【詩】「炒めるといいかおりのするもの」(廿楽順治 選)『現代詩手帖』2017年2月号
- 2017/01/28
- 16:23

「狼を水族館に置き去りにしてからの日々が、日本ではいまだずっとつづいている」とかれは説明してくれる。それでも水はとてもおいしい。わたしは「おいしいね」と言ってしまう。「おいしいね」なんて言葉はおおきな星にゆきつかないのに。「手をつなぐひとはいつまでも他人の顔をしていると言ったのは、だれだっけ」と言うので、「わからない」と言う。なにも、わからなかった。わたしは十二月の日々を、「おいしい」と「わからな...
【川柳連作】「アンポンタン・ポカン君と亜おじさん」『触光』50号(野沢省悟 選)・2016年12月
- 2017/01/25
- 10:01

追い抜いたその先はすぐ崖である眼鏡ごしにしかみたことのないひと曼珠沙華死なないように生きているなまものだから腐敗する謎野菜からほろほろ洩れる亜おじさんこんな時だがアンポンタン・ポカン君を想うぼくはぼんやりをしようとおもいます洗濯機から逃げているのも洗濯機 柳本々々「アンポンタン・ポカン君と亜おじさん」『触光』50号(野沢省悟 選)・2016年12月 *水際にいつも立ってるあんぽんたん 野沢省...
【短歌連作】「ゆるがんよ」『かばん』2017年1月
- 2017/01/24
- 12:10

ゆるがんよってなんのことかと思ったら揺らがないよということだった浴室を出るとタオルをひろげられ待ちかまえられる猫の生活 柳本々々「ゆるがんよ」『かばん』2017年1月 *【添え書き】アニメのムーミンでね、すごく静かな回があるんですよ。その回がすごく好きで。なんでしずかかっていうと谷が雪におおわれてみんな冬眠してるからなんですよ。だから知らないひとたちが活躍する回なんです。それもいいなと思って...
【川柳連作】「いつもおもてにでられるように」『おかじょうき』2017年1月号
- 2017/01/24
- 12:04

黒板がやわらかくなる先生を呼ぶ八十曲目で落ちるように眠る服を脱ぐいつもおもてにでられるようにさんぜんななひゃくよんじゅうににんと寝真剣なふりだしが勃起している 柳本々々「いつもおもてにでられるように」『おかじょうき』2017年1月号*難破船ばかりで沖へ出られない まみどり...
【川柳】第21回杉野十佐一賞・題「線」-月の光は/頬杖は-
- 2017/01/24
- 12:02

頬杖は線を集めている時間 柳本々々 (広瀬ちえみ 選・秀逸/徳永政二・佐久間裕子 選・佳作)月の光はがんばらないと線になる 柳本々々 (樋口由紀子 選・佳作) *ふかみどりの沈殿物の中に棲む 広瀬ちえみ靴をビニール袋に入れて空を見にゆく 徳永政二毎週金曜 息の発売日 佐久間裕子夜明けまで待ってすべり台から滑る 樋口由紀子...
【川柳】「行火(あんか)を…(題「治す」酒井かがり 選『川柳 北田辺』76号・2017年1月)
- 2017/01/24
- 12:00

「行火(あんか)をもっとこなごなにしたい」を治す 柳本々々 (題「治す」酒井かがり 選『川柳 北田辺』76号・2017年1月) *やがてほこほこは廃ほこほことなる 酒井かがり新月をまさぐったのはムーミンパパの方 くんじろう...
【川柳連作】「霧のおじいさん」『おかじょうき』2016年12月
- 2017/01/23
- 20:48

言葉でしかないものに手を貸している眠るゴリラあなたでなくてはいやなのです跨いでも跨いでも肉のふわふわ夢の浅瀬に国際展示場正門霧のなかさよならをいう霧のおじいさん 柳本々々「霧のおじいさん」『おかじょうき』2016年12月 *【『多』きさらぎ彼句吾 選・佳作】11分あるボブ・ディランの曲 柳本々々【『足す』守田啓子 選・佳作】火星テレポーテーション計画 打ち水をする 柳本々々眠る間際にしずくの...
【短歌連作】「今のペン」『かばん』2016年12月号
- 2017/01/23
- 19:11

閻魔蟋蟀閻魔蟋蟀十代はほとんど部屋にいたんじゃないかいやきみは、思い出の場所なんてもうどうでもいいの歩き方だそれは詩と愛と光と風と暴力ときょうごめん行けないんだの世界シャンプーをしているときに眼を閉じる大事なときも眼を閉じているアダムにもイヴにも俺にもあなたにも。「なにもなかった」と書いた日の日記つっぷせば床との仲が素晴らしくどんな姿勢にも希望があるよヴーーンと冷蔵庫の鳴るタイミング歩き方変よと言...
【川柳】沖縄でも…(題「巣」・岡本遊凪 選・『川柳 北田辺』75号・2016年12月)
- 2017/01/23
- 12:02

沖縄でも北海道でもなかった犬神家の巣 柳本々々 (題「巣」・岡本遊凪 選・『川柳 北田辺』75号・2016年12月) *野晒しのチルチルミチル墓標群 岡本遊凪出血もあるブラジリニアンショー くんじろう...
【川柳連作】「ハローキティ忌」『川柳の仲間 旬』2017年1月号
- 2017/01/23
- 12:01

にゃにゃ、にゃ、にゃにゃとてもシリアスな猫の会議の風船を飛ばす頑強な男たち細胞が面接にゆくと「細胞かあ」と言われる草木国土悉皆成仏キティもそう三十世紀のキティはショッキング・ピンクEver and Never: ぶん殴ろうかと思ったと言われ写真には逃げ場がないじゃないかの「ぴ」タールから引き揚げるぐったりした戦後史筋肉質のキティ遙かなるハロー近代なんてなかったハローキティなんてなかった 柳本々々「ハローキ...