【感想】生きのびるために緑のそばにいる 月波与生
- 2015/10/06
- 20:37
生きのびるために緑のそばにいる 月波与生
【「地球はグリーンだった」】
とても好きな句でよく思い出しているんですが、川柳ってどういうわけか〈生き延びること(サバイバル)〉をときどきテーマにしているようにおもうんです。
それがとても好きなんですが、そういうサバイバル=生き延びてゆくことに関して〈緑〉というものがでてくる。
考えてみると、〈川・柳〉って緑なんですよね。川柳を詠むっていうのは、潜在的にはどこかでずっと緑のまわりをぐるぐるまわっていることになる。
わたしは川柳がすきです、っていうときに、潜在的に、わたしは緑がすきです、というセンテンスがある。
だからこの月波さんの句って、ある意味で、生き延びるためにわたしは川柳を離れない、川柳を詠みつづける、っていうひとつの川柳論にもなっているのかなあとおもうんです。
あともうひとつ。
非常口の緑の人と森へゆく なかはられいこ
なかはられいこさんにこんなピクトさんを詠んだ句があったけれども、いまあらためてかんがえてみるとこれもサバイバルと緑をめぐる句だとおもうんですよね。
わたしたちが生き延びるためにいろんなところに非常口が設けられてはいるんだけれども、じつはそれはほんとはわたしたちの未来の非常口にはならないんだ、わたしたちの世界のほんとの非常口は「森」にあるんだ、非常口が存在しえないような場所にあるんだっていう句なんじゃないかとおもうんですね。
だから月波さんの句からなかはらさんの句を読んでみるとまたちがった位相がみえてくるともおもうんですよ。
キャンベルさんが『緑の文学批評』でこんなふうに述べています。
「理論」は、私が私自身から距離を置き、欲望について「考え」、欲望がいかに形を変えつつもなお形状を保っているかを見、頭で理解しようとする手助けをしてくれる。 キャンベル『緑の文学批評』
この「理論」を「緑」にいいかえて終わりのことばにしてみようとおもいます。
「緑」は、私が私自身から距離を置き、欲望について「考え」、欲望がいかに形を変えつつもなお形状を保っているかを見、頭で理解しようとする手助けをしてくれる。
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