【ふしぎな川柳 第五十夜】ちょっとした崩壊-本多洋子-
- 2015/12/27
- 11:39
裂け目から春を覗きに行ったきり 本多洋子
詩人の危険にみちた旅は原型の発見とその再発見であり、同時に彼自身の原型への戦いという形をとるように思われてなりません。 田村隆一「地図のない旅」
【崩壊はもう始まっている】
現代川柳によくあらわれるシーンが〈ちょっとした崩壊〉なのではないかと思うんですよ。
たとえば、
少女消えパンの増殖始まれり 倉本朝世
という句があるんですが、「少女消え」という崩壊という「パンの増殖」という新しい世界の置換がこの句には詠まれていると思うんですね。
本多さんの句はそうした新しい世界への萌しさえもがない句です。
「行ったきり」で終わっているんですが、「きり」っていう副助詞はその後に打ち消し「ない」を伴う限度・限界の副助詞なので、この句にはこの後に〈大きな否定〉が待ちかまえている句だとも言えます。
つまり、「春を覗きに行ったきり」帰ってこない、とか「春を覗きに行ったきり」会っていない、とか、もうひとつの語り手にとっての〈裂け目〉がやってくるわけです。
こんなふうに〈裂け目〉としてのちょっとした崩壊から始まっているのが川柳なんではないかと思うんです。映画の『マッドマックス2』が荒廃した世界から始まってますが(そしてその崩壊感はコードを無視した〈髪型〉にあらわれていますが)、川柳ってちょっとマッドマックスにちかいところもあるんじゃないかとおもうんですよ。
空の破片を満身に浴びあざみ咲く 倉本朝世
ミラー『マッドマックス2』(1981)。崩壊や世紀末感ってなににあらわれるのかというと〈髪型〉なんじゃないかと思うんですよ。たとえば、リュック・ベッソンでもいいし、デビッド・リンチの『イレイザーヘッド』でも、マンガ『北斗の拳』でもいいと思うんですが、髪型がふつうのコードを無視しているとそれだけでこの世界は崩壊しているんだなということがわかる。で、メル・ギブソンにいつも抱いていた不安って、どうしてジャンボ尾崎のような上はかりあげでえりあしだけ伸ばすみたいなことをしているんだろうという不安というか〈裂け目〉に近かったようなきがするんですよ。
詩人の危険にみちた旅は原型の発見とその再発見であり、同時に彼自身の原型への戦いという形をとるように思われてなりません。 田村隆一「地図のない旅」
【崩壊はもう始まっている】
現代川柳によくあらわれるシーンが〈ちょっとした崩壊〉なのではないかと思うんですよ。
たとえば、
少女消えパンの増殖始まれり 倉本朝世
という句があるんですが、「少女消え」という崩壊という「パンの増殖」という新しい世界の置換がこの句には詠まれていると思うんですね。
本多さんの句はそうした新しい世界への萌しさえもがない句です。
「行ったきり」で終わっているんですが、「きり」っていう副助詞はその後に打ち消し「ない」を伴う限度・限界の副助詞なので、この句にはこの後に〈大きな否定〉が待ちかまえている句だとも言えます。
つまり、「春を覗きに行ったきり」帰ってこない、とか「春を覗きに行ったきり」会っていない、とか、もうひとつの語り手にとっての〈裂け目〉がやってくるわけです。
こんなふうに〈裂け目〉としてのちょっとした崩壊から始まっているのが川柳なんではないかと思うんです。映画の『マッドマックス2』が荒廃した世界から始まってますが(そしてその崩壊感はコードを無視した〈髪型〉にあらわれていますが)、川柳ってちょっとマッドマックスにちかいところもあるんじゃないかとおもうんですよ。
空の破片を満身に浴びあざみ咲く 倉本朝世
ミラー『マッドマックス2』(1981)。崩壊や世紀末感ってなににあらわれるのかというと〈髪型〉なんじゃないかと思うんですよ。たとえば、リュック・ベッソンでもいいし、デビッド・リンチの『イレイザーヘッド』でも、マンガ『北斗の拳』でもいいと思うんですが、髪型がふつうのコードを無視しているとそれだけでこの世界は崩壊しているんだなということがわかる。で、メル・ギブソンにいつも抱いていた不安って、どうしてジャンボ尾崎のような上はかりあげでえりあしだけ伸ばすみたいなことをしているんだろうという不安というか〈裂け目〉に近かったようなきがするんですよ。
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