【短歌】下の句の…(毎日新聞・毎日歌壇2015年11月30日・加藤治郎 選)
- 2015/11/30
- 19:33
下の句の謀叛がおきて上の句が七七になる 未来はすてき 柳本々々 (毎日新聞・毎日歌壇2015年11月30日・加藤治郎 選)【時間の放流】加藤治郎さんにこんな歌があるんです。アトミックボム、ごめんなさいとアメリカの少年が言うほほえみながら 加藤治郎 (毎日歌壇2015年1月5日・選者新年詠)加藤さんにこんな歌があって、で、この短歌ってこの歌のなかで時間が転流してるとおもうんですよ。「アトミックボム」「ごめ...
【川柳】題「抱く」(はじめの一歩句会)
- 2015/11/30
- 19:21

右腕を花束のように抱いている 柳本々々 (吹喜 選)むしろ抱くそういってからが長い 柳本々々 (ひろ子 選)【吹喜さんから頂いた選評】☆右腕を花束のように抱いているあの日大好きなあなたから バラの花束を受け取った。100本のバラ。本当にこんなことをする人がいるんだという驚きと こみあげてきた幸せ。それなのにねえ、あなたは今どこにいるの?あれは何だったの?私 ドラマの続きがしたくて ずっと 右腕を抱いたま...
【ふしぎな川柳 第三十七夜】それじゃない-徳永政二-
- 2015/11/28
- 20:53

犬小屋の中に入ってゆく鎖 徳永政二【フッサールがみた犬小屋の鎖】さいきん道を歩きながらこの川柳についてずっとかんがえていたんですよ。犬をつれて散歩しているひとが、いる。なぜ、徳永さんの句は、犬ではなく、鎖に意識を傾けたのか。語り手は強く鎖にひかれている。意識をそそいでいる。結語が「鎖」なので、これはもうほんとに鎖の句なんですよ。おおいに語られている「鎖」です。で、おもうのは、意識が逸れているひと...
【感想】1001二人のふ10る0010い恐怖をかた101100り0 加藤治郎
- 2015/11/26
- 19:21

1001二人のふ10る0010い恐怖をかた101100り0 加藤治郎3333399996112222511 兵頭全郎【11776511】数字の短歌や川柳ってありますよね。で、数字なのでそのままだと意味がとれない、数字としてエンコードされたままの状態なので、デコード=解凍するひつようがあります。ただそうやって解凍したときに、じゃあその〈意味〉そのものが、それが川柳なのか、短歌なのか、っていわ...
【感想】サングラス五人もゐてはそれはもう 星野麥丘人
- 2015/11/26
- 08:01

サングラス五人もゐてはそれはもう 星野麥丘人六人中五人バンダナ巻いている 榊陽子【類とねじれ】〈ひと〉が〈風景〉になるときってどんなときなんだろう、と考えたときに、それは〈ひと〉が〈類〉になったときなんじゃないかな、っておもうんですよ。たとえば、ミレーに「落穂拾い」という有名な絵画があるけれど、ここでは〈個〉よりも農作業に従事する〈ひと・びと〉の〈類〉になっているわけですよね。だから、〈風景〉...
【ふしぎな川柳 第三十六夜】みんなで寝てしまおう-広瀬ちえみ-
- 2015/11/25
- 20:29

鍵のない箱を囲んで寝てしまう 広瀬ちえみその時、Kは、これで他人とのあらゆるつながりが断ち切られ、もちろん、自分はこれまでよりも自由な身になり、ふつうなら入れてもらえないこの場所で好きなだけ待っていることができる、そして、この自由は、自分が闘いとったもので、他人にはとてもできないことだろう、いまや誰も自分に触れたり、ここから追い出したりすることはできない、それどころか、自分に話しかけることもでき...
【ふしぎな川柳 第三十五夜】月世界旅行は美味しい-妹尾凛-
- 2015/11/25
- 12:00

満月のスライス山盛りのサラダ 妹尾凛【お菓子の家にお菓子の月夜】『川柳杜人』247号からの一句です。きょう紹介した『ウォレスとグルミット』のウォレスはチーズが大好きで、月までチーズを取りにいくんですよ。なんでかっていうと、月自体がチーズだからです。だからあの世界では月=チーズであり、月が食べられるものとしてあったんだけれども、この妹尾さんの句でも月は食べられるものとしてあります。サラダなので感覚と...
【ふしぎな川柳 第三十四夜】刺しにゆく-石部明-
- 2015/11/25
- 07:16

春という一語をもって刺しにゆく 石部明【犯罪はみんな唯物論的だ】現代川柳でたびたび起こっていることに、言語が物質化するというものがあります。その意味で、川柳っていうのはずっと唯物論的というか、そういう物質に規定された観念の世界をかんがえているということになります。で、その言語唯物論者の最たる川柳作家が、わたしは石部明さんと佐藤みさ子さんなのではないかと考えています。たとえば、この石部さんの句では...
【ふしぎな川柳 第三十三夜】ただしくなくて、いい-久保田紺-
- 2015/11/25
- 06:05

傾いたままで結構はしれます 久保田紺【ペンギンに気をつけろ!】久保田さんの川柳のモチーフのひとつに、〈正しくなくていい〉っていうのがあるようにおもうんですね。「傾いたままで結構はしれます」という句には、まず①「傾いたままで」いい、という傾きの不正、それから②「結構」という完徹じゃなくていい、という程度の不正、そして③「はしれます」という完璧な走行でなくても部分的可能走行でいいという完全さの不正のみ...
【ふしぎな川柳 第三十二夜】きもちがいい-渡部可奈子-
- 2015/11/25
- 05:34

アレチノギクの真っ逆さまはきもちがいい 渡部可奈子【真っ逆さまのモラル】この川柳、ちょっとおもしろいのが、定型が776になているんですね。上7中7はよくあるんだけれども、下6というのがですね、「きもちいい」で5音になるのにわざわざ「きもちがいい」と6音にしてあるんです。なんだろう、と。なんのためだろう、と。で、こういうときたぶん気になるのが、ほんとうにそれが「きもちよかったのか」ということです。...