【感想】攝津幸彦と濡れること-或いは攝津幸彦と『ONE PIECE』-
- 2015/10/17
- 00:30
階段を濡らしてひるが来てゐたり 攝津幸彦
野薊の付近に濡れし釘を打つ 〃
荒れし夢濡れし兎を追ひまはす 〃
心中の森 少年軟骨までも濡れ 〃
蟻地獄濡らすは二○三高地 〃
透明なあなたの馬が濡れてくる 〃
【濡れる、ってなんだろう】
攝津幸彦の俳句のなかではいろんなものが濡れているんですよ。
階段が濡れていたり、釘が濡れていたり、兎が濡れていたり、少年の軟骨が濡れていたり、二〇三高地が濡れていたりする。
そもそも虚心にかえって〈濡れる〉ことをかんがえてみた場合、まずなによりも〈いやだ〉ってきもちがでてくるとおもうんですよ。濡れたシャツとか、濡れた本とか、濡れたゆうじんとか、とにかくちょっと〈やだな〉という感じだとおもうんですね。で、この〈やだな〉という質感がけっこう大事なんじゃないかとおもうんです。
〈やだな〉って思うっていうことは、もうその対象にふれる前から、コンタクトする前から、〈巻き込まれている〉ということになります。濡れてるとだいたいさわった質感もわかりますから、そういう質感にさえふれる前から巻き込まれてしまう。
だから〈濡れる〉ってある意味、それをみたもの・読んだものが〈被食〉されてしまうことなんではないかとおもうんですよ。
階段を濡らして昼がきていたら、その昼に語り手も読み手も〈食われて〉しまうわけです。濡れてるので。
濡れるっていうのはそういう主体の輪郭を捕食されて暴力的にあいまいにさせられるようなところがあるのではないかとおもう。
だってたとえば待ち合わせ場所にびしょぬれのゆうじんがきたら、平静ではいられないですよね。俗っぽいみかたをすればそういうことが、攝津さんの〈濡れる俳句〉では起こっているようにおもうんです。
だから、たぶん、濡らすことのポイントは、こうです。
あなたとわたしの扉をおかしくさせよう。
桜の園の扉がをかしくなつてゐる 攝津幸彦
ペンギンプルペイルパイルズの舞台『ワンマン・ショー』から。箱から、人体から、意味もなくあふれ、その場を濡らしていくあおみどりの液体。濡れることは相手を阻害=疎外しながらも巻き込み・取り込んでゆく
たとえば『ONE PIECE』。あえて女性キャラでさえも〈なみだまみれ〉のみならず〈はなみずまみれ〉にし大胆に〈濡らす〉ことによって、〈仲間〉の境界をないまぜにし、強化している
野薊の付近に濡れし釘を打つ 〃
荒れし夢濡れし兎を追ひまはす 〃
心中の森 少年軟骨までも濡れ 〃
蟻地獄濡らすは二○三高地 〃
透明なあなたの馬が濡れてくる 〃
【濡れる、ってなんだろう】
攝津幸彦の俳句のなかではいろんなものが濡れているんですよ。
階段が濡れていたり、釘が濡れていたり、兎が濡れていたり、少年の軟骨が濡れていたり、二〇三高地が濡れていたりする。
そもそも虚心にかえって〈濡れる〉ことをかんがえてみた場合、まずなによりも〈いやだ〉ってきもちがでてくるとおもうんですよ。濡れたシャツとか、濡れた本とか、濡れたゆうじんとか、とにかくちょっと〈やだな〉という感じだとおもうんですね。で、この〈やだな〉という質感がけっこう大事なんじゃないかとおもうんです。
〈やだな〉って思うっていうことは、もうその対象にふれる前から、コンタクトする前から、〈巻き込まれている〉ということになります。濡れてるとだいたいさわった質感もわかりますから、そういう質感にさえふれる前から巻き込まれてしまう。
だから〈濡れる〉ってある意味、それをみたもの・読んだものが〈被食〉されてしまうことなんではないかとおもうんですよ。
階段を濡らして昼がきていたら、その昼に語り手も読み手も〈食われて〉しまうわけです。濡れてるので。
濡れるっていうのはそういう主体の輪郭を捕食されて暴力的にあいまいにさせられるようなところがあるのではないかとおもう。
だってたとえば待ち合わせ場所にびしょぬれのゆうじんがきたら、平静ではいられないですよね。俗っぽいみかたをすればそういうことが、攝津さんの〈濡れる俳句〉では起こっているようにおもうんです。
だから、たぶん、濡らすことのポイントは、こうです。
あなたとわたしの扉をおかしくさせよう。
桜の園の扉がをかしくなつてゐる 攝津幸彦
ペンギンプルペイルパイルズの舞台『ワンマン・ショー』から。箱から、人体から、意味もなくあふれ、その場を濡らしていくあおみどりの液体。濡れることは相手を阻害=疎外しながらも巻き込み・取り込んでゆく
たとえば『ONE PIECE』。あえて女性キャラでさえも〈なみだまみれ〉のみならず〈はなみずまみれ〉にし大胆に〈濡らす〉ことによって、〈仲間〉の境界をないまぜにし、強化している
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