【ふしぎな川柳 第九十夜】恣意的なおはよう-兵頭全郎-
- 2016/04/28
- 01:13

おはようございます ※個人の感想です 兵頭全郎【意味の法律家】兵頭全郎さんの句集『n≠0』からの一句です。全郎さんの川柳ってすごく難しいなと思っていて、でも私がちょっと思うのは、全郎さんの川柳から川柳論のようなものをたちあげていくと、すごく新しい川柳論ができるんじゃないかなと思ってるんですね。これは直観なんですが。で、なんでそう思うかというと、あんまり他ジャンルの手法が〈もちこみ〉で使えないという...
【感想】ハイ着地大して飛べてなかったな 竹井紫乙
- 2016/04/28
- 00:39

ハイ着地大して飛べてなかったな 竹井紫乙【きょう、ひよこになること】竹井紫乙さんの句集『ひよこ』のいちばん最後におかれた句です。わたしは句集『ひよこ』は大好きなんですが、実はこの「着地」の句だけはあんまり好きではなかったんですよ。これだと『ひよこ』にていのよい物語の終わりがついてしまうきがして。なにか〈終わり〉がついてしまうのがどうなんだろうって思ったんです。でもさいきん読み返していたときに、い...
【感想】あとがきって、なんだろう-シリーズ・なんだろう-
- 2016/04/26
- 23:34
あとがきのように寂しいひつじ雲見上げてきみのそばにいる夏 大森静佳「あとがき」の段々畑まっぴるま 岩田多佳子【あとがき入門】あとがきってなんだろうってときどき考えてるんですね。今まで生きてきてあとがきについて学ぶ機会ってなかったような気がするんです。《教育的》にですよ。あとがきを読んで、じぶんなりにあとがきを学んでいくしかなかったような気がして。きょうから書けるあとがき入門、って本はないんです...
【ふしぎな川柳 第八十九夜】そうだね、クリストファー-魚澄秋来-
- 2016/04/26
- 21:44

クリストファーと名付けたくなる朝がある 魚澄秋来【やってきたクリストファー】これすごくすてきな句だなと思って、以前からずっと考えてたんですね。語り手にとってこの朝っていうのがかけがえのない朝だったんだ、スペシャルな朝だったんだっていうのはひとめでわかる。じゃあどうしてスペシャルだとわかるのか。まず、〈名づけ〉ですよね。名前がつくとカテゴライズされてそれはスペシャルなものになる。どうして特別なもの...
【お知らせ】「フシギな短詩・4月のまとめ」『およそ日刊「俳句新空間」』
- 2016/04/26
- 00:17

4月の「フシギな短詩」の全体的なテーマは期せずして《愛》になったのかなと思いました。《愛》ってじつは俳句にもあらわれていて、でもいろんなかたちをとってあらわれている。しかもそれはそれそのものとしてあらわれるのではなくて、《迂回》するかたちをとってあらわれてくる。そんなことも思いました。俳句では愛は率直にはあらわれないかもしれません。しかし、その迂回する愛をあえて俳句において率直にあらわしたのが佐藤...
【短歌】弾むような…(毎日新聞・毎日歌壇2016年4月25日 米川千嘉子 選)
- 2016/04/25
- 21:27
弾むような受話器なら俺がもっている もしもしと言い合うことは希望 柳本々々 (毎日新聞・毎日歌壇2016年4月25日 米川千嘉子 選)【必要になったら電話をかけて】 プルーストは電話を何よりも、亡霊との交信を意味するものとして描いている。電話において、二人の対話者の間にあるのは空間的な距離だけではない。誰かに、電話をかけるということは、受話器に耳を当てながらまず自分を取り巻く現実を括弧に入れ、次に相...
【感想】自転車でいつも助けてくれた人 竹井紫乙
- 2016/04/25
- 19:14

自転車でいつも助けてくれた人 竹井紫乙【認識(おそれ)と規定(おののき)】俳句ってなんだろうって考えたときに、ひとつの俳句論として、《俳句とは簡潔な認識である》っていうのがあると思うんですね。ただふっと《認識》する。意味付けはしない。ただちらっと、ふっとみたものをそれそのままに提出する。そういう俳句論の流れがあるとおもうんです。認識なので物語にはならないのが俳句です。感情もそこには入ってこない。...
【感想】或いはわたしたちはどんなふうにたった一度きりの鍵を使うのか-短詩の鍵-
- 2016/04/25
- 00:48

おねがいねって渡されているこの鍵をわたしは失くしてしまう気がする 東直子よく眠る人から鍵を渡される ながたまみ長き夜の外から鍵のかかる部屋 喪字男【内側の鍵】鍵をめぐって上から短歌・川柳・俳句と並べてみました。で、このみっつの鍵をめぐる短詩からわかってくるのは、鍵っていうのは決して〈密室〉や〈自閉〉をつくるものではなくて、たえず〈外〉にむかって送り返されていくものなのではないかと思うんです。...
【短歌】プリントを…(東京新聞・東京歌壇2016年4月24日・東直子 選)
- 2016/04/24
- 20:05
プリントをほのぼのまわす風景をきみの明日の基礎にしなさい 柳本々々 (東京新聞・東京歌壇2016年4月24日・東直子 選)【未満(ゼリー)の風景】まなざしはゼリーぢーつとしてゐると 小津夜景ぷろぺらのぷるんぷるんと宵の春 〃要はどう死ぬかなのよねワインゼリー 池田澄子ミルクゼリーコーヒーゼリー君は謎 佐々木貴子そういうきれいな言葉は、自分じゃぜったいに食べないフルーツゼリーみたいなものなんだな...