【感想】反論のチャンスを待っている埴輪 石橋芳山
- 2015/10/19
- 01:30
反論のチャンスを待っている埴輪 石橋芳山
【時間と物語】
この芳山さんの句をみたときに思ったのが、定型詩のもっている時間は名詞と動詞のかかわり合いのなかで生み出されるのかな、ということです。
この句には、「埴輪」が出てきますよね。埴輪は3世紀にはつくられていたらしいので、「埴輪」という名詞を〈いま〉使ったときにそこには1500年くらいの時間がいっきに流れる。
でもそれだけだと1500年の時間は固まったままで動かないとおもうんですよね。そうした時間をもった名詞だけでは定型詩のなかに時間をセットできない。
ここで考えてみたいのが「反論のチャンスを待っている」です。これまで1500年の時間を沈黙のままに過ごしてきた「埴輪」ですが、〈まだ〉待つらしい、ということがここからわかる。
「反論のチャンス」がくるのはそれこそ1500年後かもしれないのに、まだ待つという。
つまり、ここには1500年の時間をかかえた埴輪を〈待つ〉という空間におくことによって、さらにはるか未来をもかかえこむという、あたらしい時間がうみだされているんではないかとおもうんです。しかもその時間によって今までただ土人形でしかなかった埴輪が、チャンスをうかがって待っていたんだという1500年の反転も行われるわけです。埴輪は土のなかに眠っていたんじゃない、待っていたんだ、と。
そういう新たな時間の創出は、名詞と動詞のかかわりあいから生まれるんじゃないかっておもうんですよ。
そして、1500年後に、こんな埴輪にも、出会う。
アドレスが変わりましたと埴輪から いわさき楊子
NHKで放送されていた『おーい!はに丸』(1983)。『ONE PIECE』のルフィそっくりの声でしゃべる、歴史上はじめての饒舌かつ多弁な埴輪である。ひんべえという馬(埴輪)を従えているが、「様」をつけて呼ばせるなど階級闘争的要素もそこにはみられた
【時間と物語】
この芳山さんの句をみたときに思ったのが、定型詩のもっている時間は名詞と動詞のかかわり合いのなかで生み出されるのかな、ということです。
この句には、「埴輪」が出てきますよね。埴輪は3世紀にはつくられていたらしいので、「埴輪」という名詞を〈いま〉使ったときにそこには1500年くらいの時間がいっきに流れる。
でもそれだけだと1500年の時間は固まったままで動かないとおもうんですよね。そうした時間をもった名詞だけでは定型詩のなかに時間をセットできない。
ここで考えてみたいのが「反論のチャンスを待っている」です。これまで1500年の時間を沈黙のままに過ごしてきた「埴輪」ですが、〈まだ〉待つらしい、ということがここからわかる。
「反論のチャンス」がくるのはそれこそ1500年後かもしれないのに、まだ待つという。
つまり、ここには1500年の時間をかかえた埴輪を〈待つ〉という空間におくことによって、さらにはるか未来をもかかえこむという、あたらしい時間がうみだされているんではないかとおもうんです。しかもその時間によって今までただ土人形でしかなかった埴輪が、チャンスをうかがって待っていたんだという1500年の反転も行われるわけです。埴輪は土のなかに眠っていたんじゃない、待っていたんだ、と。
そういう新たな時間の創出は、名詞と動詞のかかわりあいから生まれるんじゃないかっておもうんですよ。
そして、1500年後に、こんな埴輪にも、出会う。
アドレスが変わりましたと埴輪から いわさき楊子
NHKで放送されていた『おーい!はに丸』(1983)。『ONE PIECE』のルフィそっくりの声でしゃべる、歴史上はじめての饒舌かつ多弁な埴輪である。ひんべえという馬(埴輪)を従えているが、「様」をつけて呼ばせるなど階級闘争的要素もそこにはみられた
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