【お知らせ】「わたしがあなたを好きな五つの理由―或いはヴァルター・ベンヤミンと竹井紫乙―」『川柳 杜人』248号・2015冬
- 2015/12/27
- 00:23
君が好き青や緑も好きになる 竹井紫乙
(『句集 ひよこ』編集工房円、2005年)
このときのような街路を、ぼくは二度と見たことがない。家という家の戸口は炎を噴き、街角の石という石は火花を発し、路面電車はどれも消防車のように走ってきた。だってかの女は、どの戸口から、どの街角から現れるか知れなかったし、どの電車に乗っているか知れなかったのだから。
(ヴァルター・ベンヤミン『暴力批判論 他十篇 ベンヤミンの仕事1』岩波文庫、1994年)
自分の孤独が、いまや少なくとも二人連れの孤独なんだ
(ニーチェ、古田島伸知訳「書簡」)
『杜人』の特集「川柳はお好きですか?-ジャンルを行き交う人々-」にお話をしていただいて「わたしがあなたを好きな五つの理由―或いはヴァルター・ベンヤミンと竹井紫乙―」という文章を書かせていただきました。
竹井紫乙さんの句集とベンヤミンの書物を基点にしながら、じぶんが川柳を好きな五つの理由を書いてみました。
1、あなたはわたしに世界を始める名前を教えてくれるから好き
2、あなたはわたしに希望をくれるから好き
3、あなたは滅びながらも生き生きしているから好き
4、あなたはわたしをすっぱぬいてくれるから好き
5、あなたはわたしにいつも最後を思い出せてくれるから好き
この五本の柱に沿って、しおとさんとベンヤミンの言葉を合わせながら話をすすめてみました。
もしお手にとる機会がありましたらお読みくださればさいわいです。
この特集には私のほかに飯島章友さんや水本石華さんも書かれていて、それぞれの立場から〈川柳〉と〈好き〉をめぐる論旨を展開されています。
正直いうと、…「川柳なんて定型を利用したダジャレだろ?」くらいに思っていたんだなぁ。ところが、二人(なかはられいこさんと倉富洋子さん)の川柳は違っていた。「これは十七音の短歌だ」と直感したね。落差が大きかったぶん驚きもハンパなくて、それでまあ、作句するかしないかはともかく、川柳って文芸を知りたくなったわけだ。 飯島章友「短歌人格 vs 川柳人格」『杜人』248号
「詠まれたものの向こう側に立つことを願う俳句」、「詠まれたもののこちら側に立つことを願う川柳」ではあっても、作者のこの立ち位置は、固定したものではありませんし、俳句と川柳はこの立ち位置を交替することさえあります。 水本石華「川柳の彼岸と此岸」同上
生きるということは表象することだ。が、川柳(あなた)がいるおかげでわたしはなんども一回かぎりのこの生をたえず〈おなじふうな・ちがったかたち〉でやり直すことが、できる。
そうなのだ。わたしにとって川柳は、いつも世界を左利き化するものとしてある。すなわち、〈この奥にまだ世界があるんです〉ということをおどろきとおののきとともに、教えてくれるのだ。 柳本々々「わたしがあなたを好きな理由」同上
もう一つ世界を増やす準備する 竹井紫乙
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