【感想】フェリーニの大田区秋鯖買う夫人 近藤十四郎
- 2015/11/21
- 06:10
フェリーニの大田区秋鯖買う夫人 近藤十四郎
【フェリーニの枕草子】
じぶんにとってフェリーニ映画ってなによりも〈いかがわしさ〉、手間をかけた〈いんちき〉にあると思っているんですね。
で、これはルカーチの虚偽意識に近いのかなあってちょっとおもうんですが、それがいんちきだとわかってるしいかがわしいとも自覚しているけれど、でもそれをやってしまうそのなかにいるんだというようなそういう〈虚偽意識〉への駆り立てをいつもフェリーニ映画はとても愉しんでやっているようにおもうんですよ。
だからこの俳句をみたときに、もしかしたら世界の事物は虚偽意識のもとではすべて「フェリーニの」っていうふうに冠詞をつけることができるのかなっておもったんです。つまり、世界を〈インチキ化〉していくフェリーニ冠詞です。
そういえばフェリーニの映画って、『フェリーニのローマ』とか『フェリーニの道化師』『フェリーニのカサノバ』みたいに冠詞をつけた映画が多いんですよ。
そのときに思うのが、フェリーニ映画にとってはなによりも「フェリーニの」という冠詞それじたいが〈うさんくさい〉ものとしてある。「フェリーニの」といったしゅんかん、フェリーニじしんも〈うさんくさい〉世界の事物になってしまう。
けれどその〈いかがわしさ〉をそれはそれでいい、映画っていうのはそういうもんだから、という意識で引き受けていたのがフェリーニ映画のような気がするんです。
だから、わたしはこの句のおもしろさって、「フェリーニの」といういかがわしい冠詞の作法をみつけたことにあるような気がする。それは、フェリーニの俳句でも、フェリーニの霞ヶ関でも、フェリーニの古事記でもいいわけです。
嘔吐もしわれゴミでない何かなら 小津夜景
フェリーニ『カサノバ』(1976)。この映画ではセックスが〈機械仕掛け〉として表現されるんですが(リズミカルに腰を動かすことと鳩時計が同列に語られる)、フェリーニにとってはセックスの仕組みそのものもインチキ化してしまうというか、いかがわしくなるんですね。最終的にカサノバは機械人形に恋をするんだけれども、そこにおいては恋愛もいかがわしさの距離感として語られている。で、そもそも映画っていかがわしんだよ、でもそれがすごく愉快じゃん、っていうことを言い続けていたのがフェリーニのようにおもうんです。
【フェリーニの枕草子】
じぶんにとってフェリーニ映画ってなによりも〈いかがわしさ〉、手間をかけた〈いんちき〉にあると思っているんですね。
で、これはルカーチの虚偽意識に近いのかなあってちょっとおもうんですが、それがいんちきだとわかってるしいかがわしいとも自覚しているけれど、でもそれをやってしまうそのなかにいるんだというようなそういう〈虚偽意識〉への駆り立てをいつもフェリーニ映画はとても愉しんでやっているようにおもうんですよ。
だからこの俳句をみたときに、もしかしたら世界の事物は虚偽意識のもとではすべて「フェリーニの」っていうふうに冠詞をつけることができるのかなっておもったんです。つまり、世界を〈インチキ化〉していくフェリーニ冠詞です。
そういえばフェリーニの映画って、『フェリーニのローマ』とか『フェリーニの道化師』『フェリーニのカサノバ』みたいに冠詞をつけた映画が多いんですよ。
そのときに思うのが、フェリーニ映画にとってはなによりも「フェリーニの」という冠詞それじたいが〈うさんくさい〉ものとしてある。「フェリーニの」といったしゅんかん、フェリーニじしんも〈うさんくさい〉世界の事物になってしまう。
けれどその〈いかがわしさ〉をそれはそれでいい、映画っていうのはそういうもんだから、という意識で引き受けていたのがフェリーニ映画のような気がするんです。
だから、わたしはこの句のおもしろさって、「フェリーニの」といういかがわしい冠詞の作法をみつけたことにあるような気がする。それは、フェリーニの俳句でも、フェリーニの霞ヶ関でも、フェリーニの古事記でもいいわけです。
嘔吐もしわれゴミでない何かなら 小津夜景
フェリーニ『カサノバ』(1976)。この映画ではセックスが〈機械仕掛け〉として表現されるんですが(リズミカルに腰を動かすことと鳩時計が同列に語られる)、フェリーニにとってはセックスの仕組みそのものもインチキ化してしまうというか、いかがわしくなるんですね。最終的にカサノバは機械人形に恋をするんだけれども、そこにおいては恋愛もいかがわしさの距離感として語られている。で、そもそも映画っていかがわしんだよ、でもそれがすごく愉快じゃん、っていうことを言い続けていたのがフェリーニのようにおもうんです。
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