【川柳連作】「引き出しの胞子」『おかじょうき』2016年5月
- 2016/07/31
- 05:46

胞子だけ引き出しに集める田中名前から好きになったと握られる 勇気って実はぷりぷりしたゼリー涅槃からこけつまろびつやってくる腹這いでていねいに云うありがとう 柳本々々「引き出しの胞子」『おかじょうき』2016年5月 *【題「粉」・奈良一艘 選・佳作】もうもうときな粉が舞ってレベル・セブン 柳本々々【題「転ぶ」・熊谷冬鼓 選・五客】転落のとちゅうで女だと気づく 柳本々々【題「自由詠」・むさし ...
【お知らせ】シリーズ「あとがきの冒険」『週刊俳句』
- 2016/07/30
- 09:48

「恥ずかしがっている者に向かって おまえ、“恥ずかしくないのか”と 云えるのは鬼だ。(太宰治)。 ですから、どうか、ひとつ。」 金原まさ子「あとがき」『週刊俳句』で「あとがきの冒険」をシリーズで書かせていただくことになりました。「あとがきの冒険」。いったい、なにを言っているのか。毎回、句集や歌集の「あとがき」をひとつずつ取り上げ読んでいくなかで、「あとがき」とはいったいなん...
【お知らせ】「前号評 すべての短歌はじゅもん」『かばん』2016年7月号
- 2016/07/30
- 06:19

さいごまでいけなかったのはじゅもんのせい Sin川柳作家のSinさんに「さいごまでいけなかったのはじゅもんのせい」という句があるんですが、呪文ってなんだろうって考えたときにそれは最後まで意味が汲み尽くせないことなんじゃないかと思うんですよね。だから解釈しても解釈してもそこに〈なにか〉が残る短歌は実は〈呪文〉なんじゃないかと。つまり、すべての短歌は呪文である。ここから今回は始めてみたいと、おもいます...
【短歌連作】「おまえって、猫だね」『かばん』2016年6月号
- 2016/07/30
- 05:54

【詞書】美しき夜たれ猫の鈴外す 松岡瑞枝吾輩にキラキラネームをつけてやる 流星(きらら)、火星(まあず)、光音(らら)、翠輝(さふぁいあ)、猫姫(きてぃ)帰宅したきみは面(おもて)をりんとあげ階段をのぼる ふりふりがない猫的なこころをわたしにくださいなそしたらわたしはあなたをさ/わ(す)れる猫だけが入れる扉のからんころんこの世ですこしかみさまに流行るぬるぬるのシュレディンガーの猫たちが理論上では部...
【希望の川柳 十三日目】マジックリアリズムと写生-大川博幸-
- 2016/07/29
- 12:48

青蛙二匹溶けあうこともなく 大川博幸【不思議なことがない不思議】これ面白いなっておもうのが、語り手が二匹の蛙は溶け合うものだとあらかじめ思ってしまってることです。そういう前提があってこそ、「青蛙二匹溶けあうこともなく」が成立する。語り手が驚いているのは、《溶けあわなかったこと》なんです。溶け合うものだとおもっていたから。でも写生ってじつはそういうものであるようにもおもうんですよ。あらかじめ抱いて...
【川柳連作と散文】「カフカ忌」(『川柳の仲間 旬』206・2016年7月)
- 2016/07/29
- 04:36

かっこいいカフカ走る走る走る音質を変えたいために風邪をひくああこれはかわいい僧侶うれしくて能面を鞄のなかに入れているグリーンのよしだ・よしおが止まらないこの部屋はいつも出口がふたつある手伝ってほしそうな眼のスフィンクスてっぺんを持って歩けるようにするふりだしに立つ頭上からヘリコプターI can't see わたしはあしたカフカです 柳本々々「カフカ忌」(『川柳の仲間 旬』206・2016年7月)カフカの『変身...
脱力かつ努力かつあとがき
- 2016/07/28
- 02:15
どうして大岡信さんは『折々のうた』を28年も続けられたんだろう(1979~2007)とときどきふっと考えるんですが、9年目を迎える『週刊俳句』(2007~)の創刊号のあとがきでさいばら天気さんが「脱力かつ努力」の「心意気」で「とりあえず」は「続けていき」たいと書かれていて、もしかしたらそこらへんに〈秘密〉があるのかもしれないなあと思いました。努力、っていうのはたぶんすぐ思い浮かぶことだとおもうんですよね。続ける...
【感想】3番線快速電車が通過します理解できない人は下がって 中澤系
- 2016/07/27
- 01:45

3番線快速電車が通過します理解できない人は下がって 中澤系僕は、ときどき、自分が乗っている電車が僕をどこか間違った行き先へ連れて行ってしまうんじゃないかと不安に思うことがある。 (福田若之「〔ためしがき〕不安」『ウラハイ』)【3番線でいったいどこに行けるのか】なんでこの歌は1番線や2番線や5番線や6番線を選ばないで「3番線」だったんだろうってときどき思うんですね。なんでだろう。たぶんなんだけれ...
【感想】一人称単数として滝の前 小久保佳世子
- 2016/07/26
- 23:15

一人称単数として滝の前 小久保佳世子【スローな過剰】俳句における〈滝〉っておもしろいんですよね。で、俳句をとおして〈滝〉をみたときおもしろいなと思ったのが、滝がスローになるんですね。俳句においては滝をみることが滝の時間をどんどん微分していくらしい。滝はスローになっていく。〈見ること〉が〈スロー〉にさせる。だから、最終的には、アキレスと亀みたいに滝は〈どんどん落ちることができなくなっていく〉。落ち...