【お知らせ】「フシギな短詩・9月のまとめ」『およそ日刊「俳句新空間」』
- 2016/09/30
- 20:24

今月のテーマをあえて言うなら、《異人》なのかなと少しおもいました。短歌のなかで《異人になること》といってもいいかもしれません。短詩は思いがけない外部につながっている場合がある。そんなことをいま振り返ってみておもいます。どんどんどんどんどんどん中に入っていくと、思いがけないことに外に出ることになるのかもしれません。突き詰めると外に出てしまうこと。不思議の国のアリスから教えてもらった魔法です。【37、...
【お知らせ】「「やうに」の力学-佐藤りえの俳句をめぐる-」『俳句新空間』6・2016夏
- 2016/09/30
- 15:53

冊子版『俳句新空間』6号・2016夏に、「「やうに」の力学-佐藤りえの俳句をめぐる-」を寄稿しました。踊れない方に加わるクリスマス 佐藤りえ佐藤りえさんの連作「雲を飼ふやうに」をめぐって、雲の語り手っていったいどういう語り手なんだろうと視点から書いてみました。細かい境界を移動しながら〈雲のようなまなざし〉で行き来する語り手。「やうに」というやわらかな相対性=複数性によって、踊れないひとも狐も人形も並...
【川柳連作】「いっぱい」『俳句新空間(21世紀俳句選集)』6・2016夏
- 2016/09/30
- 15:44

教室はいなくなるひとでいっぱい真っ白なでんしゃのやわらかい部分少女革命、と最後に口にした啄木真夜中の Moominmamma の m の数おとうとの三割はこうそくどうろ俺がミッフィーだったら有り得ない近代全滅の野原 一通の回文ぱっへるべるかのんと息を吐きなさいわからなくなるサバンナとバナナの差最後までふとんのなかは息でいっぱい 柳本々々「いっぱい」『俳句新空間(21世紀俳句選集)』6・2016夏...
【あとがき】もんじゅ君『3.11で僕らは変わったか』のあとがき
- 2016/09/30
- 15:39
どうか、「変だな」と思うことを「変だね」と口に出すことができて、となりにいる人と「なんでだろうね」と話しあっていけるよのなかでありますように。 もんじゅ君「おわりに」『3.11で僕らは変わったか』...
【詩】「おまえはずっとなにもしてこなかったじゃないか」(新人作品・入選・廿楽順治 選/選外佳作・日和聡子 選)『現代詩手帖』2016年10月号
- 2016/09/29
- 17:50

つぎつぎと猫が傘にあたってはこぼれおちていくのに質量や重力や変化がまるで感じられなかった。私はほとんど倒れそうな姿勢で息をつめてそれをみていた。「なんでしょう、これは」と私がていねいな口調で言うと、「ねこだろうこれは」と女はぶっきらぼうな言葉でしゃべった。よく見れば倒れそうな姿勢というよりは私はもともとそういう体つきの私であった。女は空気のひだからこぼれてくる猫の〈ひとつ〉〈ひとつ〉を上手に傘で整...
【短歌連作】「長い間、私は早くから眠った」『かばん』2016年9月
- 2016/09/28
- 17:46

あんなにも大きい鞄を抱きしめて電車に乗るひと春なんだなあプリントをほのぼのまわす風景をきみの明日の基礎にしなさいサボテンの配置を変えた。背中から抱擁をするやり方もあるきみの日記を読む朝がくるなんて「でも」や「しかし」がきらきらしてる炭酸の泡だけが響くこの部屋でシリアスな話 吐いちゃいそうだゴールデン・レトリバーが飼い主を見失ったときの顔だよねそれフラフープまわしたままで相談を受けてるようでふあんで...
【あとがき】大塚英志『社会をつくれなかったこの国がそれでもソーシャルであるための柳田國男入門』のあとがき
- 2016/09/28
- 13:48
書物から学ぶ、という古い流儀の有効性をぼくは少しも疑っていません。 大塚英志「あとがき」『社会をつくれなかったこの国がそれでもソーシャルであるための柳田國男入門』...
【川柳連作】「俺のオズの国」『おかじょうき』2016年7月号
- 2016/09/27
- 15:40

夏だなあいいたいことがだまになるおじさんのように俳句が立っているおばさんと月は等価と君が云う大尉から大尉へ如雨露手渡されだらだらと馬油(ばーゆ)流れるオズの国 柳本々々「俺のオズの国」 *【題「紙」・奈良一艘 選・佳作】再生紙クシャクシャ死んだように寝る 柳本々々【題「叱る」・きさらぎ彼句吾 選・天位】最後まで寄り添ったのは叱るため 柳本々々【題「自由詠」・むさし 選・佳作/五客】徘徊が...
【あとがき】白川静『初期万葉論』のあとがき
- 2016/09/27
- 06:42
万葉前期の歌の本質がなお呪歌的なものであることを、人麻呂の安騎野冬猟歌によって実証することを試みた。安騎野冬猟歌の歌うところは、継体受霊の秘儀的実修とみるべきものであり、その歌もまたその儀礼実修の方法である。「東の野に炎(かぎろひ)の」一連の歌は、天皇霊の現前とその受霊という、荘厳にして絶対的な祭式的時間を歌うもので、叙景ではない。 白川静「あとがき」『初期万葉論』...
【短歌連作】「眠り」『かばん』2016年8月
- 2016/09/26
- 16:55

【詞書】夜、眠れない時に好きな短歌のことを考えます 安福望理解って地獄なんだときみがいうどういうことかわからず眠る区役所の書類に眠るひとびとの名前に触れた夜のうるささ真夜中にあなたはとなりあなたでもすやすや眠る極悪だけど図書館で『やさしい倒産』を読むひとのわきですやすや眠る少年少しだけ顔のタオルがずれていて眠るふりをするスキルを活かす眠ることを怠けられないんだろうかこんなに律儀におふとんに入り自転...