【川柳連作】「わるいことしよう」(『触光』47号・2016年6月・野沢省悟 選)
- 2016/06/08
- 17:43

わるいことしよう五音や七音で俺じゃなくベッドが病気なんです、と花びらが(少しためらい)落ちる場処感覚がカンボジアからやってくる眼鏡にも味覚があればかけ直す空欄があればツンドラ地帯です三人の直子と共に生活すできたばかりのファミリーマート罪と罰 柳本々々「わるいことしよう」『触光』47号・2016年6月・野沢省悟 選 *おとうとの三割はこうそくどうろ 柳本々々 (第6回 高田寄生木賞・佳作・渡辺...
【短歌】これでもか…(「第99回 短歌ください(お題:キス)穂村弘 選」『ダ・ヴィンチ』2016年7月号)
- 2016/06/06
- 19:39

これでもかというハードなキスをしたあとにふつうの顔で乗る新幹線 柳本々々 (「第99回 短歌ください(お題:キス)穂村弘 選」『ダ・ヴィンチ』2016年7月号)【穂村弘さんから頂いた選評】「ハードなキス」と「新幹線」という組み合わせの妙。そのギャップが衝撃を生んでいる。これが他の乗り物だったら、そこまでの落差はない気がします。例えば、夜行バスとか、むしろぴったり。【性関係は存在しない】レイコさんが用事...
【短歌】枕元に…/いのちなき…(毎日新聞・毎日歌壇2016年6月6日・加藤治郎 選/米川千嘉子 選)
- 2016/06/06
- 08:00

「枕元に立っていたのはむしろ俺のほうだったのか」 まばらな拍手 柳本々々 (毎日新聞・毎日歌壇2016年6月6日・加藤治郎 選)いのちなき砂のかなしさよむぇいむぇいとペンギンの群れる上野動物園 柳本々々 (毎日新聞・毎日歌壇2016年6月6日・米川千嘉子 選)【いきいきと死後】定型が31音で即座に〈終わる〉表現形式である以上、短歌と〈死〉っていうものは関わりが深いんじゃないかと思ってるんですね。短歌はいつ...
【希望の川柳 八日目】言葉の終わりの風景-岩根彰子-
- 2016/06/06
- 00:23

マンホール溢れさせてる疒 岩根彰子 【言葉が言葉を言葉で描く】この岩根さんの句って「疒(やまいだれ)」が「マンホール」を持ち上げるくらいに物質化してると思うんですね。現代川柳ってこの岩根さんの句のようにときどき漢字を〈解体〉してモノにしてしまうところがあると思うんです。そういう表現をするのが川柳なんだと。たとえば、佐藤みさ子さんの川柳に、言葉だけ立ちふさがってくれたのは 佐藤みさ子っていう句が...
【短歌】「おはよう」の…(東京新聞・東京歌壇2016年6月5日・東直子 選)
- 2016/06/05
- 21:08

「おはよう」の意味がぬるっと溶けるくらい一緒に徹夜したんだった 柳本々々 (東京新聞・東京歌壇2016年6月5日・東直子 選)【ぐったりの哲学】徹夜をするとわたしはいつも〈ぐったり〉するんですが、〈無能力〉としてのひとの〈潜勢力〉を考察した『無能力批評』という本を書かれている杉田俊介さんが〈ぐったり〉をめぐってこんなふうに書かれているんです。 ただ、「ぐったり」に、少し違う感触が、ある。そう、「ぐっ...
【感想】落ち着いて驚かないで聞いてくれ実は前から君がすっすす 泳二
- 2016/06/03
- 14:03

落ち着いて驚かないで聞いてくれ実は前から君がすっすす 泳二【わたし大渋滞】これは「落ち着いて驚かないで」いられなかったのが実は「すっすす」と発してしまう語り手の方だったっていうことなんですよね。じぶんがもはや落ち着かず驚いてしまっていたという。でももう一度頭から読んだときに実は「すきです」っていう感情って、落ち着いていても・驚かずにいてもダメなものなんじゃないかって思えてくると思うんです。ほんと...
【希望の川柳 七日目】限りなくゼロに近い希望-兵頭全郎-
- 2016/06/02
- 12:18

風車風見鶏風くるくるくると墜ちていくのが最後尾行から直帰刑事は夜の顔という顔がくるくる遊園地にも足跡のない轍とも堀ともとれる幅に立つとすぐ椅子を持ち去る第二秘書くるくるさっきまでの罠らしく唇として開けてある 兵頭全郎【すべてが(ほぼ)0になる】全郎さんの句集『n≠0』のひとつの特徴を自分なりに考えてみたときにそれは、〈内面〉をいっさい構成させない、っていうことなんじゃないかと思うんです。たとえば...
【お知らせ】はらだ有彩「6月のヤバい女の子/夏服とヤバい女の子」『アパートメント』レビュー
- 2016/06/01
- 23:09

気ままに暮らしているだけで人を傷つけてしまう女の子。出会ってしまったら一巻の終わり。だけど毎年夏のはじめにあなたの瑞々しい影を見ることができないのは、もったいないような気がしてしまうよ はらだ有彩 *ウェブマガジン『アパートメント』の毎月始めに更新されるはらだ有彩(はりー)さんの「日本のヤバい女の子」。連載第13回目の今月のはりーさんの文章は「夏服とヤバい女の子」という『遠野物語』の「山姫」...