気まずいあとがき
- 2016/10/17
- 08:15

たとえば世界の片隅でなんの予備知識もないひとりのこども、男子中学生や女子高生でもいいのだけれど、が句に、ただ一句に、文脈もなく出会ったらどうなるんだろう、ということを考えることがある。それが正しいことなのかどうかはわからないけれども。でもそんなふうに考えることがある。どんなに私小説的な事柄でもことばにするときに、そこには言語構成力が入る。出来事をことばとして成立させようとする〈なにか〉がそこに入っ...
【あとがき】永井一郎『朗読のススメ』のあとがき
- 2016/10/17
- 08:14
お釈迦さまは三十五歳で悟りを開きました。体の重さとは、欲です。芸の奥義をめざすといいながら、捨てきれない我執です。 永井一郎「自在に飛ぶーーあとがきにかえて」『朗読のススメ』...
【短歌】本棚の…(東京新聞・東京歌壇・東直子 選・2016年10月19日)
- 2016/10/16
- 17:46

本棚の裏に乾いた濡れティッシュあったよ秋の引越の花 柳本々々 (東京新聞・東京歌壇・東直子 選・2016年10月19日) *子供らが散らかした部屋をぬけ出して何を探そうとしていたのだろう 東直子...
【あとがき】北村想『恋愛的演劇論』のあとがき
- 2016/10/16
- 15:47
嘯いて歩いてきたよ、クラモチくん。そうして、書いてみたんだ、クラモチくん。「うん、まあ、書けてるんじゃないの」とあなたに褒められたくて。 北村想「クラモチくんへ あとがきにかえて」『恋愛的演劇論』...
【お知らせ】跋文「森が、動く」『ステンレスの木』(あざみエージェント、2016年)
- 2016/10/11
- 11:18

エンジンの掛かったままの木が並ぶ 岩田多佳子 (『ステンレスの木』) わたしはこれからある森について語ろうと思う。その森では次々と不思議なことが起こっている。ある主題が浮かび上がるやいなや、その主題が別の主題を呼び込み生成し、さらにその呼び込まれた主題が土壌となって別の主題を生育させていく。そうした主題が連鎖していく〈主題のネットワーク〉としての〈木/林/森の生態系〉を描く...
【あとがき】杉田敦『両義性のポリティーク』のあとがき
- 2016/10/11
- 11:14
政治とは何か、権力は何をもたらすのか、国家の役割は何か、国民とは誰なのかといった諸問題は、一般には改めて問う必要のない自明なものであるかのようにあつかわれている。しかし本書では、それらが根底から見つめ直され、事柄に伴う両義性が強調されたあげく、読者は宙づりのまま放置される。このような本書の立場には、批判もあろう。しかし、どうにも整理がつかないような事態が進行する一方で、政治的な決断主義への希求が強...
蛸や木や星やあとがきや
- 2016/10/10
- 07:42

わたしとそのひとのふたりが呼ばれてここで絵の話をしなさいと言われて絵をめぐる話をしていたんですが、気がつくと呪文と世界の根っこをめぐる話をしていてこういうことってあるんだなあと思いました。たとえば十歳のじぶんがのちに真剣に呪文をめぐる話し合いをすることになるなんて予想できていたかどうか。呪文や世界の根っこや蛸や木や星について話し合いました。キラキラについても。とてもまじめに、ゆっくりと、これまでの...
【あとがき】酒井直樹『死産される日本語・日本人』のあとがき
- 2016/10/10
- 07:39
さまざまな偶然から、ひとは予期しない状況に投げ込まれる。そのような状況で、いかにして歴史的な問いを提示すべきかを考えざるをえない機会が、私には多くあった。歴史的な問いは、社会的現実をその表象の仕方を組み替えることによって変更する分節化につながり、本書に収められた論文は、そのような分節化の試みの軌跡であるといえるかもしれない。人びとが一定の社会的な立場を占めるとき感じる不安や疑問でいまだに規定されて...
【短歌】閻魔蟋蟀…(日経新聞・日経歌壇・穂村弘 選・2016年10月9日)
- 2016/10/09
- 12:22

閻魔蟋蟀閻魔蟋蟀十代はほとんど部屋にいたんじゃないか 柳本々々 (日経新聞・日経歌壇・穂村弘 選・2016年10月9日) *日曜日 車の尻にガソリンのホースを刺せば響くハレルヤ 穂村弘...
【あとがき】内田樹『慨世の遠吠え』のあとがき
- 2016/10/09
- 12:21
吉本隆明がどこかで「自分の拳に担わせることのできないような思想は語るな」と書いていた。 内田樹「おわりに」『慨世の遠吠え』...