【ふしぎな川柳 第五夜】私に満ちたからっぽの部屋-安藤なみ-
- 2015/11/04
- 12:30
空っぽの部屋に私を撒きちらす 安藤なみ
花冷えのどこまでが鳥どこからが顔 小池正博
とがってるとこが一番かなしいの ひとり静
ここからは有料ですが生きますか ひとは
【どこを/どこから語るのか】
現代川柳がずっと行っていることに〈場所の画定=確定〉というものがあるとおもうんですね。
いままでなかったような〈場所〉をつくること、もしくはだいたいみんなが知ってはいて行ってもいるんだけれど、でも〈ことば〉にはしてこなかった〈場所〉、そういうものを現代川柳はせっせとことばにしているようにおもうんです。
たとえば上の句には「空っぽの部屋」「どこまでが鳥どこからが顔」「とがってるとこ」「ここからは」とそれぞれの〈場所〉があらわれている。
で、もちろん語り手はめいめいの〈場所〉にあらかじめ立っているからそれぞれに〈場所〉を語る文体が変わってきます。
安藤さんなら「私を撒きちらす」という〈私的〉なことをクールに中性的に描いているし、小池さんなら迷宮風に、修辞的=文学的に「どこまでが~どこからが~」と構文的に叙述している。ひとりさんやひとはさんは、〈あなた〉に話しかけるように口語文体を採用しています。もうわたしとあなたの〈場所〉はあるうえでさらにそこに〈場所〉を構築しようとしているのです。
ですから、ことばであらたに場所を創出するときにも、大事なことは、それを〈どこ〉からいったい語るのか、ということにもなってくるんだとおもうんです。
〈どんな場所〉を〈どんな場所〉から語るのか。この二重のクロスのなかで〈場所〉があみだされていくのです。
いつまでも見てる紀貫之の顔の真ん中 須藤しんのすけ
アガサ・クリスティ『ミス・マープル』(ジョーン・ヒクソン版)。事件を解決するというのは〈ことば〉にすることにほかならない。だから、ミス・マープルのように年をかさねていても事件を解決することができる。それは〈ことば〉を重ねることで〈場所〉を再構築することだから。その意味でカオス(混沌)をロゴス(言葉=理性)によって整理しなおしていく推理小説は近代的な表現形態だし、どうしてホームズには植民地からやってきた人間が混乱や事件をつねにもたらすのかもその近代的な形態(植民地を合理化していく)がもたらしているともいえる
花冷えのどこまでが鳥どこからが顔 小池正博
とがってるとこが一番かなしいの ひとり静
ここからは有料ですが生きますか ひとは
【どこを/どこから語るのか】
現代川柳がずっと行っていることに〈場所の画定=確定〉というものがあるとおもうんですね。
いままでなかったような〈場所〉をつくること、もしくはだいたいみんなが知ってはいて行ってもいるんだけれど、でも〈ことば〉にはしてこなかった〈場所〉、そういうものを現代川柳はせっせとことばにしているようにおもうんです。
たとえば上の句には「空っぽの部屋」「どこまでが鳥どこからが顔」「とがってるとこ」「ここからは」とそれぞれの〈場所〉があらわれている。
で、もちろん語り手はめいめいの〈場所〉にあらかじめ立っているからそれぞれに〈場所〉を語る文体が変わってきます。
安藤さんなら「私を撒きちらす」という〈私的〉なことをクールに中性的に描いているし、小池さんなら迷宮風に、修辞的=文学的に「どこまでが~どこからが~」と構文的に叙述している。ひとりさんやひとはさんは、〈あなた〉に話しかけるように口語文体を採用しています。もうわたしとあなたの〈場所〉はあるうえでさらにそこに〈場所〉を構築しようとしているのです。
ですから、ことばであらたに場所を創出するときにも、大事なことは、それを〈どこ〉からいったい語るのか、ということにもなってくるんだとおもうんです。
〈どんな場所〉を〈どんな場所〉から語るのか。この二重のクロスのなかで〈場所〉があみだされていくのです。
いつまでも見てる紀貫之の顔の真ん中 須藤しんのすけ
アガサ・クリスティ『ミス・マープル』(ジョーン・ヒクソン版)。事件を解決するというのは〈ことば〉にすることにほかならない。だから、ミス・マープルのように年をかさねていても事件を解決することができる。それは〈ことば〉を重ねることで〈場所〉を再構築することだから。その意味でカオス(混沌)をロゴス(言葉=理性)によって整理しなおしていく推理小説は近代的な表現形態だし、どうしてホームズには植民地からやってきた人間が混乱や事件をつねにもたらすのかもその近代的な形態(植民地を合理化していく)がもたらしているともいえる
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