはわかる 伊舎堂仁
- 2015/09/28
- 14:00
いいことはたくさんあった ラブホからされてる電話が俺にはわかる 伊舎堂仁【長い途方もなく長い一字アキ】伊舎堂さんの歌集『トントングラム』からの一首です。いしゃどうさんの短歌における〈アキ〉って一般的なアキとは違う特有の質感があるようにおもうんですが、たとえばこの歌の一字あきっていうのはおなじ伊舎堂さんのこんな歌の一字あきとも共鳴しあっているようにおもうんです。そういえば ばあちゃんに読んだじいち...
【感想】鈴木晴香「降りそうで降らない」(短歌連作)
- 2015/09/28
- 13:30
春の闇乳房はすこし冷たくて柔らかいもの 指が驚く 鈴木晴香綿棒を突っ込んでいる耳奥がしばらく私から遠ざかる 〃空の青ではないポリバケツの中に持ち手の方が綺麗な花火 〃【ものすごくうるさくて、ありえないほど遠い】第五十八回短歌研究新人賞最終選考通過作(『短歌研究』2015年9月号)から鈴木晴香さんの「降りそうで降らない」です。「降りそうで降らない」というタイトルが全体の基調を統括していると思うんで...
【こわい川柳 第八十五話】こわいこども-田久保亜蘭-
- 2015/09/28
- 13:00

すぐに抱けたから余所の子供である 田久保亜蘭【主観は、よれる】川柳のなかで〈子ども〉はどう語られているのかという話です。川柳はよく〈うがち〉といわれて、ひとの気づかない批評性みたいなものが川柳性としていわれるのだけれど、わたしはこの〈うがち〉じゃなくて、川柳性には〈ねじれ〉があるんだといいかえてもいいんじゃないかとおもうんです。ひとや世間が〈きづかなかった〉だけでなく、じぶんじしんさえも〈きづか...
【感想】いまのごりっという感触は 不思議の壁にぶちあたり、@ 加藤治郎
- 2015/09/28
- 12:30
いまのごりっという感触は 不思議の壁にぶちあたり、@ 加藤治郎【唯物化するぶろんぶろん】さっきの記事の天使の内臓の記事もそうだったんです、定型と唯物化っていうのは実はけっこう深いつながりがあるのかもしれないなと思います。たとえば定型は必ずしも指をおって詠むものではないとはよくいわれますが(あくまで《音》律なので)、それでも指をおって短歌や川柳をつくることがありますよね。で、その〈指をおる〉行為っ...
【感想】短歌の天使-或いは天使の内臓=内蔵-
- 2015/09/28
- 12:00
わたくしはどちらも好きよミカエルの右の翼と左の翼 紀野恵ごみ箱に天使がまるごと捨ててありはねとからだを分別している 吉岡太朗オレンジのなかにちいさな臓器ありいつの日かたぶん天使がえらぶ 加藤治郎ねむりながら笑うおまえの好物は天使のちんこみたいなマカロニ 穂村弘【575=天使のからだ、77=天使のつばさ】短歌って天使がよく出てくるような気がするんですね。短歌と天使のかかわりあいはどこかで親密...
【感想】猫パンチしかないなんて秋の空 ひとり静
- 2015/09/26
- 01:11

猫パンチしかないなんて秋の空 ひとり静【川柳とキャラクター化をめぐる】川柳のよいところってこういう読解するには難しい句がやわらかくすっとはいってくるところだとおもうんですよ。一見やわらかい句なんだけれども、この句をどう読めばいいんだろうと考えたときに、読みのパンチの出し方がとてもむずかしい句、でも難解ではない句、そうしたレベルの両極端を内包してるのが川柳のおもしろさだともおもうんです。で、猫パン...
【お知らせ】「私の好きな詩人 第158回―高橋順子―」『詩客』
- 2015/09/24
- 13:00

『詩客』のリレー連載シリーズ「私の好きな詩人 」の第158回目に高橋順子さんの詩をめぐって書かせていただきました。「 私の好きな詩人 第158回―高橋順子― 」柳本々々わたし、ほんとうに高橋順子さんの『時の雨』が大好きで、よく、無力で、どこにも歩き出す気力がなく、だれにもあうちからもなく、這いつくばるしかなくなったときには、はらばいになったまま、ゆいいつの勇気としてこの『時の雨』を声にだして読んでいました。詩...
【感想】性別が男で石を握ってる 角田古錐
- 2015/09/24
- 12:41
性別が男で石を握ってる 角田古錐【ジェンダーと定型ととろろをめぐって】川柳を〈読む〉ときに、その〈読み〉の過程のなかでジェンダーをどう扱えばいいのかという問題がひとつあると思うんですが、それを考えるためにはジェンダーと定型の関係を考えなければいけないようにおもうんですね。たとえば、575=17音のなかにジェンダーはあるのか。もしあるとしたらそのジェンダーは語り手から派生しているのか、それとも読み手...