【短歌】朝礼の…(日経新聞・日経歌壇・2016年1月24日・穂村弘 選)
- 2016/01/24
- 18:28
うずく、まるわたしはあらゆるまるになる月のひかりの信号機前 中家菜津子
【うずくまる再考】
この中家さんの〈うずくまる〉を歌を読むときに、今までわたしは〈うずく、まる〉の方ばかりに重心を取って読んでいたんだけれど、「信号機前」で最後が終わっているのがさいきん気になるんですよね。そこに重心をとって読み直してみると、どう、なるか。
「信号機」って休止とか停滞を引き起こすための装置ですよね。もし「わたし」が「信号機前」で「うずく、ま」っているならば、それは「信号機」によってもたらされた〈休止〉とか〈停滞〉なんじゃないかと思うんです。つまり、〈うずくまる〉って行為は〈休止〉とか〈停滞〉に近いアクションなんじゃないかと思うんですよ。
でも、です。
信号機ってもうひとつ重要な役割があって、〈前進〉を合図するのもまた信号機なんですよね。
つまり、いまはうずくまって停滞しているけれど、それはこれから前進するための〈停滞〉かもしれないということです。その意味で、この〈うずくまる〉には休止のアクションのほかに、もうひとつ、〈前進の予期〉も含まれていると思うんですよ。つまり、後ろに跳躍する海老のように全身をまるめることによってこれからそれをバネにして前進する。
そうすると信号機ってそういう〈サスペンション〉の場所なのかなあっておもうんですよね。
〈うずく、まる〉行為には、これまでの時間とこれからの時間がどうじに円環として込められている。
じゃあ、これまでの時間をかかえて・これから、どこに、ゆくのか。
どこ、なんだろう。
朝礼のさなかにそのままうずくまるかのじょを連れて(どこにゆけばいい?) 柳本々々
(日経新聞・日経歌壇・2016年1月24日・穂村弘 選)
【うずくまる再考】
この中家さんの〈うずくまる〉を歌を読むときに、今までわたしは〈うずく、まる〉の方ばかりに重心を取って読んでいたんだけれど、「信号機前」で最後が終わっているのがさいきん気になるんですよね。そこに重心をとって読み直してみると、どう、なるか。
「信号機」って休止とか停滞を引き起こすための装置ですよね。もし「わたし」が「信号機前」で「うずく、ま」っているならば、それは「信号機」によってもたらされた〈休止〉とか〈停滞〉なんじゃないかと思うんです。つまり、〈うずくまる〉って行為は〈休止〉とか〈停滞〉に近いアクションなんじゃないかと思うんですよ。
でも、です。
信号機ってもうひとつ重要な役割があって、〈前進〉を合図するのもまた信号機なんですよね。
つまり、いまはうずくまって停滞しているけれど、それはこれから前進するための〈停滞〉かもしれないということです。その意味で、この〈うずくまる〉には休止のアクションのほかに、もうひとつ、〈前進の予期〉も含まれていると思うんですよ。つまり、後ろに跳躍する海老のように全身をまるめることによってこれからそれをバネにして前進する。
そうすると信号機ってそういう〈サスペンション〉の場所なのかなあっておもうんですよね。
〈うずく、まる〉行為には、これまでの時間とこれからの時間がどうじに円環として込められている。
じゃあ、これまでの時間をかかえて・これから、どこに、ゆくのか。
どこ、なんだろう。
朝礼のさなかにそのままうずくまるかのじょを連れて(どこにゆけばいい?) 柳本々々
(日経新聞・日経歌壇・2016年1月24日・穂村弘 選)
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