【感想】カメムシが2n+1いるとする 小倉喜郎
- 2015/12/01
- 17:35
カメムシが2n+1いるとする 小倉喜郎
【俳句と任意】
「~いるとする」っていう構文はよく算数や数学で使われる構文だとおもうんですよ。以前、塾で働いていたのでわたしもよく使いました。
で、じつはそういうふうに、構文や文の組立(シンタクス)っていうのは〈場〉によってけっこう変わってきたりする。
たとえば、算数や数学の問題にあたっているときに、「2n+1いるとする」という構文は違和感がないけれど(算数〈場〉では違和感がない)、日常会話や俳句としては違和感がでる場合がある(俳句〈場〉では違和感がある)。
けれども、裏返してみれば、言語っていうのはそういう語り手がどういう〈場〉に所属しているか、またはどういう〈場〉と〈場〉を接合させたり、葛藤させたりしようとしているのか、といった問題でしかないようにもおもうんです。
たとえば、「2n+1いるとする」が、短歌〈場〉ではどうだろう、川柳〈場〉ではどうだろう、短詩〈場〉ではどうだろう、といろいろと問題圏がすりあわせられてくる。
だからこの句のなかの「n」は任意の数だけれども、ことばもまた〈任意〉でありながらそのことばがコンタクトしようとしている〈場〉によっていろいろその任意の許容範囲がわかれてくる。
「いるとする」と仮定した場合に、その仮定をどう受け取られるかがいつも短詩には賭けられているようにおもうんです。
〈だれ〉が語るのか、ではなくて、〈どこ〉にむかって語られているのか、という問題。
沼の近くで坊主めくりをした記憶 小倉喜郎
ウディ・アレン『カメレオンマン』(1983)。歴史上のどんな人物にもなってしまう男の話なんだけれども、ウディ・アレンっていつもそんなふうに〈任意〉の主体を描いてるとおもうんですね。彼の映画が精神分析と親和性が高いのは、たぶん、主体Sに斜線が入って〈任意の主体〉にしかなれないからだとおもうんですよ。だから、精神分が描かれるから精神分析的なのではなくて、そもそもが精神分析的だから精神分析に親和性をみいだしてしまうということになってるとおもうんですよ。でもそのなかで、たとえば文化的にはハイクラスだったり、ロークラスがほとんど出てこなかったり、〈黒人〉がほとんど不在だったり、〈田舎〉が描かれないといい〈場〉の〈偏差〉もある。それもまた〈回避〉として精神分析的〈的〉だとおもうんですよ。
【俳句と任意】
「~いるとする」っていう構文はよく算数や数学で使われる構文だとおもうんですよ。以前、塾で働いていたのでわたしもよく使いました。
で、じつはそういうふうに、構文や文の組立(シンタクス)っていうのは〈場〉によってけっこう変わってきたりする。
たとえば、算数や数学の問題にあたっているときに、「2n+1いるとする」という構文は違和感がないけれど(算数〈場〉では違和感がない)、日常会話や俳句としては違和感がでる場合がある(俳句〈場〉では違和感がある)。
けれども、裏返してみれば、言語っていうのはそういう語り手がどういう〈場〉に所属しているか、またはどういう〈場〉と〈場〉を接合させたり、葛藤させたりしようとしているのか、といった問題でしかないようにもおもうんです。
たとえば、「2n+1いるとする」が、短歌〈場〉ではどうだろう、川柳〈場〉ではどうだろう、短詩〈場〉ではどうだろう、といろいろと問題圏がすりあわせられてくる。
だからこの句のなかの「n」は任意の数だけれども、ことばもまた〈任意〉でありながらそのことばがコンタクトしようとしている〈場〉によっていろいろその任意の許容範囲がわかれてくる。
「いるとする」と仮定した場合に、その仮定をどう受け取られるかがいつも短詩には賭けられているようにおもうんです。
〈だれ〉が語るのか、ではなくて、〈どこ〉にむかって語られているのか、という問題。
沼の近くで坊主めくりをした記憶 小倉喜郎
ウディ・アレン『カメレオンマン』(1983)。歴史上のどんな人物にもなってしまう男の話なんだけれども、ウディ・アレンっていつもそんなふうに〈任意〉の主体を描いてるとおもうんですね。彼の映画が精神分析と親和性が高いのは、たぶん、主体Sに斜線が入って〈任意の主体〉にしかなれないからだとおもうんですよ。だから、精神分が描かれるから精神分析的なのではなくて、そもそもが精神分析的だから精神分析に親和性をみいだしてしまうということになってるとおもうんですよ。でもそのなかで、たとえば文化的にはハイクラスだったり、ロークラスがほとんど出てこなかったり、〈黒人〉がほとんど不在だったり、〈田舎〉が描かれないといい〈場〉の〈偏差〉もある。それもまた〈回避〉として精神分析的〈的〉だとおもうんですよ。
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