【川柳連作と散文】「2020年のベイダー忌」『川柳の仲間 旬』203号・2016年1月号
- 2015/12/31
- 15:52

Hoooo-pah.と爽やかベイダー卿の息にせんねんたっても我が身ベイダー忌フォースあれ定型もあれベイダー忌手をかざし童(わらべ)を浮かすベイダー忌午前二時ライトセーバーなんかいい 不用意に地球に降りるベイダー忌サングラス通すと消えるベイダー忌ワープ時にふと回想すベイダー忌墜ちるとき悲鳴を上げたベイダー卿イウォークのつたない踊りベイダー忌 柳本々々「2020年のベイダー忌」『川柳の仲間 旬』203号・2016年1...
【感想】シャイとかは問題ではない一晩中死なないマリオの前進を見た 柳谷あゆみ
- 2015/12/31
- 15:07

シャイとかは問題ではない一晩中死なないマリオの前進を見た 柳谷あゆみ【短歌ありがとう】2015年最後の感想になると思うんですが、今回ちょっとあえてすごく細部にこだわってみようかと思うんですね。あんまりなにも言わないようにして、それでもなにかちがったかたちのことを言おうとして。この柳谷さんの歌の「問題ではない」っていう箇所なんです。もんだいではない、っていうのは8音ですよね。でも、ここ、「もんだいでな...
【ふしぎな川柳 第五十四夜】そろそろパイの話をしよう-石橋水絵-
- 2015/12/29
- 10:33

海へ祀るネクタイもパイも 石橋水絵ほうれん草は美しいです 嘘も 〃【すべての川柳はスティーヴン・セガール】この水絵さんの句にみられるのが、「ネクタイ」と「パイ」、「ほうれん草」と「嘘」がふつうに並列されてしまう風景なんじゃないかとおもうんですね。で、わたし、前から考えていたんですが、川柳のなかではどうも食べ物は食べるものではないらしい、ということがわかってきた。それは前から書いていたことでもあ...
【感想】せんせいの指が砂場のトンネルを崩していくねひいらああいいて 加藤治郎
- 2015/12/28
- 13:00

せんせいの指が砂場のトンネルを崩していくねひいらああいいて 加藤治郎 グールドの立場からすれば、音楽というのは構造や仕掛けを徹底的に理解し、しゃぶり尽くして、初めて弾いた、聴いたということになる。それはむろん一回生で聴いてわかるわけがないのです。たとえば《ゴルトベルク変奏曲》の第七変奏はどうなっているか。第八変奏は? 第九変奏は? グールドはそれだからライヴは虚しいと感じるようになったのです。...
【ふしぎな川柳 第五十三夜】今は反省している-吉田健治と菊地俊太郎ー
- 2015/12/28
- 12:20

だまって森の樹のボタンをはずしてきた 吉田健治あまり静かなので骨壺を揺する 菊地俊太郎【くちびるから散弾銃】川柳ってときどき、おいそれはやっちゃいけないだろう、っていうことを〈する〉んですよ。たとえば「だまって森の樹のボタンをはずして」くるとかですね、あまりにも「静かなので骨壺を揺する」とかですね、なんだかそうしたい気もちもわからないではないけれどやっちゃダメだろうということを、してしまう。だ...
【ふしぎな川柳 第五十二夜】遠い隣人-小池正博-
- 2015/12/28
- 11:42

もみがらの中で手首を握りあう 小池正博巻尺ではかれる距離にいつもいる 〃【愛をめぐるオマツリ男爵の孤島】石田柊馬さんが小池さんの句集『水牛の余波』のタイトルのなかにある〈遠近の構造〉についてたしか指摘されていて(水面に石を投げて波紋をみているとわかるけれど「余波」っていうのは〈近さ〉と〈遠さ〉の交響ですね)、で、その〈遠近の構造〉から小池さんの句についても解説されていたんですが、それって面白い...
【感想】鯛焼に危機を感じてゐた吉田 西原天気
- 2015/12/28
- 00:30

鯛焼きに危機を感じてゐた吉田 西原天気 (『はがきハイク』13号・2015年12月)眼底に焼き付けたまへほら菅井きんそつくりに暮れてゆく街 西原天気 (「かの夏を想へ」『連衆』72号・2015年10月)世界の意味は世界を超越し、世界は私の意志を超越している。 ウィトゲンシュタイン トニー滝谷の本当の名前は、トニー滝谷だった。 村上春樹「トニー滝谷」 人は魂を持つことによってのみ語る存在となること...
【感想】水母らの五里霧中をひくくひくく 野間幸恵
- 2015/12/28
- 00:02

水母らの五里霧中をひくくひくく 野間幸恵【ひくひくするハイク】『made in haiku』12号から野間さんの一句です。これどうしても、「ひくひく」の〈ブレ〉として私にはみえるんですよ。で、これは〈視える俳句〉なんではないかとおもうんですよ。眼で娯しむ俳句というか。まず「水母ら」のという「く・ら・げ・ら」で、認識のブレのようなものがくる。くらくらするわけです。くらげら、ってなんだと。つぎのしゅんかん、くらげ...
【ふしぎな川柳 第五十一夜】不安三千里-佐藤幸子-
- 2015/12/27
- 19:28

信号無視しばらく霧の中歩く 佐藤幸子わたしだけ蚊に刺されないので不安 丸山進めりめりを探し続けて三千里 くんじろう【不安ですか?】現代川柳には、〈川柳と不安〉っていうトピックがたてられるように思うんですよ。幸子さんの句は「信号無視」から始まっているんだけれども、その「信号無視」による〈不安〉を回収しようとする動きが語り手にはありません。そのまま「歩く」。「信号無視」をしてからも「霧の中」だけ...
【ふしぎな川柳 第五十夜】ちょっとした崩壊-本多洋子-
- 2015/12/27
- 11:39

裂け目から春を覗きに行ったきり 本多洋子詩人の危険にみちた旅は原型の発見とその再発見であり、同時に彼自身の原型への戦いという形をとるように思われてなりません。 田村隆一「地図のない旅」【崩壊はもう始まっている】現代川柳によくあらわれるシーンが〈ちょっとした崩壊〉なのではないかと思うんですよ。たとえば、少女消えパンの増殖始まれり 倉本朝世という句があるんですが、「少女消え」という崩壊という「パ...