【ふしぎな川柳 第七十夜】〈の〉から考えるオズの国-なかはられいこ-
- 2016/01/31
- 23:51

産院の窓の向こうのオズの国 なかはられいこ現代川柳と言われる以前、戦前から切れ字などは使っていますが、中に意地を張っている人が、川柳の「や」はすべて「の」だと主張したことがあります。 石田柊馬『脱衣場のアリス』【「の」のお話】この石田柊馬さんのおっしゃってることってちょっとおもしろいなって思って、俳句でたとえば「古池や」とかありますよね、その「や」が川柳では「の」になるっていうんですよね。でね...
【ふしぎな川柳 第六十九夜】ふたりはいつも正しかった-久保田紺-
- 2016/01/30
- 22:19

よいにおいふたりで嘘をついたとき 久保田紺【ふたりのただしさ】久保田紺さんの句集『川柳カード叢書③ 大阪のかたち』からの一句です。ちなみにこの句集の表紙絵はくんじろうさんが描かれているんですよ。久保田紺さんのこの句をみたとき、ふっと思い出した詩があったので引用してみたいと思います。 なにもない場所に言葉がうまれる瞬間を二人でもくげきしたねあれは夜あけのバスにのって遠い町にいくときのつめたくうす青...
【感想】DDDD圧倒的にDの海 佐々木貴子
- 2016/01/28
- 19:39

DDDD圧倒的にDの海 佐々木貴子tttふいに過ぎゆく子らや秋 鴇田智哉۵ 石原ユキオ【神さまの俳句】ときどき思うのが、川柳もたくさんへんな句があるんだけれど、実は俳句のほうがもっとヘンなところにとつぜん近づいてしまったりするのではないかということです。さいきん楠本憲吉さんの『戦後の俳句』を読んでいるんですが(楠本さんの本は俳句も川柳もわかりやすくていい)、新興俳句のところを読んでいるとやっ...
【ふしぎな川柳 第六十八夜】出会わないことはむずかしかった-山口亜都子-
- 2016/01/28
- 13:30

遠雷や会わない奇跡会う奇跡 山口亜都子【あなたに出会わずにいることの難しさ】〈出会い〉の難しさというか、〈出会えない〉ことの難しさってよく言われたりすると思うんですが、むしろ逆に、〈出会わないでいることの難しさ〉ってあるのかなって思ったりすることがあるんです。どうやっても、ぜったいに、〈出会ってしまう〉。どういうルートを通っても、どう生きていこうとしても、そのひとに出会ってしまう。その本にであっ...
【ふしぎな川柳 第六十七夜】テレビの〈外〉へ-宮田あきら-
- 2016/01/28
- 13:09

テレビ受像 マラソン走者掌を挙げて落下(おち) 宮田あきらネット生中継頭に石が当たる 関悦史不如意な感じを感じなければならない。肯定的な世界や、なんかわからんけどポジティヴなヴァイブレーションは、自分を温存していては描けない。フレームからはみ出る部分を注視しなければならない。 町田康『新潮』2010年7月【フレームは、痛い】わたし、関さんのこの句について昔からずっと考えていて、宮田あきらの川柳を...
【ふしぎな川柳 第六十六夜】角が匂う-樋口由紀子-
- 2016/01/28
- 08:00

三角形のどの角からも死が匂う 樋口由紀子わが部屋のきれいな四角夏痩す 高柳克弘【かどのふしぎ】《角》ってふしぎなんですよね。都市伝説でも、部屋の四隅をみてから中央をみると幽霊がみえるとかあるけれど、角とか隅ってそういう呪術的ななにかを持っている。で、なんで《角》ってマジカルなんだろうって考えたときに、これは推測なんだけれど、そもそもわたしたちの身体って《角》をもてないからなんじゃないかとおもう...
【感想】子の友の中の少女や啄木忌 安住敦
- 2016/01/25
- 13:34

子の友の中の少女や啄木忌 安住敦【生の測量士】安住敦の俳句を読みながら、定型のなかの〈距離〉そのものに生が宿る場合もあるのかなってふと思って、たとえば上の句なんですが、「子の友の中の少女や」って穂村さんのあの有名な「恋人」の歌みたいに長いですよね。長いし、なんだかまだるっこしい。でも26歳で死んだ啄木にはこの〈生のまだるっこしさ〉がなかったと思うんですよ。26でさくっと死んでしまった。その啄木の命日...
【あとがき】筑紫磐井『伝統の探求〈題詠文学論〉』のあとがき
- 2016/01/25
- 12:40
私は「前衛」と「伝統」は対概念であると思っている。「前衛」が見えなくなると「伝統」も見えなくなる。こうして考察して得た私の前提は、①「伝統」は虚子から始まる、②「伝統」は句会から始まる、というものであった。そうして進めた究明の結果、俳句の伝統・本質は「題詠文学」であると結論づけた。だから近代以降の俳句史は、伝統(題詠文学)と反伝統(題詠文学からの離脱)のせめぎあいにより形成される。昔も今も、こうした...
【短歌】「靴下は…(毎日新聞・毎日歌壇2016年1月25日・米川千嘉子 特選)
- 2016/01/25
- 07:41
独りですいつからですかもうずっと独りと気づくずっと前から 副島和昌【それは数としてやってきた】今週の毎日歌壇・加藤治郎さん選の特選歌です。短歌がもたらす〈気づき〉ってあるんじゃないかと思っていて、たとえばこの副島さんの歌でいえば、さいしょの「独りです」という5音を発話しはじめたときになんとなく語り手は〈気づき〉はじめてしまっていたんではないかとおもうんです。ああじぶんは「独りです」なんだと。で、...
【川柳】なにもない匚(はじめの一歩 2015むさし選・佳作)
- 2016/01/24
- 19:12

なにもない匚に黙って俺が棲む 柳本々々 こんにゃくは花束のような気がします 〃ねえアダムあたしたちなんかおかしくないか 〃 ときどきは眼鏡流れる天の川 〃さっそくですがと渡される頭蓋骨 〃 (はじめの一歩 2015むさし選・佳作) *パリ炎上 ごろりごろりと導火線 むさしハエタタキで叩こうテロはやめなさい 〃...