【川柳連作と散文】「2015年の健全忌、或いは第3回川柳カード大会」『川柳の仲間 旬』202号・2015年11月号掲載作
- 2015/11/02
- 12:30
階段をのぼるとそこに亜蘭さん
「あなたは御前田あなたですね」と書いてある進行表
席に着くと大祐さんがしてくださるグッジョブサイン
健全忌ユキオさんと天気さんに会う
芳山さんとうろうろしてる平城京
添乗員と間違われる小池正博さん
広瀬ちえみさんの後ろを歩く大極殿
リズムを取りながら説話するお坊さん
十一面マジンガー観音Z
川合さんと千春さんが私をみているいったい何を言うのかと
柳本々々「2015年の健全忌、或いは第3回川柳カード大会」
川柳のひとたちばかりで平城京の跡地をあるく。すこし気がつくとわたしたち一行の人数はどんどんひとがふえていて、そのほとんどは知らない顔だった。が、そう認識するあいだにもひとはふえつづけていく。なかには小池さんを添乗員だと思っているひともいて、だれかがそう誤認しているうちにもわたしたち一行の人数はふえつづけていた。ときどきLやRの音がきこえた。平城京ではさかんにLやRの発音がなされたらしい。私が適当な嘘を考えているあいだにも、勘違いするひとびとで平城京跡地はごったがえしていく。なかには添乗員を小池さんとかんちがいするひとも、いる。添乗員の数も加速度的に殖えている。
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【イマージュ題「秘密の花園をのぞいてしまいました。そこであなたが見たのは…。」】
わたし(からわたしか(ら殖えてわた(しからわ 柳本々々
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【課題句「皮」】
ここまではのびたんだがと観世音菩薩 柳本々々
シュークリームの皮のない近代 〃
稲川淳二にかぶせてしまう毛皮 〃
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本号で千春さん、樹萄らきさん、川合大祐さんから次の評をいただきました。ありがとうございました!
瀕死の啄木にカロリーメイトを頬張らせる 柳本々々
ここで、「頬張らせる」を使うかと思いました。啄木に栄養のあるものを食べさせたい。ふくふくにしたいと思いました。 千春
だあれだと弥勒菩薩の手ですね 柳本々々
いいねえ、いいねえ、恋人や新婚さんは相手の手の温もりが弥勒菩薩様に感じられる。気をつけなせえよ、そのうちにその手が鬼か般若のかかあ天下になりますぜい。 樹萄らき
2020年にきみの手をけなす 柳本々々
ほら来なすった。けなしたとたん彼女は最終変化、オバタリアンに変わるよ。 樹萄らき
瀕死の啄木にカロリーメイトを頬張らせる 柳本々々
本人に取っちゃぁまことに迷惑極まりないんだろうねぇ。罪なことはやめときな。 樹萄らき
ここまではのびたんがと観世音菩薩 柳本々々
句の中で「皮」とは言っていないんですよね。で、「皮」という題がなければ、皮のことなのかどうか、わからない。その辺の依存関係が、単なるもたれ合いではない、スリリングなせめぎ合いを見せていて、面白かったのです。 川合大祐
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レズビアン実加子の眠る寺で呑む 千春
キツネ手でこぶしを挙げろ仲間だろ 樹萄らき
上等じゃねーか土砂降りから入る 〃
朝焼けを一皮むいて鶴を折る 〃
霧が晴れそうして象をやめるとき 川合大祐
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