【あとがき】野間幸恵『WATER WAX』のあとがき
- 2016/03/20
- 15:46

俳句を考える時はいつも迷路に飛びこむようで、入口も出口も目的も目標も無いのです。有るのは〈5・7・5〉だけで、それは広大な平野に置かれた椅子のようだったり、夏の空に広がる入道雲のようだったりします。ほとんどの結果は夕暮れをとぼとぼ歩いている状況で終わりますが、きな粉餅のきな粉のように言葉まみれになり、なんの秩序も見い出せなくても、言葉たちはいつもやさしい問いかけと謎だらけの答えを用意してくれるので...
【お知らせ】「【短詩時評 15校目】蟻まみれの転校生が読む『桜前線開架宣言』-ブルデュー・山田航・小池正博-」『BLOG俳句新空間 第39号』
- 2016/03/18
- 12:00

『BLOG俳句新空間 第39号』にて「【短詩時評 15校目】蟻まみれの転校生が読む『桜前線開架宣言』-ブルデュー・山田航・小池正博-」という文章を載せていただきました。『BLOG俳句新空間』編集部にお礼申し上げます。ありがとうございました!お時間のあるときにお読みくだされば、さいわいです。今回は山田航さんの現代短歌のアンソロジー『桜前線開架宣言』と小池正博さんの句集『転校生は蟻まみれ』の二冊をめぐっていろいろ考...
【感想】こどもだと思っていたら宿でした こんにちは、こどものような宿 笹井宏之
- 2016/03/18
- 00:09

こどもだと思っていたら宿でした こんにちは、こどものような宿 笹井宏之【忘れること。もっと、忘れること。詩のために】笹井さんの短歌にとって《健忘》って大事な要素かもしれないなとおもうんですね。ただこれは笹井さんの短歌だけじゃなくって、〈文学〉にとっても《健忘》って大事な機能だとおもうんですよ。わすれること。積極的に、わすれること。じゃあ、どうしてか。それはわたしたちが無意識にはめ込まれしまってい...
【感想】いのちのかち。それは、じかん。―短歌と価値をめぐって―
- 2016/03/17
- 00:30

昼休み友だちがくれたポッキーを噛み砕いてはのみこんでいく 加藤千恵前肢が崩折れて顔から倒れねじれて牛肉になってゆく 斉藤斎藤【たんかは、ながい】なにかモノやデキゴトに対して〈価値〉があるとするならば、それってその語り手の〈執念=執心〉ではないかとおもうんですね。〈こだわり〉というか、ふだんひとが〈圧縮〉してあつかっているものを〈解凍〉したときにでてくるもの。それが〈価値〉になっていくのではない...
【感想】行きたくもない学校の決められたクラスの中で会いたかった人 加藤千恵
- 2016/03/17
- 00:00

行きたくもない学校の決められたクラスの中で会いたかった人 加藤千恵【学校の隙間をさがそう】たしか私が高校を休学していたときだったと思うんですが、新聞で加藤千恵さんの短歌が紹介されていてそれをみた瞬間、あっ短歌ってなんかすごいな、っておもったんですよ。そこから現代短歌に入っていくでもなかったんですが、でもそのことはよく覚えているんですよ。で、今考えてみるとそのときわたしには加藤さんが立てていた〈学...
【感想】日本はアニメ、ゲームとパソコンと、あとの少しが平山郁夫 黒瀬珂瀾
- 2016/03/16
- 01:00

日本はアニメ、ゲームとパソコンと、あとの少しが平山郁夫 黒瀬珂瀾【差異のニッポン】この短歌はもうひとつパラフレーズしたかたちがあって、ニッポンはアニメ、ゲームとパソコンと、あとの少しが太陽の塔 黒瀬珂瀾なんですね。ふたつの短歌の違いは「日本/ニッポン」「平山郁夫/太陽の塔」です。で、ちょっと注目したいのが「はアニメ、ゲームとパソコンと、あとの少しが」は同一の構造をもっているということです。ここ...
【感想】堂園昌彦さんと小タイトル、あるいは村上春樹と温かい泥の中からやってきたもの
- 2016/03/16
- 00:20

山田航さんが『桜前線開架宣言』で「堂園昌彦の魅力の一つとして、連作に付く小題(サブタイトル)のセンスが抜群にいいことが挙げられる」と指摘されていて、それで「あっ」と思い出したんですが、わたしも堂園さんの歌集をはじめて読んだときに短歌だけでなく小タイトルもひとつひとつがとても印象的だったんですよね。たとえば、「すべての信号を花束と間違える」。これはもう短歌にした方がいいような、小タイトルにするのがす...
【感想】僕とあなたの位置関係を告げなくちゃ辿り着けない夕焼けの駅 堂園昌彦
- 2016/03/15
- 22:14

僕とあなたの位置関係を告げなくちゃ辿り着けない夕焼けの駅 堂園昌彦【あなたに固有名詞を与える】堂園さんの短歌のなかの「あなた/君」という呼びかけってとても大切なものだと思うんです。ほかにも堂園さんの短歌から「あなた/君」をめぐる短歌をあげてみると、町中のあらゆるドアが色づきを深めて君を待っているのだ 堂園昌彦あなたは遠い被写体となりざわめきの王子駅へと太陽沈む 〃地図めくる音が聞こえるあなた...
あとがきが風邪を引いている!?
- 2016/03/15
- 21:38

去年の今頃もひどい風邪をひいていたんですが、風邪をひくのは悪いことばかりでもないとおもうんですよ。去年の今頃に高熱でふらふらしながらずっと法橋ひらくさんの歌集『それはとても速くて永い』を持ち歩いて読んでいたんですね。で、風邪を引きながらの読書には歌集がとてもよいんです。いつでも読み終えることができるし、いつでも読書をやりなおすことができる。登場人物や筋立てを覚えるひつようもない。でも、それ以上によ...
【感想】比喩があるからあなたにあえる/ない-比喩と外傷-
- 2016/03/15
- 18:44

ほんとうをひかりでつつむ比喩でしかあなたにちかづくことはできない 兵庫ユカ病む父と母が疲れて眠る家雨の中なににも喩へたくなし 米川千嘉子比喩、花か 花尻万博【比喩と非・比喩】短詩のなかの比喩の質感というものに以前から興味があったんですが、どうも短詩のなかでは比喩というのはそれそのものがマテリアルな〈距離感〉のようにも思えるんですね。たとえば一般的には短詩のなかでどれだけなめらかに比喩を使える...