【ふしぎな川柳 第四夜】ゴリラゴリラゴリ-普川素床-
- 2015/11/04
- 00:00
少女すこやかゴリラのような詩を書いて 普川素床
春は河馬(かば)秋はゴリラでいいじゃない きりのきりこ
ちょっと目をはなすと増えているゴリラ ひとり静
【現代川柳とゴリラ】
以前からちょっと川柳のなかのゴリラが気になっていてですね、で、あとで引用しようと思うんですが、俳句や短歌、詩にもゴリラはいろいろなかたちで出てくるんですね。
で、ですね、ゴリラってなんなのか、ってことだとおもうんです。
たとえば素床さんの句やひとりさんの句をみると、〈ゴリラ〉っていうのは〈奔放なふきあれるエネルギー〉として表象されているのがわかる。
「少女」は「すこやか」だから「ゴリラのような詩」を書くし、「目をはな」したすきに節操もなく「ゴリラ」が「増えてい」たりする。わたしたちのコードや制御をこえる力のようなものをゴリラはもっている。言語や理性や公式を超えるなにかを。
だから、きりこさんの「秋はゴリラでいいじゃない」っていうのは「いいじゃない」と突き放してみせたように「秋」のイメージの反転だとおもうんですよ。秋ってさびしさとしてとらえられたりもしますが、そうではなくてむしろ〈過剰性〉の秋としてとらえかえす。この句でゴリラ的なのは、「ゴリラ」という言葉よりもむしろ「いいじゃない」という下五の突き放し方にあるとおもうんですね。突き放してしまう。
ゴリラってそういう過剰性や余剰性としてあるんじゃないかとおもうんですよ。
それではさいごに短詩型ゴリラミニアンソロジーでお別れしましょう。みなさんもすてきなゴリラを(←よくわからない)。
土管のなかをのぞいて待っていた 遂にゴリラが入ってきた 藤富保男
少年は眠り少女は起きていてゴリラのからだ青色に塗る 東直子
嵐の前ゴリラと歩調合わせけり 宮崎斗士
牡丹見てそれからゴリラ見て帰る 鳴戸奈菜
ゴリラらのあぐらくずれる大暑かな 小沢信男
ヘルツォーク『ノスフェラトゥ』(1979)。ヘルツォークといえば、怪優クラウス・キンスキーだが、この『ノスフェラトゥ』という吸血鬼映画も、吸血鬼がこわいというよりは、吸血鬼になろうとしても吸血鬼よりまさったこわさをもつキンスキー自身がこわい。ノスフェラトゥというよりはキンスキーなのである。つまり、キンスキーはゴリラのように余剰性や過剰性をもった俳優だったといえる。アマゾンよりもアマゾン的だったのだ、キンスキーは。
春は河馬(かば)秋はゴリラでいいじゃない きりのきりこ
ちょっと目をはなすと増えているゴリラ ひとり静
【現代川柳とゴリラ】
以前からちょっと川柳のなかのゴリラが気になっていてですね、で、あとで引用しようと思うんですが、俳句や短歌、詩にもゴリラはいろいろなかたちで出てくるんですね。
で、ですね、ゴリラってなんなのか、ってことだとおもうんです。
たとえば素床さんの句やひとりさんの句をみると、〈ゴリラ〉っていうのは〈奔放なふきあれるエネルギー〉として表象されているのがわかる。
「少女」は「すこやか」だから「ゴリラのような詩」を書くし、「目をはな」したすきに節操もなく「ゴリラ」が「増えてい」たりする。わたしたちのコードや制御をこえる力のようなものをゴリラはもっている。言語や理性や公式を超えるなにかを。
だから、きりこさんの「秋はゴリラでいいじゃない」っていうのは「いいじゃない」と突き放してみせたように「秋」のイメージの反転だとおもうんですよ。秋ってさびしさとしてとらえられたりもしますが、そうではなくてむしろ〈過剰性〉の秋としてとらえかえす。この句でゴリラ的なのは、「ゴリラ」という言葉よりもむしろ「いいじゃない」という下五の突き放し方にあるとおもうんですね。突き放してしまう。
ゴリラってそういう過剰性や余剰性としてあるんじゃないかとおもうんですよ。
それではさいごに短詩型ゴリラミニアンソロジーでお別れしましょう。みなさんもすてきなゴリラを(←よくわからない)。
土管のなかをのぞいて待っていた 遂にゴリラが入ってきた 藤富保男
少年は眠り少女は起きていてゴリラのからだ青色に塗る 東直子
嵐の前ゴリラと歩調合わせけり 宮崎斗士
牡丹見てそれからゴリラ見て帰る 鳴戸奈菜
ゴリラらのあぐらくずれる大暑かな 小沢信男
ヘルツォーク『ノスフェラトゥ』(1979)。ヘルツォークといえば、怪優クラウス・キンスキーだが、この『ノスフェラトゥ』という吸血鬼映画も、吸血鬼がこわいというよりは、吸血鬼になろうとしても吸血鬼よりまさったこわさをもつキンスキー自身がこわい。ノスフェラトゥというよりはキンスキーなのである。つまり、キンスキーはゴリラのように余剰性や過剰性をもった俳優だったといえる。アマゾンよりもアマゾン的だったのだ、キンスキーは。
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