【こわい川柳 第八十四話】多すぎる奇蹟-新家完司-
- 2015/09/24
- 11:47
奇跡だと思いませんかウォシュレット 新家完司プルーストにとって、人間の内面世界は私たちを驚嘆させてやまないひとつの無限、ひとつの奇跡でした。 クンデラ『小説の精神』【奇跡は毎日起こってる】前の記事で川柳と〈気〉をめぐる話をしたんですが、川柳には〈奇跡〉も多いんですよね。そんなに起こらないのが奇跡なんだけれども、川柳のなかでは奇跡はたびたび起こる。そう考えるとやっぱりどこかで川柳はスピリチュアル...
【こわい川柳 第八十三話】気の怪-徳長怜-
- 2015/09/24
- 07:00
バス停は武士になる気で立っている 徳長怜【スピリチュアル文芸としての現代川柳】こないだの川柳カード大会で「気」が題に出され、丸山進さんが選者をつとめられていたんですが、川柳においてこの「気」っていうのはひとつキーワードになるんじゃないかなっておもってるんです。たとえばです。丸山さんの、折れてくれ折れ線グラフなのだから 丸山進この句は「折れ線グラフ」が「折れ」ない〈気〉になっているわけです。語り...
【短歌】車窓から…(「第四六二回 公募短歌館 加藤治郎 選・秀逸」『角川短歌』2015年10月号)
- 2015/09/21
- 13:42

車窓から世界をみると助動詞や助詞や名詞がどうでもよくなる 柳本々々 (「第四六二回 公募短歌館 加藤治郎 選・秀逸」『角川短歌』2015年10月号【加藤治郎さんから頂いた選評】風景ではなく世界ということでメタフォリカルな場が生まれる。車窓は動と静の境界にある。助動詞、助詞、名詞が排除される。動詞が暗示されている。たぶん口をとがらせてるね だまったきりひとさし指をまわしてる、ふん 加藤治郎...
【短歌】毎日新聞・毎日歌壇 加藤治郎/米川千嘉子 選・9月21日(月)
- 2015/09/21
- 07:22

鬣の漢字のなかで待ち合わせ ×のあたりで拾うハンカチ 柳本々々 (毎日新聞・毎日歌壇・加藤治郎 選・9月21日(月))どんなに厳密に待ち合わせしても会えなかったり、なんとかお互いに理解しあおうとしてもわかりあえなかったりすることが、おおい。なんでだろうわたしがわるいのかな、それとも構造がわるいのかな、とおもって、じゃあ構造かもしれないな、とおもい、わたしは構造を組み換えるために反対にやってみようとこ...
【川柳】第3回川柳カード大会(「美」くんじろう選・「大」樋口由紀子 選)
- 2015/09/19
- 15:42

浴室に江國香織が直立す 柳本々々全滅の野原 一通の回文 〃 (第3回川柳カード大会・「美」くんじろう 選・佳作)食卓でやや困ってるスカイツリー 柳本々々 ( 第3回川柳カード大会・「大」樋口由紀子 選・佳作) *東京タワーの脚を百ぺらぺん撫でる くんじろう非常口セロハンテープで止め直す 樋口由紀子...
【短歌】「ゆいいつほんとう」(「短歌研究詠草・佐佐木幸綱 選・佳作」『短歌研究』2015年10月号掲載)
- 2015/09/19
- 15:05

地下鉄のノイズの音で消えたけどいまいったことがゆいいつほんとう君の部屋の窓に明かりがついている ぼくとは関係ないのだけれど窓辺から夜に飛び立つかぐや姫 ホットパンツの軽い出で立ち 柳本々々「ゆいいつほんとう」 (「短歌研究詠草・佐佐木幸綱 選・佳作」『短歌研究』2015年10月号) *「ニューウェーブとデジタルメディアをめぐるノート──荻原裕幸・加藤治郎・穂村弘」というタイトルの拙論...
【こわい川柳 第八十二話】隠喩の病人-石部明-
- 2015/09/19
- 00:20

縊死の木か猫かしばらくわからない 石部明【病としての隠喩】今回の話は、川柳においては隠喩(メタファー)が失調しているのではないかという話です。たとえば石部さんのこのよく引用される句。どういうふうに読めばいいんだろうと長いあいだずっと考えていたんですが、これはひとつの読み方として《隠喩の機能不全》として読めばいいのではないかとおもったんです。この句の難しいところは、「縊死の木」と「猫」はまったく似...
【お知らせ】イラスト連載「やぎもともともとのゆらゆら絵川柳 第一回 竹井紫乙と不必要な波」『あざみ通信15号』
- 2015/09/18
- 21:20

これまで数々の素敵な句集を出版されてきたあざみエージェントさんが発行している『あざみ通信』で、絵川柳の連載「やぎもともともとのゆらゆら絵川柳」というコーナーを持たせていただくことになりました。『あざみ通信』15号(2015年9月)の連載第一回目は、第二句集『白百合亭日常』の「あとがき」を書かせていただいた竹井紫乙さんの句からの絵川柳です。出なくてもいい時に出るアルファ波 竹井紫乙しおとさんの川柳って、...
【お知らせ】「【短詩時評】小池正博と綱のつけられない動物(的比喩)たち-はじめにもなかがあった、もなかは神と共にあった、もなかは神であった-」『BLOG俳句新空間 第26号』
- 2015/09/18
- 04:28

『 BLOG俳句新空間 第26号』にて「【短詩時評】小池正博と綱のつけられない動物(的比喩)たち-はじめにもなかがあった、もなかは神と共にあった、もなかは神であった-」という文章を載せていただきました。『BLOG俳句新空間』編集部にお礼申し上げます。ありがとうございました!お時間のあるときにお読みくだされば、さいわいです。今月の短詩時評は、先日、大阪の川柳カード大会で小池正博さんと対談させていただいたときの内...
【川柳・連作】「がぜん犀」『おかじょうき』2015年9月号掲載作
- 2015/09/17
- 20:44

貝に耳をあてれば猫のおてがみ真夜中を桃のかたちに切り開く トイレあけるとがぜん犀でした 靴底に姉がたまっていくアニメ 漫然がハンググライダーでやってくる 柳本々々「がぜん犀」『おかじょうき』2015年9月号 *むさしさんから次のていねいな句評をいただきました。ありがとうございました!トイレあけるとがぜん犀でした 柳本々々柳本々々さん、この句ってギョギョ!です~。「あける」は「開ける」で、「がぜん」...