【感想】同盟を結びたいなと君のこと考えている 眼と鼻と口 榎田純子
- 2015/10/30
- 12:28
同盟を結びたいなと君のこと考えている 眼と鼻と口 榎田純子
身体の統一性は、いつも潜在的であり、あいまいだが、私が人体を認識する唯一の手段は、みずからそれを生きること、つまり、その人体の閲したドラマを私の方でとらえ直し、その人体と合体することだけである。 メルロ=ポンティ『知覚の現象学』
【あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない】
『かばん』2015年10月号からの一首です。
「同盟」っていう「君」との連帯がおもしろいなっておもいました。恋でもなくて、愛でもなくて、好きでもなくて、友でもなくて。
で、この「結ぶ」っていう動詞が、下の句でも生きているんじゃないかとおもうんですね。
「眼と鼻と口」って「君」の顔のパーツを分解したうえでもういちど語り手はじぶんのなかで「結び」直そうとしているんじゃないかって。語り手のなかでだけみえる、生きられた〈表情〉として。
でも「同盟を結びたいな」だから、あくまでその〈結ぶ〉は未了のままでありつづける。同盟を結べたからといってそこから恋とか友情はせりあがってはこないのかもしれない。
しかも同盟だから、男×女だけでなく、男×男でも、女×女でもいいわけですよ。
そういうあたらしいかたちの相手にたいする感情のあらわしかたがここにはあるんじゃないかなってちょっとおもうんですよ。
語り手がもういちど身体を再構成しなおすみたいに、そういう感情だって短歌定型をとおしてなんどだって再組成しなおしたっていいんだっていうすてきな歌なんじゃないかとおもいます。
湯を沸かし浸かり脱力 夜なのに自分以外の者になれない 榎田純子
キェシロフスキ『デカローグ』(1989)。十戒をめぐる十話のストーリーを通してキェシロフスキは人物たちをなんどもモラルに直面させ、たちどまらせ、モラルを解体し、再組織していく。その解体と構築のプロセスにオーディエンスは〈映画的〉な身体と身体のぶつかりあいとして形而下の問題として向き合っていく。モラルとは形而上的観念と形而下の身体が葛藤しあう場所でもある
身体の統一性は、いつも潜在的であり、あいまいだが、私が人体を認識する唯一の手段は、みずからそれを生きること、つまり、その人体の閲したドラマを私の方でとらえ直し、その人体と合体することだけである。 メルロ=ポンティ『知覚の現象学』
【あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない】
『かばん』2015年10月号からの一首です。
「同盟」っていう「君」との連帯がおもしろいなっておもいました。恋でもなくて、愛でもなくて、好きでもなくて、友でもなくて。
で、この「結ぶ」っていう動詞が、下の句でも生きているんじゃないかとおもうんですね。
「眼と鼻と口」って「君」の顔のパーツを分解したうえでもういちど語り手はじぶんのなかで「結び」直そうとしているんじゃないかって。語り手のなかでだけみえる、生きられた〈表情〉として。
でも「同盟を結びたいな」だから、あくまでその〈結ぶ〉は未了のままでありつづける。同盟を結べたからといってそこから恋とか友情はせりあがってはこないのかもしれない。
しかも同盟だから、男×女だけでなく、男×男でも、女×女でもいいわけですよ。
そういうあたらしいかたちの相手にたいする感情のあらわしかたがここにはあるんじゃないかなってちょっとおもうんですよ。
語り手がもういちど身体を再構成しなおすみたいに、そういう感情だって短歌定型をとおしてなんどだって再組成しなおしたっていいんだっていうすてきな歌なんじゃないかとおもいます。
湯を沸かし浸かり脱力 夜なのに自分以外の者になれない 榎田純子
キェシロフスキ『デカローグ』(1989)。十戒をめぐる十話のストーリーを通してキェシロフスキは人物たちをなんどもモラルに直面させ、たちどまらせ、モラルを解体し、再組織していく。その解体と構築のプロセスにオーディエンスは〈映画的〉な身体と身体のぶつかりあいとして形而下の問題として向き合っていく。モラルとは形而上的観念と形而下の身体が葛藤しあう場所でもある
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