【詩】「円盤と生活」(廿楽順治・日和聡子 共選)『現代詩手帖』2017年1月号
- 2016/12/30
- 09:54

朝はまだ仕事の時間ではなかったからわたしはベランダにいる。いつもどおりの円盤が飛び交う空に、すてきな円盤だなあ、とおもうがそれはそのままにして黙っている。わたしたちの生活は空からの催促をとおして行われている。サキさんがある日土のなかに手をうずめながらわたしの名前を呼んでいた。わたしの名前とはぜんぜん違った名前だったがサキさんは真剣だった。頬を赤く染めていた。「台所にはじめて朝がくるのね?」もうから...
プリントをあげたあとがき
- 2016/12/26
- 23:47

厳寒の中、欠席した女の子の家にコッペパンとジャムマーガリンとプリントを届けたことがあるのだが、ほんとうにそこまでしてコッペパンをひとは要るのかな、という気持ちも正直あったと思う。家に行くと這うように女の子が出てきて「ありがとう…」と私にチョコをくれてまた這って奥へと戻っていた。...
【短歌】閻魔蟋蟀…(2016年の秀作・穂村弘 選・日経新聞・日経歌壇2016年12月26日)
- 2016/12/26
- 19:26

閻魔蟋蟀閻魔蟋蟀十代はほとんど部屋にいたんじゃないか 柳本々々 (2016年の秀作・穂村弘 選・日経新聞・日経歌壇2016年12月26日) *夏草に身を沈めれば五寸釘線路に置いて汽車を待つゆめ 穂村弘...
【短歌】ままごとに…(毎日新聞・毎日歌壇2016年12月26日・加藤治郎 選)
- 2016/12/26
- 19:19

ままごとにどうして犬の役割があったのかいまも生きるのが遅い 柳本々々 (毎日新聞・毎日歌壇2016年12月26日・加藤治郎 選) *定型からこぼれ出た文字くろぐろと液化している あなたの前に 加藤治郎...
【短歌】祈るひとが…(毎日新聞・毎日歌壇2016年12月19日・米川千嘉子 特選)
- 2016/12/19
- 14:59

祈るひとがいたクリスマスの神社にも鍵を返せずに辞めた職場にも 柳本々々 (毎日新聞・毎日歌壇2016年12月19日・米川千嘉子 特選) *お手紙ごつこ流行りて毎日お手紙を持ち帰り来る おまへが手紙なのに 米川千嘉子...
【お知らせ】「対談 安福望×柳本々々「絵と短歌とペン」」『かばん 特集〈描く短歌〉』2016年12月号
- 2016/12/18
- 23:13

『かばん 特集〈描く短歌〉』2016年12月号において、安福望さんと「絵と短歌とペン」という対談をさせていただきました(企画内容含めてこの対談はかばん編集人のながや宏高さんが企画くださったものです)。またこの特集チーフも務めさせていただきました。〈絵と短歌〉という決してやさしくはないテーマにご寄稿くださった執筆者のみなさん、ありがとうございました。今、ながや宏高さんにお誘いいただいて今月の『かばん』の特...
【短歌】山盛りの…(東京新聞・東京歌壇2016年12月18日・東直子 選)
- 2016/12/18
- 17:23

山盛りのパフェから莓は崩落しさようならずっと変でいるからね 柳本々々 (東京新聞・東京歌壇2016年12月18日・東直子 選) *どこへいくときもついてきてくれる幻になってもまだあたたかい 東直子...
【あとがき】飯田一史『ウェブ小説の衝撃』のあとがき
- 2016/12/18
- 17:14
読みやすさは慣れの問題であり、利便性に関しては電子書籍の高機能化が進めば、紙を上回るようになる。些末な問題は、テクノロジーが解決する。どのジャンルでもおもしろいものはおもしろいし、つまらないものはつまらない。「おもしろがりかた」を理解するリテラシーがなければ、わからないものも多いけれど。そういう人間が書いた本になった。 飯田一史「あとがき」『ウェブ小説の衝撃』...
【お知らせ】カバー装画(徳田ひろ子句集『青』川柳宮城野社、2016年)
- 2016/12/14
- 11:06

傘開く小さな闇を産むために 徳田ひろ子徳田ひろ子さんの句集『青』(川柳宮城野社、2016年)のカバー装画を描かせていただきました。ひろ子さんは虹の計画をもたれていて、毎年一冊・一色ずつこれから刊行されるそうです。すべての色がそろうと虹ができあがる仕組みになっているわけです。わたしはそれを、虹の前進、と呼ぼうかなと思いました。はしゃぎすぎじゃないか藁人形諸君 徳田ひろ子...