【短歌】やわらかく…(毎日新聞・毎日歌壇2016年8月15日米川千嘉子 選)
- 2016/08/15
- 23:01
夏座敷招かれたかどうか不安 野口る理【夏座敷の不安】この野口さんの句って、「夏座敷」の〈広さ〉からくる不安だと思うんです。〈広場恐怖(アゴラフォビア)〉というか。それは物理的な広さではなくて、心理的な広さだとおもうんです。たとえば親族一同介することになるとか、そういう会食のときに夏座敷が使われたりしますよね。そうるするとときどき自分の身のおきどころがなくて、ひとがめいめいにおしゃべりしている騒々...
【お知らせ】おかじょうき0番線「絞」選句
- 2016/08/14
- 23:30
おかじょうき0番線で選者をさせていただきました。お題は「絞」でした。http://www.okajoki.com/bbs/index.php?mode=article&id=913秀逸1 一度だけ搾乳されたことがある 青森県 まみどり秀逸2 絞られているのか指が赤くなる 愛媛県 吉松澄子秀逸3 雑巾キリリもっと愚かになりなさい 青森県 三浦蒼鬼特選 絞っても絞っても声は大きい 愛知県 稲垣康江いずれ『おかじょうき』に私の選評が掲載されますが、次のよう...
【短歌】つっぷせば…(東京新聞・東京歌壇2016年8月14日・東直子 特選)
- 2016/08/14
- 20:24

つっぷせば床との仲が素晴らしくどんな姿勢にも希望があるよ 柳本々々 (東京新聞・東京歌壇2016年8月14日・東直子 特選) 【東さんから頂いた選評】床につっぷす図は、落ち込んだ心を示す比喩としても使われるが、「床との仲が素晴らしい」と発想の転換を測れば「希望」にもなれる。【前進という前のめり】カフカがこんなことを言っていたんですよ。 僕は自分の知る限り、生きることの必要条件を何ひとつそなえてこな...
勇敢なあとがき
- 2016/08/08
- 15:21
昔、ずっと一緒にいたひとからこの三冊をあなたは読みなさい、きっとためになるからってすすめられた本があって、それがヴォネガットの『猫のゆりかご』とマルケスの『族長の秋』とブローティガンの『アメリカの鱒釣り』だったんですよ。で、それら三冊を読んだときに自分がすごく救われたのは、《文学ってふざけてもいいんだな》ってことだったんです。文学というフィールドでひとは一所懸命にふざけることができる。それはひとつ...
【希望の川柳 十四日目】小池正博と-川合大祐-
- 2016/08/06
- 21:26

青髪の少女は行ってしまったよ 川合大祐【構文とサブカルチャー】川合大祐さんの句集『スロー・リバー』からの一句です。川合さんの句集っていろんなテーマから読める句集になっていると思うんですが、ひとつ、小池正博さんの川柳との共振があるんじゃないかと思うんです。小池正博さんの川柳の特徴のひとつに、助詞「は」から形作られる川柳空間というのがあるんじゃないかと思うんです。たとえば最近の『川柳カード』12号にも...
【お知らせ】川合大祐『句集 スロー・リバー』(あざみエージェント)刊行
- 2016/08/05
- 23:42

刊行された川合大祐さんの句集『スロー・リバー』(あざみエージェント、2016年)の選句作業に参加させていただきました。この句集の第一章は「猫のゆりかご」ですが、これは言うまでもなくヴォネガットのSF小説のタイトルから取られています。ヴォネガットの小説のコンセプトは、《嘘を大切にしよう》というフィクショナルなものへの志向だと思うんですが、川合さんのこの句集も川柳とフィクションとの関係を徹底して考え抜いて...
【お知らせ】はらだ有彩「8月のヤバい女の子/別れとヤバい女の子」『アパートメント』レビュー
- 2016/08/01
- 22:12

私と一緒にいたことであんな時間を持たなければよかったと思わないで。ほんとうはあなたの成功を心から祈っているけれど、これくらいの意地悪はゆるしてほしい。あなたはどのみち自分の意思で箱を開けるだろう。 はらだ有彩レビュー担当をさせていただいているウェブマガジン『アパートメント』の毎月始めに更新されるはらだ有彩(はりー)さんの「日本のヤバい女の子」。連載第15回目の今月のはりーさんの文章は「別れとヤバ...
【短歌】<降ります>の…/話し合い…(毎日新聞 毎日歌壇2016年8月1日 加藤治郎 特選/東京新聞 東京歌壇2016年7月31日 東直子 特選)
- 2016/08/01
- 08:19

<降ります>のボタンをすべて失った世界、素晴らしいバスに乗るふたり 柳本々々 (毎日新聞 毎日歌壇2016年8月1日 加藤治郎 特選)【加藤治郎さんから頂いた選評】かつては<降りますランプ>(穂村弘)に取り囲まれて幸せだった。降りることができない現在を問いかける。話し合いってどうすればいいんだろうレンジにかけるアイスクリーム 柳本々々 (東京新聞 東京歌壇2016年7月31日 東直子 特選)【東直子さんから...
【お知らせ】「フシギな短詩・7月のまとめ」『およそ日刊「俳句新空間」』
- 2016/08/01
- 07:12

7月の「フシギな短詩」をふりかえってみて今月のテーマは「少し外から考えてみる内側のこと」になるのかなあと思いました。少しだけ外にそれること。そのそれた部分からもうちどこちらにかえってくること。でも外にそれるときに、その〈外〉を成立させるためのリアリティがなければならない。そのリアリティの成立のありようが、岡野さんや木下さんの歌、兵頭さんや金原さんの句において問われているとおもいます。ひとはなにをも...